会社が退職金を支払った場合、『退職所得の源泉徴収票』を作成し、受給者へ交付することが法令で義務づけられています。
法人の役員に対して支払った場合は、税務署・市区町村への提出も必要です。
『退職所得の源泉徴収票』の作成にあたり、記入に迷うポイントが、あります。
支払金額や源泉徴収税額等の記入欄が、3つの区分にわかれている箇所です。
3つの区分欄には、条文規定のみが記載されていますので、どこに書くか、一見での判別は困難です。
今回は、『退職所得の源泉徴収票』の3つの区分欄の書き方(書き分け)と、税額計算の留意点をあわせて確認します。
1.上段:同一年に他の退職手当等を受けていない場合
上段への記入を要するのは、受給者が『退職所得の受給に関する申告書』を提出し、かつ、同一年に他の退職手当等の支払を受けていない場合です。
早速、補足ですが、退職手当等の「等」としているのは、会社から支給する退職金とは異なる企業年金基金等の会社から支給される退職金とは性質の異なる支払も含まれるためです。
同一年に他の退職手当等の支払を受けている人は限定されますので、ほとんどの場合が、上段に記入することとなります。
税額計算にあたっては、課税退職所得金額を正確に算出することが、ポイントです。
一般の退職手当等に該当する場合は、支給する退職金の額から、退職所得控除額を減じた額に、2分の1を乗じた額が、課税退職所得金額となります。
特定役員退職手当等、又は、短期退職手当等に該当する場合は、課税退職所得金額の算出方法は、一般の退職手当等とは異なりますので、留意しましょう。
また、支給する退職金の勤続期間が、『退職所得の受給に関する申告書』に記載された前年以前の他の退職手当等の勤続期間と重複する期間がある場合は、重複期間を考慮した退職所得控除額を算出し、課税退職所得金額を確定することを要します。
詳細は、以下のリンク先で、確認しましょう。
🔎 退職手当等に対する源泉徴収|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2732.htm
2.中段:同一年に他の退職手当等を受けている場合
中段への記入を要するのは、受給者が『退職所得の受給に関する申告書』を提出し、かつ、同一年に他の退職手当等の支払を受けている場合です。
受給者は、受給済の退職手当等にかかる『退職所得の源泉徴収票』を添付し、提出することを要します。
同一年に2以上の退職手当等がある場合は、退職所得控除額の算出に、留意しましょう。
例として、A社とB社の2社から退職金の支給がある場合の退職所得控除額の具体的な算出の手順は、以下の①→②の順で確認します。
①はじめに、A社の勤続期間とB社の勤続期間のうち、最も長い勤続期間を勤続年数とする。
②つぎに、①の最も長い勤続期間以外の期間のうち、最も長い期間と重複していない期間がある場合は、その期間を加算して勤続年数とする(1年未満の端数は1年に切上げ)。
なお、基礎となる退職手当等の額は、今回支給する退職金に受給済の退職手当等を合計することになります。
詳細は、以下のリンク先で、確認しましょう。
🔎 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2735.htm
3.下段:退職所得の受給に関する申告書の提出がない場合
下段への記入を要するのは、受給者が、『退職所得の受給に関する申告書』を提出していない場合です。
『退職所得の受給に関する申告書』が未提出の場合、所得税法上の退職所得控除の適用を受けることができず、退職金に20.42%を乗じた額が、源泉所得税となります。
なお、住民税については、『退職所得の受給に関する申告書』が未提出であっても、退職手当等の金額から退職所得控除額を差し引き税額計算することにかわりはありません。
あくまでも、『退職所得の受給に関する申告書』は、国税である所得税における退職所得控除の適用を受けるための申告書となります。
最後にまとめ。
・退職金を支給したら、支払者は『退職所得の源泉徴収票』の作成が、必要。
・『退職所得の源泉徴収票』の支払金額や税額欄は、3つの区分欄に、わかれている。
・3つの区分欄は、『退職所得の受給に関する申告書』の提出有無と同一年に他の退職手当等の受領有無により、記入欄は異なる。
以上
written by tantosya-masao