入社月に退職し同月得喪に該当する場合の健康保険と厚生年金保険の取扱い

同月得喪どうげつとくそうとは、社会保険の資格取得日と資格喪失日が、同一月に存在することです。

例えば、4月1日に入社した社員が、4月29日に退職した場合、資格取得日は入社日となる4月1日、資格喪失日は退職日の翌日となる4月30日が資格喪失日です。

この場合、同一月に取得日と喪失日が存在するため、同月得喪に該当します。

同月得喪に該当する場合、被保険者が負担する健康保険と厚生年金保険では、取扱いが異なります。

今回は、同月得喪に該当する場合の健康保険と厚生年金保険の取扱いの違いについて確認します。

1.健康保険の取扱い

同月得喪に該当した場合の健康保険料は、被保険者から1か月分の保険料の控除が必要です。

詳細を、条文規定で、確認しましょう。

健康保険料の控除にかかる規定は、健康保険法第156条に規定されています。

(被保険者の保険料額)
第百五十六条 被保険者に関する保険料額は、各月につき、次の各号に掲げる被保険者の区分に応じ、当該各号に定める額とする
一 介護保険法第九条第二号に規定する被保険者(以下「介護保険第二号被保険者」という。)である被保険者 一般保険料額(各被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額にそれぞれ一般保険料率(基本保険料率と特定保険料率とを合算した率をいう。)を乗じて得た額をいう。以下同じ。)と介護保険料額(各被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額にそれぞれ介護保険料率を乗じて得た額をいう。以下同じ。)との合算額
二 介護保険第二号被保険者である被保険者以外の被保険者 一般保険料額
2 前項第一号の規定にかかわらず、介護保険第二号被保険者である被保険者が介護保険第二号被保険者に該当しなくなった場合においては、その月分の保険料額は、一般保険料額とする。ただし、その月に再び介護保険第二号被保険者となった場合その他政令で定める場合は、この限りでない。
3 前二項の規定にかかわらず、前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合においては、その月分の保険料は、算定しない

健保法第156条第1項により、健康保険料は、月単位で徴収(控除)されることが、原則です。

例外として徴収が不要となるのは、健保法第156条第3項の規定の「前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合」です。

同月得喪の場合は、取得月と喪失月が同一月となるため、「前月から引き続き被保険者である者」に該当しませんので、徴収が必要となります

なお、介護保険も同様の取扱いとなり、また、会社負担についても、被保険者同様に負担が必要となります。

🔎 資格を喪失した月の保険料を納付していましたが、還付されますか?|協会けんぽ

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat650/r323/#q7

2.厚生年金保険の取扱い

同月得喪に該当した場合の厚生年金保険料も、被保険者からの1か月分の保険料の控除は、原則は、必要です。

しかしながら、資格喪失の同月に、再就職し別の会社で厚生年金の資格取得をした場合や、国民年金の資格を取得した場合は、納めた厚生年金保険料は還付されることとなります。

厚生年金保険料の源泉控除は、厚生年金保険法第84条に規定されています。

(保険料の源泉控除)
第八十四条 事業主は、被保険者に対して通貨をもつて報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所又は船舶に使用されなくなつた場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる
2 事業主は、被保険者に対して通貨をもつて賞与を支払う場合においては、被保険者の負担すべき標準賞与額に係る保険料に相当する額を当該賞与から控除することができる。
3 事業主は、前二項の規定によつて保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。

ですが、厚年法第84条を確認しても、同月得喪の根拠としては、釈然としません。

保険料控除の根拠となる、厚生年金保険法第19条の被保険者期間の条文を参照します。

[第二節 被保険者期間]
第十九条 被保険者期間を計算する場合には、月によるものとし、被保険者の資格を取得した月からその資格を喪失した月の前月までをこれに算入する。
2 被保険者の資格を取得した月にその資格を喪失したときは、その月を一箇月として被保険者期間に算入する。ただし、その月に更に被保険者又は国民年金の被保険者(国民年金法第七条第一項第二号に規定する第二号被保険者を除く。)の資格を取得したときは、この限りでない
3 被保険者の資格を喪失した後、更にその資格を取得した者については、前後の被保険者期間を合算する。
4 前三項の規定は、被保険者の種別ごとに適用する。
5 同一の月において被保険者の種別に変更があつたときは、前項の規定により適用するものとされた第二項の規定にかかわらず、その月は変更後の被保険者の種別の被保険者であつた月(二回以上にわたり被保険者の種別に変更があつたときは、最後の被保険者の種別の被保険者であつた月)とみなす。

厚年法第19条第2項に、同月得喪の取扱いが、規定されています。

原則は、同月得喪の場合は、1か月の被保険者期間に算入することとなりますが、例外として、「ただし、その月に更に被保険者又は国民年金の被保険者の資格を取得したときは、この限りでない」旨の規定がされ、同月得喪月に、新たに別の資格取得がなされた場合は、被保険者期間の対象外となります

実務的には、退職者の退職後の対応は定かではありませんので、厚生年金保険料は、一旦控除し、年金事務所から還付されたら、退職者に返金する流れが一般的でしょう

還付に該当した場合は、年金事務所から「同月中に被保険者資格を取得・喪失された被保険者に関するお知らせ」が到着します。

事務担当者は、お知らせに同封された「厚生年金保険料の調整・還付について」を記入し、今後発生する保険料との減額調整、又は、還付金として返金のいずれかを選択することが可能です。

🔎 月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/faq/kounen/kounenseido/hihokensha/20140902-01.html

なお、会社負担となる厚生年金保険料、子ども・子育て拠出金も、還付対象です。


最近では、社会保険加入者を、確定拠出年金(DC)にも加入させる企業も、多いでしょう。

確定拠出年金の同月得喪の取扱いは、資格を取得した月にその資格を喪失した者は、その資格を取得した日にさかのぼって、企業型年金加入者でなかったものとみなすこととなります。

資格取得そのものが、なかったこととなります。

同月得喪については、それぞれの制度ごとに、取扱いが異なりますので、留意しましょう。

以上

written by sharoshi-tsutomu