2026年末調整の留意点!基礎控除等の改正内容と実務への影響

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2026年(令和8年)の年末調整では、所得税の基礎控除引き上げをはじめ、子育て支援策の一環である生命保険料控除の拡充など、実務に直接影響を与える重要な税制改正が適用されます。

今回の主要な改正は原則として2026年12月1日に施行され、2026年分以後の所得税について適用されます。

これにより、給与支払者(源泉徴収義務者)における年末調整等の事務手続きにおいて、例年以上の確認事項と事前の社内周知が必要となります。

本記事では、2026年年末調整における「4つの改正内容」と、実務上の留意点について解説します。

1.税制改正の4つの主要内容

今回の税制改正における主要なポイントは、以下の4つです。

1-1. 基礎控除の引上げ

昨今の物価上昇や実質賃金の動向を鑑み、納税者の税負担感を軽減し課税最低限を引き上げる目的で、所得税の基礎控除額が見直されます。年末調整において全ての給与所得者の年税額計算に直結する重要な改正項目です。

○施行日:

2026年(令和8年)12月1日(※令和8年分以後の所得税について適用)

○概要:

基礎控除の本則額が従来の58万円から62万円(+4万円)へ引き上げられます。

さらに、令和8年・9年分の時限的措置(特例加算)として所得階層に応じた上乗せが適用され、年収(合計所得)に応じて最大104万円の基礎控除が適用されます。

○詳細:

<所得階層別の控除額(令和8年・9年分)>

・合計所得489万円以下(年収約665万円以下)…本則62万円+特例42万円=104万円

・合計所得489万円超〜655万円以下(年収約850万円以下)…本則62万円+特例5万円 =67万円

・合計所得655万円超〜2,350万円以下: 本則62万円のみ(特例加算なし)

○実務上の留意点:

1月〜11月の月次給与事務では従来の旧源泉徴収税額表(または本則ベースの基準)で計算されるため、最大42万円に及ぶ特例加算分は反映されません。控除額の拡大に伴う税額の精算・還付は、12月の年末調整で一括して処理されます。

1-2. 給与所得控除の最低保障額の引上げ

パート・アルバイト等の短時間労働者や低所得層の税負担軽減、ならびに就労調整(いわゆる「年収の壁」)の解消を目的として、給与所得控除の最低保障額が引き上げられます。基礎控除の引上げと相まって、課税最低限の大幅な引き上げをもたらす改正項目です。

○施行日:

2026年(令和8年)12月1日(※令和8年分以後の所得税について適用)

○概要:

給与所得控除の最低保障額が、従前の65万円から74万円(+9万円)へ引き上げられます。

この引き上げは「本則改定(69万円への引上げ)」と「令和8年・9年分の特例加算(5万円の上乗せ)」の組み合わせにより実現されます。

○詳細:

<給与所得控除 最低保障額の内訳(令和8・9年分)>

・本則部分…従前の65万円から4万円引き上げられ 69万円 となります。

・特例加算…給与収入220万円以下の方を対象に、時限措置として 5万円 が上乗せされます。

・合計適用額…69万円+5万円=74万円 (給与収入190万円〜220万円以下の場合)

※なお、給与収入が220万円を超える場合は従来どおりの算出式が適用されるため、給与所得控除額に変更はありません。

○実務上の留意点:

最低保障額が74万円へ拡大したことにより、給与所得の金額が従来よりも低く算出されます。これにより、パート・アルバイト等の非課税枠が広がります。本改正分(特例含む)についても月次の源泉徴収(1月〜11月)では考慮されず、12月に行う年末調整のタイミングで一括して年税額へ反映・精算されます。

1-3. 扶養親族等の所得要件の改正

基礎控除額の引上げ等に伴い、扶養控除等の対象となる配偶者や扶養親族、勤労学生等の「所得要件(合計所得金額)」および給与収入換算による判定基準が見直されます。これにより、従来よりも高い収入を得ている親族であっても扶養等の対象として判定されるようになります。

