社労士試験頻出!就業条件総合調査でわかる企業の労働時間・賃金制度の実態

1001_社労士つとむの実務と法令
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社会保険労務士試験の科目には「労務管理その他の労働に関する一般常識」の科目があります。

いわゆる「労一」の科目では、白書・統計調査にかかる問題が複数出題されます。

白書・統計調査の頻出出題といえば、「就労条件総合調査」です。

第46回(平成26年)~第55回(令和5年)の過去10年で、半数の5回の出題実績があります。

「就労条件総合調査」の目的は、主要産業における企業の労働時間・賃金・退職給付制度等の現状を明らかにすること。

統計調査のポイントは、調査項目ごとの回答全体の傾向を捉えることです。

傾向を捉える3つのポイントは、「平均値」・「要素別割合」・「前年増減」の把握です。

今回は「令和5年度就労条件総合調査」の結果から現状の労働時間・賃金制度の実態を確認します。

1.労働時間制度

はじめに、所定労働時間や休日等の労働時間制度について確認します。

(1)所定労働時間

・1日の所定労働時間の平均は、法定の1日8時間より、若干少ない。

・週所定労働時間は、減少傾向。産業別にみると、最も短いのは「金融業・保険業」の38時間02分、最も長いのは「宿泊業・飲食サービス業」及び「生活関連サービス業・娯楽業」の39時間35分。

調査項目調査年度1企業平均労働者1人平均
1日の所定労働時間令和5年7時間48分7時間47分
 令和4年7時間48分7時間47分
週の所定労働時間令和5年39時間20分39時間04分
 令和4年39時間28分39時間08分

(2)週休制

・週休2日制の採用企業割合は増加傾向。完全週休2日制も半数を超え53.3%に達する。

・完全週休2日制の採用企業割合を企業規模別にみると、「1000人以上」が68.1%、「300~999 人」が60.0%、「100~299人」が52.2%、「30~99人」が 52.5%。企業規模300人以上は60%を超える水準。

調査項目調査年度採用企業割合
何らかの週休2日制の採用令和5年85.4%
 令和4年83.5%
完全週休2日制の採用令和5年53.3%
 令和4年48.7%

(3)年間休日総数

・年間休日総数は増加傾向。

・1企業平均の年間休日総数を企業規模別にみると、「1000人以上」が116.3日、「300~999人」 115.7日、「100~299 人」が111.6 日、「30~99 人」が109.8日。企業規模が大きいほど休みが多い。

調査項目調査年度1企業平均労働者1人平均
年間休日総数令和5年110.7日115.6日
 令和4年107.0日115.3日

(4)年次有給休暇

・年休取得率は前年度比4%増と大幅増。昭和59年以降過去最高。

・取得率を産業別にみると、最も高いのは「複合サービス事業」の74.8%、最も低いのは「宿泊業・飲食サービス業」で49.1%。

調査年度年休付与日数年休取得日数年休取得率
令和5年17.6日10.9日62.1%
令和4年17.6日10.3日58.3%

・令和7年までに年休の取得率70%が政府目標。以下参照。

🔎 過労死等の防止のための対策に関する大綱|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20085.html

(5)特別休暇制度

・特別休暇制度がある企業割合は55.0%(令和4年調査58.9%)。半数超で制度有り。

・種類として多いのは夏季休暇、病気休暇、リフレッシュ休暇が10%を超える。

調査年度夏季休暇病気休暇リフレッシュ休暇ボランティア休 暇教育訓練休暇左記以外の1週間以上の長期の休暇
令和5年37.8%21.9%12.9%4.4%3.4%14.2%
令和4年41.5%22.7%11.8%4.2%4.0%15.1%

(6)変形労働時間制

・変形労働時間制を採用している企業割合は59.3%で前年より5%程度減少。

・変形労働時間制の種類として多いのは、1年単位→1か月単位→フレックスの順。

調査年度変形労働時間制の採用企業割合1年単位の変形労働時間制1か月単位の変形労働時間制フレックスタイム制
令和5年59.3%31.5%24.0%6.8%
令和4年64.0%34.3%26.6%8.2%

(7)みなし労働時間制

・みなし労働時間制を採用している企業割合は14.3%で前年より若干増。

・みなし労働時間制を採用企業の制度利用状況としては、在宅勤務・営業職種等に適用される「事業場外みなし労働時間制」が最も多く、採用要件の厳しい「企画業務型裁量労働制」は1%未満とほぼ未採用。

・みなし労働時間制の適用を受ける労働者割合は8.9%(令和4年調査7.9%)と増加傾向。1割には達していない。

調査年度みなし労働時間制の採用企業割合事業場外みなし労 働時間制専門業務型裁量労働制企画業務型裁量労働制
令和5年14.3%12.4%2.1%0.4%
令和4年14.1%12.3%2.2%0.6%

