承諾未回答は承諾扱い?給与明細書の電子交付の3つの条件

1005_担当者まさおの体系整理
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給与明細書の電磁的方法による交付(電子交付)は、平成18年税制改正で制度が創設され、平成19年1月1日以後に交付する給与明細書に適用されました。

給与明細書の電子交付には、従業員から個別同意を得るなどの3つの条件があります。

電子交付は、国としても推進しています。

令和5年4月1日以後からは、「会社が定める期限までに承諾をしない旨の回答が従業員からないときは承諾があったものとみなす旨の通知をし、その期限までに従業員から回答がなかったときは、その承諾を得たものとみなすこと」と改正されました。

電子交付により会社側も、用紙代・封筒代の削減、作業人件費の削減等、大きな経費削減が見込めます。

今回は、給与明細書の電子交付に必要となる3つの条件について、確認しましょう。

1.電子交付の3つの条件

給与明細書の電子交付の特例は、所得税法第231条に規定されています。

(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)
第二百三十一条 居住者に対し国内において給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その給与等、退職手当等又は公的年金等の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。
2 前項の給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、同項の規定による給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者の承諾を得て、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができるただし、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者の請求があるときは、当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書を当該給与等、退職手当等又は公的年金等の支払を受ける者に交付しなければならない
3 前項本文の場合において、同項の給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、第一項の給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書を交付したものとみなす。

電子交付の条件は、以下の3つの条件です。

【条件1】事前承諾(従業員から事前に電子交付の承諾を得ること)

【条件2】未承諾者交付(未承諾者には明細書を書面で交付すること)

【条件3】提供要件(所定の要件を満たす電磁的方法により提供すること)

3つの条件を、一つずつ、確認していきましょう。

2.【条件1】事前承諾

電子交付の一つ目の条件は、従業員から事前に電子化の承諾を得ることです(所得税法施行令第356条第1項)。

2-1.承諾事項(同意書記載事項)

従業員から電子交付の承諾を得る場合の具体的な記載事項や書式等について、法令上の定めはありません。

任意に書式を作成することが必要です。

一般的な、同意書の記載事項は、以下の5つです。

❶電子交付の対象帳票(給与明細書・賞与明細書・給与所得の源泉徴収票等)

❷電子交付の具体的な方法(PDFメール配信・給与システムWEB閲覧等)

❸交付予定日(給与・賞与支給日等)

❹交付開始日(同意日等)

➎従業員の同意有無(同意チェック)、同意日、氏名

インターネットで「給与明細電子交付同意書」等で検索すると、書式例が表示されますので、参考にしましょう。

2-2.承諾方法

同意書を作成したら、書面又は電磁的方法で承諾を得ることが必要です。

❶書面による承諾

同意書を従業員に配布し、従業員から書面により、承諾を得る方法です。

❷電磁的方法による承諾

給与システムやWEB明細配信サービスを利用し、システム上に同意書を表示することにより、電磁的に承諾を得る方法です。

【改正:令和5年4月1日以降適用】
給与等の支払をする者からその支払を受ける者に対し、「給与等の支払をする者が定める期限までにその承諾をしない旨の回答がないときはその承諾があったものとみなす」旨を通知し、その期限までに回答がなかったときは、その承諾を得たものとみなす方法が加えられました。

🔎 源泉所得税の改正のあらまし(令和5年4月)【PDF】|国税庁

3.【条件2】未承諾者交付

電子交付の二つ目の条件は、未承諾者には明細書を書面で交付することです(所得税法施行令第356条第2項)。

3-1.未承諾者への書面交付

電子化未承諾者には、従来通り、書面による交付が必要です。

3-2.明細書未交付の罰則

明細書未交付の罰則は、所得税法第242条に規定されています。

規定上は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金が科される可能性があります。

第二百四十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。ただし、第三号の規定に該当する者が同号に規定する所得税について第二百四十条(源泉徴収に係る所得税を納付しない罪)の規定に該当するに至つたときは、同条の例による。
一~五 略
七 第二百三十一条第一項(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)に規定する支払明細書を同項に規定する支払を受ける者に同項の規定による交付をせず、若しくはこれに偽りの記載をして当該支払を受ける者に交付した者又は同条第二項の規定による電磁的方法により偽りの事項を提供した者
八 略

4.【条件3】提供要件

電子交付の三つ目の条件は、所定の要件を満たす電磁的方法により提供することです(所得税法施行規則第92条の2)。

4-1.電子交付の方法

電子交付の方法は、以下の3つです。

❶電子メールを利用する方法(PDFメール配信)

❷社内LAN・WANやインターネット等を利用して閲覧に供する方法(WEB閲覧)

❸フロッピーディスク、MO、CD-ROM等の磁気媒体等に記録して交付する方法

一般的には、給与システムや明細WEB配信サービスにより、❶のPDFメール配信か、❷のWEB閲覧のいずれかとなるでしょう。

4-2.電子交付の基準

選択した電子交付の方法は、以下の2つの基準を満たしていることが必要です。

❶映像面への表示及び書面への出力ができること

❷受信者ファイルに記録(電子交付)する(した)旨を従業員へ通知すること


国税庁は電子交付のQ&Aをサイトに公開しています。参照しましょう。

🔎 給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)に係るQ&A|国税庁

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/denshikofu-qa/question.htm

以上

written by tantosya-masaru

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