○施行日:

2026年(令和8年)12月1日(※令和8年分以後の所得税について適用)

○概要:

控除対象配偶者や扶養親族等の判定基準となる「合計所得金額要件」が引き上げられます。あわせて給与所得控除の最低保障額(74万円)が適用されるため、収入が給与のみの場合の「年収の壁」の枠が従前の123万円以下から136万円以下へと大幅に拡大します。

○詳細:

扶養親族等の対象となる判定基準(合計所得金額)が一律4万円引き上げられます。さらに給与所得控除の最低保障額(74万円)が適用されるため、収入が給与のみの場合、年収上限は以下のように大幅に拡大します。

・扶養親族・同一生計配偶者・ひとり親の生計を一にする子…所得要件が62万円以下(従前58万円以下)となり、給与年収の上限は136万円以下(従前123万円以下)に広がります。

・特定親族…所得要件が62万円超123万円以下となり、給与年収の上限は136万円超197万円以下(従前123万円超188万円以下)に拡大します。

・配偶者特別控除の対象配偶者…所得要件が62万円超133万円以下となり、給与年収の上限は136万円超207万円以下(従前123万円超201万5,999円以下)に広がります。

・勤労学生…所得要件が89万円以下(従前85万円以下)となり、給与年収の上限は163万円以下(従前150万円以下)に引き上がります。

○実務上の留意点:

パートやアルバイトを行う配偶者・子などの給与収入が123万円〜136万円程度であったため、これまでは扶養から外れていたケースでも、令和8年分からは新たに扶養控除や配偶者(特別)控除の対象に含まれることになります。企業の実務担当者は、従業員に対して「扶養親族等の収入見込み額」や「扶養異動」の確認漏れがないよう、事前周知と提出書類のチェックフローを強化する必要があります。

1-4. 子育て世帯向け生命保険料控除の特例新設

子育て世帯の金銭的負担軽減および生活保障の充実を目的として、23歳未満の扶養親族がいる世帯を対象に、生命保険料控除の特例措置が新設されます。年末調整における保険料控除申告書の確認作業に直結する改正項目です。

○施行日:

2026年(令和8年)1月1日以後(※令和8年分以後の所得税について適用)

○概要:

年齢23歳未満の扶養親族(子等)を有する居住者を対象に、新契約に係る一般生命保険料控除の所得税における適用限度額が、従来の4万円から6万円(+2万円)へ引き上げられます。

○詳細:

<子育て世帯向け特例の計算・適用条件>

・対象者…その年の12月31日時点で、年齢23歳未満の扶養親族(子だけでなく、孫や兄弟姉妹等も含む)を有する納税者本人。共働き夫婦の場合、双方がそれぞれの申告で本特例を適用可能です。

・控除限度額…新契約の「一般生命保険料控除」の上限が6万円となります(旧契約と新契約を混在して適用する場合の控除上限額も6万円となります)。

・全体の適用限度額…「一般+介護医療+個人年金」を合わせた各控除額の合計が12万円を超える場合であっても、生命保険料控除全体の適用限度額(所得税:最高12万円)に変更はありません。

・住民税の取扱い…住民税における生命保険料控除の枠(最高2.8万円/全体最高7万円)に変更はなく、従来の据え置きとなります。

○実務上の留意点:

令和8年分の「保険料控除申告書」には、新たに23歳未満の扶養親族に関する記載欄が追加されます。実務担当者は、①従業員が「23歳未満の扶養親族」欄を正しく記載しているか、②介護医療保険や個人年金保険を含めた全体枠で既に12万円の上限に達している場合、一般枠の拡充による控除額の増加(還付増)が生じないケースがある点(従業員からの問合せ対応準備)、の2点に留意する必要があります。

