すぐわかる!労働保険年度更新の算定基礎賃金集計表の5つの欄の集計対象者

1001_社労士つとむの実務と法令
この記事は約6分で読めます。

労働保険は、労災保険と雇用保険の総称です。

労働保険の年度更新とは、前年度の労働保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と新年度の概算保険料の申告・納付の手続きのこと。

毎年6月1日から7月10日が、原則の手続き期間です。

確定精算・概算納付は申告書の提出によることとなりますが、申告書作成に必要な作業が労働保険料の算定基礎賃金の集計です。

作業としては「算定基礎賃金集計表」を作成します。

今回は、労働保険年度更新の「算定基礎賃金集計表」で集計を要する5つの欄の具体的な集計対象者を確認しましょう。

第一章.算定基礎賃金集計表の構成

厚生労働省作成の令和3年度の労働保険年度更新申告書の書き方(継続事業)で「算定基礎賃金集計表」の構成を確認します。

↓ クリックして拡大 ↓

集計表は、縦7列の記入欄に区別されています。

<労災保険および一般拠出金>

❶常用労働者

❷役員で労働者扱いの人

❸臨時労働者

❹合計(❶+❷+❸)

<雇用保険>

➎雇用保険の資格のある人

❻役員で雇用保険の資格のある人

❼合計(➎+❻)

❹と❼は合計欄ですので、他の5つの欄の集計対象者を、次の章で確認します。

第二章.算定基礎賃金集計表の5つの欄の集計対象者

2-1.常用労働者(労災保険欄)

雇用保険被保険者から、以下の①~③の人を除いた人数・賃金額を記入します。

①役員で労働者扱いの人

いわゆる兼務役員。

法人の取締役・理事・無限責任社員等の地位にある者であっても、法令・定款等の規定に基づいて業務執行権を有すると認められるもの以外の者で、事実上業務執行権を有する取締役・理事・代表社員等の指揮監督を受けて労働に従事し、その対償として賃金を得ている者。

業務執行権とは、株主総会、取締役会の決議を実行し、又日常的な取締役会の委任事項を決定、執行する権限(代表者が行う対外的代表行為を除く会社の諸行為のほとんどすべてを行う権限)のこと。

②出向労働者

出向労働者が出向先事業組織に組入れられ、出向先事業主の指揮監督を受けて労働に従事する場合は、出向元で支払われている賃金も出向先で支払われている賃金に含めて計算することとなりますので、出向元では労働保険料の集計対象からは除外します。

③海外派遣者

海外の事業場に所属して、その事業場の使用者の指揮に従って勤務する労働者、又は、その事業場の使用者。海外派遣者は特別加入の仕組みで労災保険に加入することとなりますので、継続事業の年度更新の集計からは除外します。

なお、単に労働の提供の場が海外にあるにすぎず、国内の事業場に所属し、その事業場の使用者の指揮に従って勤務する海外出張者は、集計からは除外しません。

2-2.役員で労働者扱いの人(労災保険欄)

2-1の常用労働者の集計から除外した役員で、労働者扱いの人の人数・賃金額を記入します。

保険料の対象となる賃金は、役員報酬の部分は含めず、労働者としての賃金部分のみを集計します。

2-3.臨時労働者(労災保険欄)

雇用保険未加入のパート・アルバイト等の人数・賃金額を記入します。

2-4.雇用保険の資格のある人(雇用保険欄)

雇用保険被保険者から、役員で雇用保険の資格のある人を除いた人数・賃金を記入します。

雇用保険の原則の加入要件は、①1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ、②31日以上の雇用見込みの2点です。

原則の加入要件を満たす場合であっても、いわゆる昼間学生や、季節的業務に雇用される場合で所定要件を満たすときは、適用除外となりますので、雇用保険の被保険者とはなりません。

2-5.役員で雇用保険の資格のある人(雇用保険欄)

2-1の常用労働者の集計から除外した役員で労働者扱いの人の人数・賃金額を記入します。

雇用保険に関する業務取扱要領(令和3年2月1日以降)に記載された具体的な事例も確認しましょう。

20351(1)労働者性の判断を要する場合

イ 取締役及び社員、監査役、協同組合等の社団又は財団の役員
(イ) 株式会社の取締役は、原則として、被保険者としない。取締役であって同時に会社の部長、支店長、工場長等従業員としての身分を有する者は、報酬支払等の面からみて労働者的性格の強い者であって、雇用関係があると認められるものに限り被保険者となる。なお、この場合において、これらの者が失業した場合における失業給付の算定の基礎となる賃金には、取締役としての地位に基づいて受ける役員報酬が含まれないことは当然であるので、これらの者について離職証明書が提出されたときには、この点に留意する。
(ロ) 代表取締役は被保険者とならない。
(ハ) 監査役については、会社法上従業員との兼職禁止規定(会社法第335条第2項)があるので、被保険者とならない。ただし、名目的に監査役に就任しているに過ぎず、常態的に従業員として事業主との間に明確な雇用関係があると認められる場合はこの限りでない。
(ニ) 合名会社、合資会社又は合同会社の社員は株式会社の取締役と同様に取り扱い、原則として被保険者とならない。
(ホ) 有限会社の取締役は、株式会社の取締役と同様に取り扱い、会社を代表する取締役については、被保険者としない(平成18年5月1日の会社法の施行に伴い、施行日後は、新たに有限会社を設立することはできないこととなったが、施行日前に設立された有限会社は、引き続き、その商号中に有限会社の名称を用いることとされている。)。
(ヘ) 農業協同組合、漁業協同組合等の役員は、雇用関係が明らかでない限り被保険者とならない。その他の法人又は法人格のない社団若しくは財団(例えば、特定非営利活動法人(NPO法人))の役員は、雇用関係が明らかでない限り被保険者とならない。

保険料の対象となる賃金は、役員報酬の部分は含めず、労働者としての賃金部分のみを集計対象とします。

第三章.算定基礎賃金集計表の集計対象者早見表

5つの欄の集計対象者の早見表です。

↓ クリックして拡大 ↓


労働保険年度更新の書き方は、厚生労働省の以下のページで、毎年更新版が公開されます。

🔎 労働保険徴収関係リーフレット一覧|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/gyousei/index.html

算定基礎賃金集計表のEXCEL版は、以下のページからダウンロードしましょう。

🔎 労働保険関係各種様式|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhoken01/yousiki.html

以上

written by sharoshi-tsutomu

タイトルとURLをコピーしました