労使協定いくつわかる?労基法の14種類の労使協定の届出義務と協定事項

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労使協定とは、使用者と過半数労働組合又は過半数代表者との間で書面により締結される協定のこと。

労働基準法には、全部で、14種類の協定が、登場します。

労働基準法は、最低限の労働条件を規定していますが、労働基準法を画一的に適用すると、不都合が生じることがあります。

その不都合を解消するために必要となるのが、労使協定の締結です。

労使協定の締結により、法規制の例外が、認められます。

例えば、36協定を締結すると、時間外・休日労働の規制を除外する効果があります。

今回は、労働基準法に規定されている14種類の労使協定について、届出義務の有無で2つに分類し、各労使協定の目的や協定事項等を確認することとします。

1.届出義務有り(7種類)

01:労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合(労基法第18条)

いわゆる任意貯金。使用者は労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ又は貯蓄金を管理する契約をしてはならないとされているが、労使協定を定めた場合は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理することができる。

🔶協定事項

①預金者の範囲
②預金者一人当たりの預金額の限度
③預金の利率及び利子の計算方法
④預金の受入れ及び払いもどしの手続
⑤預金の保全の方法

🔶様式記載例

🔎 貯蓄金管理に関する協定届(様式第1号)【PDF】|福岡労働局

02:1ヶ月単位の変形労働時間制(労基法第32条の2)

1ヶ月以内の一定の期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えないよう協定に定めることにより、特定された週及び日において、法定労働時間を超えて労働させることができる制度。

就業規則に定めた場合には、労使協定の届出は不要。

🔶協定事項

①対象労働者の範囲
②対象期間および起算日
③労働日および労働日ごとの労働時間
④労使協定の有効期間

🔶様式記載例

🔎 1か月単位の変形労働時間制に関する協定届(様式第3号の2)【PDF】|福岡労働局

🔶制度の詳細

03:1年単位の変形労働時間制(労基法第32条の4、第32条4の2)

1年以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えないよう協定に定めることにより、特定された週及び日において、法定労働時間を超えて労働させることができる制度。

🔶協定事項

①対象労働者の範囲
②対象期間及び起算日
③特定期間
④労働日及び労働日ごとの労働時間
⑤労使協定の有効期間

🔶様式記載例

🔎 1年単位の変形労働時間制に関する協定届(様式第4号)【PDF】|福岡労働局

🔶制度の詳細

04:1週間単位の非定型的変形労働時間制(労基法第32条の5)

日ごとの業務に著しい繁閑の差が生ずることが多く、かつ、これを予測した上で就業規則その他これに準ずるものにより各日の労働時間を特定することが困難であると認められる厚生労働省令で定める事業であって、常時使用する労働者の数が厚生労働省令で定める数未満のものに従事する労働者については、1週間の各日の労働時間をあらかじめ労働者に通知することにより、1日に10時間まで労働させることができる制度。

🔶協定事項

①1週間の所定労働時間(40時間以下)
②変形労働時間制による期間

🔶様式記載例

🔎 1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届(様式第5号)【PDF】|福岡労働局

05:時間外・休日労働に関する労使協定(労基法第36条)

いわゆる36協定。これのみ、所轄労働基準監督署長への届出が効力発生要件となる。

🔶協定事項

①労働者の範囲
②対象期間
③労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合
④対象期間における1日、1箇月及び1年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
⑤厚生労働省令で定める事項(有効期間、1年の起算日等)

🔶様式記載例

(一般条項)

🔎 時間外労働・休日労働に関する協定届(様式第9号)【PDF】|福岡労働局

(特別条項付)

🔎 時間外労働・休日労働に関する協定届(様式第9号の2)【PDF】|福岡労働局

🔶制度の詳細

06:事業場外労働のみなし労働時間制(労基法第38条の2)

労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときであって、当該業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働することが必要な場合、協定で定めた時間労働したものとみなす制度。

事業場外労働が法定労働時間内の場合は届出不要。

🔶協定事項

①対象とする業務
②みなし労働時間
③有効期間

🔶様式記載例

🔎 事業場外労働に関する協定届(様式第12号)【PDF】|福岡労働局

🔶制度の詳細

07:専門業務型裁量労働制(労基法第38条の3)