2.源泉徴収実務と年末調整での適用時期

今回の改正における実務上の重要なポイントは、令和8年中の「毎月の給与・賞与の源泉徴収」には変更がなく、改正後の新基準は「12月の年末調整」において一括して適用されるという点です。具体的な実務の流れについて解説します。

2-1. 令和8年分における月次源泉徴収の取扱い

令和8年中の毎月の給与や賞与計算における源泉徴収事務の取り扱いについての整理です。

○毎月の源泉徴収:

令和8年1月1日から12月31日までに支払う毎月の給与および賞与については、改正前の従来どおりの「源泉徴収税額表」に基づいて源泉徴収税額を計算します。毎月の税額計算方法や給料からの天引き額に途中で変更が生じることはありません。

○令和9年分からの変更:

改正後の新しい「源泉徴収税額表」が使用されるのは、2027年(令和9年)1月1日以降に支払う給与からとなります。

2-2. 令和8年12月に行う年末調整での精算と影響

12月に行う年末調整における新基準の適用と、一括精算のメカニズムについて解説します。

○年末調整での新基準適用:

令和8年12月に行う年末調整の際、引上げ後の「基礎控除額」および改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を用いて、1年間の正しい年税額を算出します。

○年末調整での一括精算:

改正前の税額表により計算・徴収してきた1月〜12月分の源泉徴収税額の合計と、新基準で算出した年税額との差額を精算(還付)します。控除額が拡大しているため、例年よりも年末調整での還付額(手取り増)が大きくなるケースが多く発生します。

3.申告書および関連様式の改定と実務チェック

令和8年分の年末調整では、各種申告書の様式改定や入力システムの改修が行われます。実務担当者が事前に確認・準備しておくべき主要様式の変更点とチェックポイントをまとめます。

3-1. 改定される主な年末調整関係様式

税制改正に伴い、令和8年分の年末調整で回収・確認する主要な申告書様式が改定されます。

○主な改定様式:

基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書

基礎控除額(最大104万円)および配偶者・特定親族の控除額判定表が、新基準の金額・所得要件へ修正されます。

保険料控除申告書

子育て世帯向け特例の適用に伴い、「一般生命保険料控除」の枠内に「23歳未満の扶養親族の有無」を記載・判定する欄が新設されます。

🔎 変更を予定している年末調整関係書類(事前の情報提供)|国税庁https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho_shorui/index.htm

3-2. 実務上の点検・チェックポイント

申告書の回収および年末調整計算にあたり、実務担当者が特に注意すべき確認項目です。

○点検・チェック項目:

・保険料控除での「23歳未満扶養親族」の確認…23歳未満の扶養親族がいる従業員が、特例欄に正しくチェック・記載しているか確認します。

・判定ロジックおよび給与システムの改修確認…利用している給与・年末調整計算システムが、令和8年分の「新基礎控除額」「新給与所得控除額」「保険料控除特例(最高6万円)」の自動判定に対応したバージョンにアップデートされているか事前に確認します。

・「年収の壁」変更に伴う扶養異動漏れの確認…所得要件緩和(給与収入136万円以下等)により、新たに扶養対象となる配偶者や家族がいないか、申告漏れ・変更漏れの確認を呼びかけます。


最後にまとめ。

・控除額の拡大と年収の壁の緩和

基礎控除(最大104万円)・給与所得控除最低保障額(74万円)の引上げに伴う扶養要件緩和。給与収入上限が136万円以下等に拡大するため、扶養異動の再確認が必要。

・給与賞与税計算は変更なく12月年調で一括精算

令和8年中の毎月の給与・賞与は従来通りの税額表で源泉徴収。新基準による源泉所得税の精算・還付はすべて12月の年末調整で一括実施。

・改定様式の確認とシステム対応

23歳未満の特例(生命保険料控除上限6万円)や新様式への対応。申告書のチェック体制整備と、給与計算システムの改修状況の事前確認。

🔎 令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について|国税庁https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026kiso/index.htm

以上

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