宿日直勤務とは、労働基準法第41条の労働時間等に関する規定の適用除外となる断続的労働の一態様です。
断続的な宿日直勤務とは、仕事の終了から翌日の仕事の開始までの時間や休日について、常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務で、定期的巡視、緊急電話対応、非常事態に備えての待機等を目的とする勤務が該当します。
所轄労働基準監督署長の許可を受けることで、労働基準法で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用は除外されます。
今回は、宿直と日直の違い、宿日直勤務の許可基準と許可申請について、確認します。
1.宿直と日直の違い
宿日直とは、宿直と日直をあわせた用語です。
宿直と日直の違いは、勤務時間帯の違いです。
宿直は夜間勤務で宿泊を要するものをいい、日直は主に休日に昼間勤務するものをいいます。
なお、宿直や日直の類語で当直がありますが、当直とは、宿直または日直のことです。
●宿直=夜間行う(宿泊有り)
●日直=昼間行う
●当直=宿日直(宿直または日直)
2.宿日直勤務の許可基準
一般の宿日直勤務の許可基準(昭和22年9月13日発基17号・昭和63年3月14日基発150号)には、以下の4つの基準があります。
※医師・看護師の宿日直勤務の許可基準については、別通達(令和元年7月1日基発0701第8号)により、一般の許可基準より、より具体的な判断基準が示されています。
【基準1】勤務の態様
イ 常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであり、定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態に備えての待機等を目的とするものに限つて許可するものであること。
~宿日直勤務の許可基準(昭和22年9月13日発基17号・昭和63年3月14日基発150号)~
ロ 原則として、通常の労働の継続は許可しないこと。したがつて始業又は終業時刻に密着した時間帯に、顧客からの電話の収受又は盗難・火災防止を行うものについては、許可しないものであること。
常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務のみが認められ、通常の労働の継続は許可されません。
【基準2】宿日直の手当
宿直又は日直の勤務に対して相当の手当が支給されることを要し、具体的には、次の基準によること。
~宿日直勤務の許可基準(昭和22年9月13日発基17号・昭和63年3月14日基発150号)~
イ 宿直勤務一回についての宿直手当(深夜割増賃金を含む。)又は日直勤務一回についての日直手当の最低額は、当該事業場において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われている賃金(法第三十七条の割増賃金の基礎となる賃金に限る。)の一人一日平均額の三分の一を下らないものであること。ただし、同一企業に属する数個の事業場について、一律の基準により宿直又は日直の手当額を定める必要がある場合には、当該事業場の属する企業の全事業場において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者についての一人一日平均額によることができるものであること。
ロ 宿直又は日直勤務の時間が通常の宿直又は日直の時間に比して著しく短いものその他所轄労働基準監督署長がイの基準によることが著しく困難又は不適当と認めたものについては、その基準にかかわらず許可することができること。
宿日直勤務1回の宿直手当(深夜割増賃金を含む)・日直手当の最低額は、宿日直勤務に従事予定の同種の労働者に対して支払われる所定内賃金の1人1日平均額の3分の1を下らないことが必要です。
基準を満たす計算式は、以下となります。
「宿(日)直勤務総員数の1か月所定内賃金額合計」÷「1か月所定労働日数×宿(日)直勤務総員数×3」≦ 宿(日)直手当額
計算例は、以下を参照しましょう。
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宿日直勤務中に、労働者が宿日直業務に該当しない通常の労働に従事した場合は、時間外・休日労働の取扱いとなり、その時間分については宿日直手当の他に割増賃金を支払う必要があります。
【基準3】宿日直の回数
許可の対象となる宿直又は日直の勤務回数については、宿直勤務については週一回、日直勤務については月一回を限度とすること。ただし、当該事業場に勤務する十八歳以上の者で法律上宿直又は日直を行いうるすべてのものに宿直又は日直をさせてもなお不足でありかつ勤務の労働密度が薄い場合には、宿直又は日直業務の実態に応じて週一回を超える宿直、月一回を超える日直についても許可して差し支えないこと。
~宿日直勤務の許可基準(昭和22年9月13日発基17号・昭和63年3月14日基発150号)~
原則として、宿直業務は週1回、日直業務は月1回が限度となります
【基準4】睡眠設備の設置
宿直勤務については、相当の睡眠設備の設置を条件とするものであること。
~宿日直勤務の許可基準(昭和22年9月13日発基17号・昭和63年3月14日基発150号)~
専用の宿直室に寝具と冷暖房設備等を設置することが必要です。
3.宿日直勤務の許可申請
宿日直勤務の許可申請は、労働基準法施行規則第23条に規定されています。
第二十三条 使用者は、宿直又は日直の勤務で断続的な業務について、様式第十号によつて、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、法第三十二条の規定にかかわらず、使用することができる。
~労働基準法施行規則第23条~
具体的には、以下の申請書類と添付書類が必要です。
【1】申請書類
『監視・断続的労働に従事する者に対する適用除外許可申請書』(様式第10号)
記入例は、以下を参照しましょう。
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【2】添付書類
『対象労働者の労働の態様が分かる資料』
・所定労働時間内におけるタイムスケジュール
・対象業務の業務マニュアル、作業規定、業務日報等
・巡回の業務がある場合は、巡回経路を示す図面
『対象労働者の労働条件が分かる資料』
・就業規則(該当部分)
・労働条件通知書、雇用契約書の写し
『支払われるべき宿日直手当の最低額が分かる資料』
・宿日直手当計算書、賃金台帳の写し(計算に用いたもの)
『勤務数が分かる資料』
・シフト表
『睡眠設備の概要が分かる資料』
・睡眠場所の見取図、写真
申請書類・添付書類は、正本を2部作成し、事業場を管轄する労働基準監督署に提出します。正本のうち1部は、調査後に返却されます。
最後にまとめ。
・宿直とは夜間勤務で宿泊を要するもの、日直とは主に休日に昼間勤務するもの。
・一般の宿日直勤務の許可基準には、4つの基準がある。
・使用者は宿日直勤務の許可申請を所轄労働基準監督署長の届出し許可を受けることが必要。
以上
written by sharoshi-tsutomu