(8)勤務間インターバル制度

・勤務間インターバル制度の「導入予定もなく検討もしていない」企業が81.5%と多数。

・未導入(未検討)の理由としては「超過勤務の機会が少なく当該制度を導入する必要性を感じないため」が51.9%と最も高い。

調査年度導入している
導入を予定又は検討している
導入予定はなく、検討もしていない
令和5年6.0%11.8%81.5%
令和4年5.8%12.7%80.4%

2.賃金制度

つぎは、賃金制度の時間外労働の割増賃金率の現状を確認します。

(1)時間外労働の割増賃金率

・割増賃金率を法定の25%とする企業が94.3%と大半。

・法定25%超の企業割合を企業規模別にみると、「1000人以上」 が19.2%、「300~999人」が12.5%、「100~299人」が 6.5%、「30~99人」が 2.9%。企業規模が大きいほど割増賃金率は高く設定される傾向。

調査年度時間外労働の割増賃金率を一律に定めている企業割合法定25%の企業の割合法定25%超の企業の割合
令和5年86.4%94.3%4.6%
令和4年85.3%92.8%6.1%

(2)1か月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率

・1か月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を定めている企業割合は増加傾向。

・令和5年4月1日以降は中小企業も時間外労働割増率50%以上が義務化。

調査年度
1か月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を定めている企業割合
割増賃金率(25~49%)割増賃金率(50%以上)
令和5年33.4%33.3%64.5%
令和4年30.0%44.7%54.0%

3.退職給付制度

さいごに、退職給付制度の有無や導入制度の割合等について確認します。

(1)退職給付制度の有無及び形態

・退職給付制度がある企業割合は減少傾向。

・退職給付制度がある企業では、「退職一時金制度のみ」が減少する一方、「退職年金制度のみ」・「両制度併用」は増加傾向。確定拠出年金の普及等により年金制度の割合が増加。

調査年度退職給付(一時金・年金)制度がある企業割合退職一時金制度のみ退職年金制度のみ両制度併用
令和5年74.9%69.0%9.6%21.4%
平成30年80.5%73.3%8.6%18.1%

(2)退職一時金制度の支払準備形態

・退職一時金制度の支払準備形態としては、「社内準備」・「中退共」で半々。

調査年度社内準備中小企業退職金共済制度特定退職金共済制度その他
令和5年56.5%42.0%9.9%9.7%
平成30年57.0%44.0%11.5%10.5%

(3)退職年金制度の支払準備形態

・退職年金制度の支払準備形態としては、「確定給付企業年金」・「確定拠出年金(企業型)」が中心。

・「確定拠出年金(企業型)」は退職年金制度を導入している企業の過半が実施。

調査年度厚生年金基金 (上乗せ給付)確定給付企業年金 (CBPを含む)確定拠出年金 (企業型)企業独自の年金
令和5年19.3%44.3%50.3%3.0%
平成30年20.0%43.3%47.6%3.8%

・平成26年4月1日以降、厚生年金基金の新規設立は認められていない。

🔎 厚生年金基金制度|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kousei/index.html

(4)退職一時金制度の見直し

・退職一時金制度について、過去3年間に見直しを行った企業割合は7.9%(平成30年調査7.4%)。

・見直し内容としては「新たに導入又は既存のものの他に設置」が30.0%で最も多い。

調査年度新たに導入又は既存のものの他に設置全部又は一部を年金へ移行他の退職一時金制度へ移行退職一時金制度の廃止・脱退
令和5年30.0%7.7%7.3%1.5%
平成30年33.6%7.2%6.1%1.9%

(5)退職年金制度の見直し

・退職年金制度について、過去3年間に見直しを行った企業割合は4.0%(平成30年調査2.6%)で前回調査より増加傾向。

・見直し内容としては「新たに導入又は既存のものの他に設置」が最も多い。「年金支給期間の延長」も前回調査1.6%から4.2%へ倍増。

調査年度新たに導入又は既存のものの他に設置全部又は一部を退職一時金へ移行他の年金制度へ移行年金支給期間の延長
令和5年37.6%12.8%6.5%4.2%
平成30年52.7%4.2%10.7%1.6%

・企業型DCの加入可能年齢は拡大されています(2022年5月1日施行)

🔎 確定拠出年金(2020年の制度改正)|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2020kaisei.html


最後にまとめ。

・労働時間制度では、働き方改革の進展により、労働時間減→年休取得増の傾向となっている。

・賃金制度では、人材確保の観点から、割増賃金率は引き上げの傾向となっている。

・退職給付制度では、企業の債務リスク軽減の観点から、確定拠出年金が主流となっている。

以上

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