手取り増で年金減?選択制の確定拠出年金で減額される5つの年金・給付金

選択制」の企業型確定拠出年金は、給与の一部を、確定拠出年金として、拠出・運用する仕組みです。

選択制という名の通り、拠出するか否かは、会社員自身が選択します。

掛金を拠出する場合は、給与が減額されるため、「給与減額型」の確定拠出年金ともよばれます。

給与減額されることで、税金と社会保険料負担は、大きく軽減されます。

一方で、社会保険料の負担軽減は、社会保障給付の減額につながります。

負担」と「給付」の関係です。

今回は、選択制の確定拠出年金制度における掛金拠出と社会保障給付の減額の関連性を理解するとともに、5つのライフイベントごと年金・給付金の減額対策も検討することとします。

1.制度の仕組み

1-1.給与減額と掛金拠出の仕組み

はじめに、選択制の確定拠出年金の基本的な仕組みを、図で確認しましょう。

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選択制の確定拠出年金制度における掛金の元手は、自身の給与です。

掛金拠出は、給与減額に直結します。

拠出限度額は、他に確定給付企業年金等がない場合は月額55,000円(年66万円)、他に確定給付企業年金等がある場合は月額27,500円(年33万円)です。

拠出金は、掛金変更で会社員自身が自由に増減させることが可能です。

ただし、掛金変更は、年1回や年2回と各企業で回数制限や変更時期を指定していることが一般的です。

1-2.3つのメリット

選択制の確定拠出年金では、拠出時運用時受取時の3つの局面で、それぞれメリットがあります。

①拠出時:税金・社会保険料が軽減される

給与減額に伴い、課税対象額と社保算定額が減額されることにより、税金と社会保険料が軽減されます。

具体的には、以下が、減ります。

●税金…所得税・住民税

●社会保険料…健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料

②運用時:運用益が非課税となる

預貯金の利息や投資信託の運用益には、通常、源泉分離課税により税金がかかります。

ですが、確定拠出年金を利用した場合の利息・運用益は、非課税です。

③受取時:退職所得控除・公的年金等控除により税金が軽減される

拠出・運用した確定拠出年金は、60歳になると老齢給付金として受け取ることが可能です。

受け取り方法は、一時金又は年金となります。

一時金・年金のいずれの場合も、税制の所得控除のメリットを受けることができます。

「一時金」→退職所得控除

一時金で受け取る場合は、退職所得となり、退職所得控除を受けることができます。

🔎 退職金を受け取ったとき|国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm

「年金」→公的年金等控除

年金で受け取る場合は、公的年金等の雑所得となり、公的年金等控除を受けることができます。

🔎 公的年金等の課税関係|国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm

1-3.3つのデメリット

選択制確定拠出年金のデメリットも、3つ確認しましょう。

①60歳まで引き出し不可

一番のポイント。

緊急でお金が必要になったときに、貯まっていても、下ろせません。

余裕資金がない人は、給与でもらっていた方が、安心です。

②資産運用のリスクを負う

元本確保型の商品もあります。

元本確保型の商品を選択することで、損失リスクは軽減可能です。

③将来受給する年金額や給付金が減る

やっと、本題です。

社会保険料の支払額が減ることで、その見返りとなる給付は、当然に、減ります。

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 ↓ 次の章で詳細を確認しましょう。

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2.社会保障給付への影響

5つのライフイベントごとの社会保障給付への影響を確認しましょう。

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2-1.老齢の年金が減る【老齢厚生年金】

🔎 老齢厚生年金|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20200306.html

老齢厚生年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年以上である場合に、原則、65歳から支給されます。

支給額は、「平均標準報酬額」に所定係数と被保険者期間の月数を乗じて得た額です。

「平均標準報酬額」の原則の計算は、以下です。

(被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額)÷被保険者期間の月数

給与減額により、平均標準報酬額の元となる標準報酬月額が減り、老齢厚生年金の額も減ります。

老齢厚生年金は、生涯受け取ることができますので、長生きすればするほど、その影響は大きくなります。

ただし、標準報酬月額には、上限があります。

上限等級は、65万円。

確定拠出年金として掛金を拠出しても、減額後の給与額が65万円以上確保される高所得者には、影響はありません

高所得者は、老齢厚生年金の観点でいえば、損得計算は不要で、安心して拠出できます。

2-2.出産の手当が減る【出産手当金】

🔎 出産で会社を休んだとき|協会けんぽ

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3290/r148/

出産手当金は、出産の日(出産の日が出産の予定日後であるときは、出産の予定日)以前42日(多胎妊娠は98日)から出産の日後56日までの間において労務に服さなかった期間について支給されます。

