日本型雇用の3種の神器といえば「年功序列」「企業内組合」そして「終身雇用」。
内閣府の人生100年時代構想会議の「終身雇用の状況に関する調査」(2018年6月)が興味深い。
「初職が正規雇用で、一度も退職することなく「終身雇用」パスを歩んでいる男性(退職回数0回)は、今や、30代後半で42%、40代で38%、50代前半で36%に過ぎない。」(原文ママ)
「過ぎない」とありますが、まだまだ、終身雇用です。
労働政策研究・研修機構の「第7回勤労生活に関する調査」(2016年9月)によると、20代の過半数は終身雇用を希望しています。
終身雇用は勤務先に大きく左右されます。今回は終身雇用を目指すならどんな会社に勤めるべきか統計調査の結果から考察することとします。
1.離職率
離職率にかかる指標は厚生労働省の「雇用動向調査」(2018年)を確認します。
🔎 雇用動向調査|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/9-23-1.html
はじめに、離職率の定義についてサクっと理解しておきましょう。
離職率とは「特定期間の離職者の割合」です。雇用動向調査の離職率の計算式は以下です。
離職率=離職者数÷1月1日現在の常用労働者数×100(%)
常用労働者とは「期間を定めずに雇われている人」又は「1か月以上の期間を定めて雇われている人」です。離職者数は1年間の離職率を確認する場合は年間の離職者数となります。
2018年の雇用動向調査では離職率は14.6%となっています。
早速、離職率を3つの側面で確認しましょう。
(1)企業規模別の離職率
企業規模別には、離職率に大きな差が認められません。
・ 1000人以上 15.5 %
・ 300~999人 15.2 %
・ 100~299人 15.6 %
・ 30~ 99人 13.7 %
・ 5~ 29人 12.0 %
(2)都道府県別の離職率
都道府県別には、大きな差が認められます。
1 沖縄 35.9 %
2 山口 35.2 %
↑↑↑↑ 30%以上 ↑↑↑↑
3 鹿児島 29.4 %
4 宮崎 25.0 %
5 高知 22.6 %
6 熊本 22.0 %
7 秋田 21.0 %
8 北海道 20.5 %
↑↑↑↑ 20%以上 ↑↑↑↑
9 広島 19.3 %
10 佐賀 18.6 %
11 栃木 18.3 %
12 島根 17.7 %
13 福井 17.1 %
14 群馬 17.0 %
15 鳥取 16.4 %
16 石川 16.1 %
17 宮城 15.9 %
18 滋賀 15.6 %
19 岩手 15.5 %
20 京都 15.5 %
21 福島 15.1 %
22 徳島 15.0 %
23 福岡 15.0 %
24 大分 14.7 %
↑↑↑↑ 全国平均上 ↑↑↑↑
25 青森 14.2 %
26 愛媛 14.1 %
27 東京 14.0 %
28 新潟 14.0 %
29 香川 13.7 %
30 大阪 13.5 %
31 神奈川 13.2 %
32 千葉 13.1 %
33 長野 13.1 %
34 岡山 12.5 %
35 富山 12.2 %
36 兵庫 12.2 %
37 山梨 11.7 %
38 茨城 11.3 %
39 愛知 11.3 %
40 山形 11.1 %
41 埼玉 10.9 %
42 岐阜 10.8 %
43 三重 10.7 %
44 静岡 10.3 %
45 奈良 10.3 %
46 和歌山 10.0 %
↓↓↓↓ 10%未満 ↓↓↓↓
47 長崎 9.7 %
(3)業種別の離職率
業種別にも、大きな差が認められます。
1 宿泊業,飲食サービス業 26.9 %
2 生活関連サービス業,娯楽業 23.9 %
↑↑↑↑ 20%以上 ↑↑↑↑
3 サービス業(他に分類されないもの) 19.9 %
4 教育,学習支援業 16.6 %
5 医療,福祉 15.5 %
↑↑↑↑ 全国平均上 ↑↑↑↑
6 不動産業,物品賃貸業 13.7 %
7 卸売業,小売業 12.9 %
8 情報通信業 11.8 %
9 金融業,保険業 11.1 %
10 電気・ガス・熱供給・水道業 10.7 %
11 運輸業,郵便業 10.5 %
12 学術研究,専門・技術サービス業 10.1 %
↓↓↓↓ 10%未満 ↓↓↓↓
13 製造業 9.4 %
14 複合サービス事業 9.3 %
15 建設業 9.2 %
16 鉱業,採石業,砂利採取業 6.7 %
2.離職理由
離職理由も厚生労働省の「雇用動向調査」(2017年)で確認します。転職入職者(
入職者のうち入職前1年間に就業経験のある者)が前職を辞めた理由別の割合は以下です。
――労働条件に起因する離職――
給料が少ない ㊚10.2% ㊛8.8%
労働時間・休日等の労働条件が悪い ㊚10.0% ㊛13.4%
――会社業績に起因する離職――
会社の将来が不安 ㊚7.6% ㊛4.0%
会社都合 ㊚5.9% ㊛4.7%
――職場環境に起因する離職――
職場の人間関係 ㊚7.7% ㊛11.8%
――仕事内容に起因する離職――
能力・個性・資格を生かせなかった ㊚4.8% ㊛4.3%
仕事の内容に興味がない ㊚4.6% ㊛5.5%
――個人的事情――
結婚 ㊚0.7% ㊛2.6%
介護・看護 ㊚0.6% ㊛1.2%
出産・育児 ㊚0.3% ㊛1.3%
――その他――
定年・契約満了 ㊚16.9% ㊛14.8%
その他の理由 ㊚29.4% ㊛25.5%
勤務先に大きく起因する「労働条件」「会社業績」が離職理由の約4割を占めていることがわかります。
3.終身雇用の影響因子
それでは、離職率と離職理由の調査結果から終身雇用の影響因子を確認しましょう。
①勤務先の「規模」
あまり関係がない。会社が大きいから辞めないわけではない。
②勤務先の「場所」
意外に関係がある。離職率は西高東低である。
③勤務先の「業種」
大きな関係がある。サービス業は転職が当たり前。
④勤務先の「労働条件」
大きな関係がある。長時間勤務の職場からは人が去る。
⑤勤務先の「業績」
当然関係がある。赤字会社は続かない。
終身雇用を目指すなら、
「長崎で鉱業を営む従業員30人未満の残業のない業績のよい会社」
に就職しましょう。
以上
written by suchika-hakaru