専門業務型裁量労働制の対象業務として厚生労働省令で定めるもののうちから労働者に就かせる業務について、当該業務の遂行及び時間配分の決定に関して従事する労働者に対し具体的な指示をしない旨並びに労働時間の算定について協定で定めた時間労働したものとみなす制度。

🔶協定事項

①対象業務
②労働時間として算定される時間(みなし労働時間)
③業務の遂行手段、時間配分の決定等に関し具体的な指示をしない旨
④健康・福祉を確保する措置
⑤苦情処理に関する措置
⑥その他厚生労働省令(労基則第24条の2の2)で定める事項…有効期間の定め、記録の保存等

🔶様式記載例

🔎 専門業務型裁量労働制に関する協定届(様式第13号)【PDF】|福岡労働局

🔶制度の詳細

2.届出義務なし(7種類)

08:賃金から法定控除以外の控除をする場合(労基法第24条)

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならないこととされており、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合を除き控除することはできないが、労使協定に定めた項目については賃金控除することができる。

🔷協定事項

①控除を行う賃金支払日
②控除の対象となる具体的項目
③協定の有効期間

🔷様式記載例

🔎 賃金控除に関する協定書【PDF】|福岡労働局

09:フレックスタイム制(労基法第32条の3)

3か月以内の一定期間(清算期間)における総労働時間の枠内で、労働者が各日の始業及び終業の時刻を自主的に決定し、働くことのできる制度。

清算期間が1ヶ月を超える場合は届出義務有り。

🔷協定事項

①対象となる労働者の範囲
②清算期間
③清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
④標準となる1日の労働時間
⑤コアタイム(※任意)
⑥フレキシブルタイム(※任意)

🔷様式記載例

🔎 フレックスタイム制に関する労使協定【PDF】|福岡労働局

🔷制度の詳細

10:休憩の一斉付与の例外(労基法第34条)

休憩時間は一斉に与えなければならないが、労使協定を定めた場合は休憩の一斉付与の例外として認められる。

🔷協定事項

①一斉に休憩を与えない労働者の範囲
②その労働者に対する休憩の与え方

🔷様式記載例

🔎 一斉休憩の適用除外に関する労使協定書【PDF】|福岡労働局

11:代替休暇(労基法第37条第3項)

1か月60時間を超える時間外労働を行わせた労働者について、法定割増賃金の支払いに代えて有給(代替休暇)を与える制度。

🔷協定事項

①代替休暇の時間数の具体的な算定方法
②代替休暇の単位
③代替休暇を与えることができる期間
④代替休暇の取得日の決定方法
⑤割増賃金の支払日

🔷様式記載例

🔎 代替休暇に関する労使協定例【PDF】|愛媛労働局

12:年次有給休暇の時間単位付与(労基法第39条第4項)

年次有給休暇について5日の範囲内で時間を単位として与えることができる制度。

🔷協定事項

①時間単位年休の対象労働者の範囲
②時間単位年休の日数
③時間単位年休1日の時間数
④1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数

🔷様式記載例

🔎 時間単位の年次有給休暇に関する労使協定例【PDF】|愛媛労働局

🔷制度の詳細

13:年次有給休暇の計画的付与(労基法第39条第6項)

年次有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、労使協定を定めた場合には、計画的に年次有給休暇を取得させることができる制度。

🔷協定事項

①計画的付与の対象者(あるいは対象から除く者)
②対象となる年次有給休暇の日数
③計画的付与の具体的な方法
④対象となる年次有給休暇を持たない者の扱い
⑤計画的付与日の変更

🔷様式記載例

🔎 有給休暇ハンドブック|厚生労働省

14:年次有給休暇の賃金を標準報酬日額で支払う場合(労基法第39条第9項)

労使協定に定めることにより、年次有給休暇を取得した日に対する賃金を標準報酬日額(標準報酬月額の30分の1に相当する金額)により支払う場合。

健康保険の被保険者でない者には、当然、適用できない。

🔷協定事項

①年休取得時の賃金を標準報酬日額で支払う定め
②適用開始日
③有効期間

🔷様式記載例

🔎 年次有給休暇手当の支払いに関する協定書【PDF】|福岡労働局

以上

written by tantosya-masao

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