支給額は、1日につき「標準報酬日額」の3分の2に相当する額です。

「標準報酬日額」の原則の計算は、以下です。

支給開始日(一番最初に出産手当金が支給された日)の以前12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日

妊娠がわかった段階で、掛金変更により拠出額を減額させ、給与額の受け取りを増やし、標準報酬月額を上げておくと、出産手当金の減額を軽減することが可能です。

標準報酬月額が30万円と、25万円では、10万円ほど、受取額に差ができます。

なお、出産手当金で使用する健康保険の標準報酬月額の上限は139万円です。

拠出後の給与額が139万円以上確保される高所得者は、こまごました掛金変更は、不要です。

2-3.育児の給付金が減る【育児休業給付金】

🔎 育児休業給付とは|ハローワークインターネットサービス

https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_continue.html

育児休業給付金は、1歳(一定の要件の場合は延長有り)に満たない子を養育するための育児休業を取得し、育児休業期間中の賃金が休業開始時の賃金と比べて80%未満に低下した等、一定の要件を満たした場合に支給されます。

支給額は、育児休業開始から6か月までは「休業開始時賃金月額」の67%相当額、それ以降は50%相当額です。

「休業開始時賃金月額」の原則の計算式は、以下です。

育児休業開始前6か月間の賃金÷180日×30日

女性であれば出産→育児の流れですので、妊娠がわかった段階で掛金変更で拠出額を減らし、給与とのして受取額を増やしておくことが、よいでしょう。

産後休暇終了後に子が一歳になるまで育児休業を取得した場合、休業開始時賃金月額が30万円と、25万円では、30万円ほど、受取額に差ができます。

結構、大きい。

賃金月額にも、上限が設定さています。

毎年8月1日に変更され、最新の令和2年8月1日の上限額は456,300円です。

掛金拠出により減額後の給与が上限額以上であれば、給付金に影響はありません。

2-4.傷病の手当が減る【傷病手当金】

🔎 病気やケガで会社を休んだとき|協会けんぽ

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3040/r139/

傷病手当金は、業務外の事由による療養のため労務に服することができないときに、その労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができない期間、支給されます。

支給額は、1日につき「標準報酬日額」の3分の2に相当する額です。

「標準報酬日額」の原則の計算は、以下です。

支給開始日(一番最初に出産手当金が支給された日)の以前12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日

支給額も、標準報酬日額の計算も、出産手当金と同様です。

出産や育児と違い、傷病は事前に備えるのは難しいでしょう。

傷病手当金の支給期間は、最長1年6か月にもおよびます。

傷病期間1年の場合、30万円と25万円では、40万円ほど、受取額に差がでます。

健康に不安がある人は、選択制の確定拠出年金は利用せず、満額の給与を受け取る選択が無難でしょう。

2-5.失業の手当が減る【失業手当】

🔎 基本手当について|ハローワークインターネットサービス

https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html

いわゆる失業手当は、原則として、離職前2年間に被保険者期間が12か月以上ある場合に、支給されます(一般受給資格者の場合)。

支給額は、「賃金日額」に給付率(賃金が低いほど高い給付率)を乗じた額(=基本手当日額)です。

「賃金日額」の原則の計算は、以下です。

離職前6ヶ月間の賃金総額÷180

傷病と同様、失業も事前に想定するのは、難しいでしょう。

会社に不安(不満)がある人は、選択制の確定拠出年金は利用せず、満額の給与を受け取る選択が無難でしょう。


最後にまとめ。

・当面のお金に困っていないのであれば、掛金を拠出・運用し、メリットを受ける。

・出産・育児の給付額の減少は、掛金変更で備える。

・標準報酬月額や賃金月額の上限を超える高所得者は、給付減額の心配はない。

以上

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