【年金制度改正】遺族厚生年金の有期給付化で影響を受ける人、受けない人。

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次世代の年金制度改正により、2028年4月から遺族厚生年金の仕組みが大きく変わります。

今回の改正の目玉は、配偶者と死別した「子のない配偶者」に対する給付が、従来の「終身(無期)」から原則5年間の「有期給付」へと移行すること。

女性の就業進展や共働き世帯の増加といった社会状況の変化を踏まえ、制度上の男女差を解消し、死別直後の生活再建を集中的に支援する仕組みへと見直されます。

今回は、本改正によって、影響を受ける人と受けない人、また、改正によるメリットとセーフティネットの仕組みについて確認します。

1. 影響を受ける人

今回の改正で最も大きな影響を受けるのは、施行日以降に配偶者と死別し、受給権が発生する子のない現役世代です。

1-1.30代の女性(妻)

現行制度では、夫と死別した際に30歳以上であれば「終身」で受給できましたが、改正後は30代も原則5年間の有期給付となります。

これにより、新たに対象となる30代の女性は推計で年間約250人。

なお、急激な変化を避けるため、施行時点では40歳以上は対象外となりますが、約20年かけて段階的に対象年齢は60歳未満まで引き上げられる予定です。

1-2.20代〜50代の男性(夫)

現行制度では55歳未満の男性(夫)には受給権がありませんが、改正後は新たに55歳未満の男性(夫)も5年間の有期給付の対象となります。

これにより、推計で年間約1万6千人の男性が新たに受給できるようになります。

1-3.高所得の現役世代

有期給付の対象となる方については、現行の収入要件(年収850万円未満)が撤廃されます。

これにより、収入にかかわらず死別直後の5年間は手厚い支援を受けられるようになります。

2. 影響を受けない人

一方で、以下に該当する方は、今回の改正による給付期間の短縮(有期化)の影響を受けません。

2-1.施行日(2028年4月)前にすでに受給している方

改正前に受給権が発生している遺族厚生年金については、引き続き現行制度の仕組みが維持されます。

2-2.60歳以上で配偶者と死別した方

60歳以上で配偶者を亡くした場合は、これまでどおり「終身(無期給付)」となります。

2-3.18歳年度末までの子がいる方

18歳年度末の子を養育している間は、現行どおり遺族基礎年金と遺族厚生年金が併せて支給され、世帯としての給付内容は変わりません。

子が18歳(年度末)を過ぎた後、さらに5年間は有期給付が継続されます。

2-4.施行年度(2028年度)に40歳以上の女性(妻)

経過措置として、施行年度に40歳以上となっている女性については、有期給付化の対象外となります(20年かけて段階的に対象年齢は引き上げ)。

3. 改正による「メリット」と「セーフティネット」

有期給付化に伴い、期間の短縮を補うための「給付の充実(メリット)」と「継続給付(セーフティネット)」の仕組みが導入されます。

3-1.有期給付加算(年金額が約1.3倍に充実)

5年間の有期給付期間中は、新たに「有期給付加算」が上乗せされ、現在の年金額よりも手厚い保障(約1.3倍)が行われます。

現行の遺族厚生年金の額は、亡くなった配偶者の厚生年金(報酬比例部分)の「4分の3」(75%)に相当する額です。

今回の改正では、有期給付の対象となる方に対し、この「4分の3」相当額に「有期給付加算」を上乗せします。その結果、合計額は現在の約1.3倍、つまり亡くなった配偶者の厚生年金額とほぼ同等(約97.5%)に近い水準まで引き上げられることになります。

例えば、亡くなった配偶者が将来受け取るはずだった老齢厚生年金(報酬比例部分)が月額10万円だった場合の残された配偶者が受け取る額で確認してみましょう。

現行制度(改正前)の場合は10万円の4分の3にあたる月額7.5万円ですが、改正後(5年間の有期給付期間中)の場合は基本となる7.5万円に「有期給付加算」が加わり、その1.3倍にあたる月額約9.75万円を受給できることとなります。

3-2.継続給付(一定の条件を満たす場合)

5年経過後も、障害状態にある方や収入が一定以下の低所得者(単身で就労収入が月額約10万円以下など)は、最長65歳まで「継続給付」されます。

なお、遺族厚生年金の額にもよりますが、おおむね月収が20万円から30万円を超えると継続給付は終了(支給停止)します。

3-3.死亡時分割の導入(婚姻期間中の報酬比例部分の最大50%分割)

有期給付が終了した後の高齢期の保障として、亡くなった配偶者の厚生年金記録を分割して自身の将来の老齢厚生年金を増やす「死亡時分割」の仕組みが新たに創設されます。

現行の「離婚時の年金分割」を参考に、死亡した配偶者の婚姻期間中における厚生年金記録(標準報酬等)を分割し、残された配偶者の記録として付け替えます。

この分割を受けることにより、遺族自身が将来受け取る「老齢厚生年金」の額が増加します。


最後にまとめ。

・改正により子のない30代の女性は従来の終身給付から5年間の有期給付へと移行となる。一方で、これまで受給権がなかった55歳未満の男性は新たに5年間の給付対象となる。

・高齢者や子育て世帯などは影響なし。施行時にすでに受給している方や40歳以上の女性、また60歳以上で死別した方や18歳年度末までの子がいる場合については、原則として現在の給付期間や仕組みが維持される。

・給付の充実とセーフティネットの創設。有期給付期間中は年金額が現在の約1.3倍に増額される「有期給付加算」の仕組みのほか、低所得者等への「継続給付」や、将来の自身の年金を増やす「死亡時分割」によって、死別後の生活と高齢期の所得保障が図られる。

(参照)

🔎 年金制度改正法が成立しました|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html

🔎 遺族厚生年金の見直しについて|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00020.html

以上

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