介護両立4ステップ!仕事と介護の両立支援制度の概要と事業主が講ずべき措置

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2024年5月31日、改正育児・介護休業法が公布されました。

介護離職防止のため、仕事と介護の両立支援の強化策として、大きく以下3点が、改正されました。

・両立支援制度等に関する労働者への情報提供 → 1-1

・研修や相談窓口設置等の雇用環境の整備 → 1-2

・介護直面者に対する個別の周知・意向確認 → 2-1

介護に直面する前に介護両立支援制度を労働者の理解を促進すること、介護に直面した際には個々の労働者のニーズに応じた仕事と介護の両立を支援することが、事業主が講ずる措置として追加となりました。

いずれも、2025年4月1日より、施行されます。

今回は、介護離職防止のための「両立支援制度の概要」と「事業主が講ずべき措置」について、両立支援に至る4つのステップに沿って確認します。

STEP1.通常期

通常期とは、労働者が介護に直面する「前」の時期です。

介護直面前に両立支援制度の理解を促進することで、介護による離職を防ぐことが期待できます。

事業主は、労働者に対し、仕事と介護の両立支援制度の周知や、両立支援制度の利用促進のための雇用環境の整備を行うことが必要です。

1-1.両立支援制度等の情報提供(育介法第21条第3項)【法改正】

介護に直面する前の早い段階(40歳等)で両立支援制度等に関する情報提供が事業主は必要となります【2025年4月1日施行】。

40歳になると介護保険第2号被保険者となり、介護保険料の負担が生じます(義務)。

一方で、加齢に伴う疾病(特定疾病)が原因で要介護(要支援)認定を受けたときは、介護サービスを受けることができます(権利)。

🔎 介護サービスについて|介護サービス情報公表システム(厚生労働省)https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish

法改正により、介護保険に加入する(被保険者となる)タイミングで、介護両立支援制度等について、事業主の労働者への情報提供が義務となりました。

具体的な時期としては、「40歳に達した日の属する年度の初日から末日まで」又は「40歳に達した日の翌日から起算して1年間」です。

事業主が情報提供を行う事項としては、「介護休業・介護両立支援制度等の内容」、「制度利用の申し出先」、「介護休業給付金に関すること」です。

情報提供の方法としては、「面談」、「書面交付」、「ファクシミリ送信」・「電子メール等の送信」です。

1-2.雇用環境の整備(育介法第22条第2項・4項)【法改正】

仕事と介護の両立支援制度の利用を促進する雇用環境の整備も、事業主の講ずべき措置となります【2025年4月1日施行】。

事業主は、「研修」・「相談窓口設置」・「厚生労働省令で定める措置」のいずれかの措置を選択することとなります。

なお、厚生労働省令で定める措置とは、以下の2つの措置です。

・介護休業及び介護両立支援制度等の利用に関する事例の収集及び当該事例の提供

・介護休業及び介護両立支援制度等並びに介護休業及び介護両立支援制度等の利用の促進に関する方針の周知

STEP2.相談・調整期

相談・調整期とは、介護に直面した労働者に対する支援の時期です。

自社の両立支援制度や公的な介護保険制度の内容や活用方法についての相談窓口の情報を提供することが事業主に求められます。

2-1.個別周知・意向確認(育介法第21条第2項)【法改正】

介護に直面した旨の申出者に対する個別の周知・意向確認の措置も、事業主の講ずべき措置です【2025年4月1日施行】。

事業主が介護直面者に対して個別周知する事項としては、「介護両立支援制度等の内容・措置」、「制度利用の申し出先」、「介護休業給付金に関すること」です。

介護両立支援制度等とは、具体的には以下となります。

・介護休業に関する制度 → 3-1

・介護休暇に関する制度 → 3-2

・所定外労働の制限に関する制度 → 4-1

・時間外労働の制限に関する制度 → 4-2

・深夜業の制限に関する制度 → 4-3

・所定労働時間の短縮等の措置 → 4-4

個別周知・意向確認の方法は、「面談」、「書面交付」、「ファクシミリ送信」・「電子メール等の送信」です。

なお、電子メール等の送信は、労働者が電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができる場合に限られます。

STEP3.両立体制構築期

両立体制構築期とは、介護直面者の個々のニーズに応じて、両立体制を整える時期です。

介護開始にあたっては、要介護(要支援)認定の申請、ケアマネジャーの決定、介護施設の見学などが必要です。

両立体制構築のため、介護休業(長期)や介護休暇(短期)により、仕事を休める制度が法制化されています。

3-1.介護休業(育介法第三章)

要介護状態にある対象家族を介護する労働者が取得可能です(日々雇用者除く。労使協定を締結している場合は入社1年未満の労働者等を対象外することは可)。

要介護状態とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態です。

対象家族とは、配偶者(事実婚含む)・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫です。

利用回数と期間としては、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。

介護休業は、労働者の事業主に対する申出を要件となります。

介護休業で無給となることによる経済的支援としては、介護休業給付金の制度があります。

所定の要件を満たす雇用保険の被保険者は、介護休業期間中に休業開始時賃金日額の67%相当額の介護休業給付金が支給されます。

詳細は、以下を確認しましょう。

🔎 介護休業給付|ハローワークインターネットサービスhttps://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_continue.html

3-2.介護休暇(育介法第五章)

要介護状態にある対象家族の介護や世話をする労働者は、事業主に申し出ることにより、一年度において5日(対象家族が2人以上の場合は10日)を限度として、介護休暇を取得することができます。

要介護状態、対象家族の定義は、介護休業と同様です。

一年度とは、事業主が特に定めをしない場合には、毎年4月1日から翌年3月31日となります

STEP4.両立期

両立期には、働きながら介護の時間を確保するための制度が法制化されています。

4-1.所定外労働の免除(育介法第16条の9)

所定外労働とは、いわゆる残業のこと。

各企業で定めた所定時間が基準となり、一日8時間一週40時間の法定内の残業も含めて、免除する措置です。

事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が請求した場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させることはできません。

労働者は要介護状態にある対象家族がいる限り、介護終了までの期間について請求できます。

4-2.時間外労働の制限(育介法第18条)

時間外労働とは、一日8時間一週40時間の法定労働時間を超える労働(残業)のこと。

時間外労働の制限により、労働者は時間外労働を一定時間に抑制することが可能です。

一定時間の基準は、1か月については24時間、1年については150時間までです。

4-3.深夜業の制限(育介法第20条)

深夜業とは、22時~5時までの労働のこと。

深夜においてその対象家族を常態として介護することができる同居の家族がいる労働者は請求できません。

4-4.所定労働時間の短縮等の措置(育介法第23条第3項)

働く時間を短くする措置です。

事業主は、連続する3年間以上の期間における所定労働時間の短縮等の措置を講じなければなりません。


最後にまとめ。

・介護に直面する前には、仕事と介護の両立支援制度の内容を理解することが大事。

・介護に直面した時は、介護休業等でまとまった休みを取り、介護体制を構築することが必要。

・介護と仕事の両立期は、労働時間を一定時間に抑えるなど、介護するための時間を確保することが大事。

(参照)

🔎 育児・介護休業法のあらまし|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103504.html

以上

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