育児・介護休業法施行規則等の改正により、2021年1月より、子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります。
法改正の背景は、育児・介護と仕事を両立する労働者に対する両立支援です。これまでは半日単位でしか取得できなかった看護・介護休暇について、時間単位での取得を事業主に義務付けることにより、より柔軟な取得を可能としました。
対象となる労働者も、これまでは1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は対象外でしたが、法改正により、原則、全ての労働者が取得可能となります。
今回は、看護・介護休暇の時間単位取得にかかる法改正の内容、就業規則の規定例、実務面の取扱い等について確認することとします。
1.子の看護休暇・介護休暇
初めに、子の看護休暇・介護休暇とは、どのような休暇なのか基本を再確認しましょう。
1-1.子の看護休暇とは
子の看護休暇とは、子どものけがや病気の世話、予防接種や健康診断を受けるなどの世話を行うための休暇です。
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、その事業主に申し出ることにより、一年度に5日(小学校就学の始期に達するまでの子が2人以上の場合は、一年度に10日)を限度として取得することができます。
なお、「一年度」とは、事業主が別段の定めをする場合を除き、4月1日から3月31日の期間となります。
1-2.介護休暇とは
介護休暇とは、要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族の介護、通院等の付添いや介護サービスの提供を受けるために必要な手続きなどの世話を行うための休暇です。
対象家族が1人の場合は一年度に5日まで、対象家族が2人以上の場合は一年度に10日まで取得することができます。
対象家族の範囲としては、配偶者(事実婚を含む)、父母(配偶者の父母含む)、子、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
なお、子の看護休暇と同様、「一年度」とは、事業主が別段の定めをする場合を除き、4月1日から3月31日の期間となります。
2.法改正の内容
次に、2021年1月からの看護休暇・介護休暇の時間単位取得制度の義務化にかかる法改正内容を確認しましょう。
2-1.法改正の内容(原則)
法改正のポイントは、「取得単位の柔軟化」と「取得対象労働者の拡大」の2点です。
厚生労働省のパンフレットで確認しましょう。
↓ クリックして拡大 ↓
(改正前)半日単位
(改正後)時間単位(1時間の整数倍の時間)
・「半日単位」を「時間単位」に置き換えたもので、半日単位での取得を認めることは義務ではない。
・「中抜け」を認めることも義務ではない。配慮は必要。
(改正前)1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は取得不可
(改正後)全ての労働者が取得可能
・日雇労働者は除く。
・労使協定により特定の労働者を除外することは可。
↓2-2.詳細参照
2-2.労使協定による除外(例外)
看護休暇・介護休暇の時間単位による取得は、全ての労働者に適用されますが、労使協定を締結した場合に限り、以下の労働者を除外することが可能です。
① 継続雇用期間が6ヶ月未満の労働者
② 週の所定労働日数が2日以下の労働者
③ 時間単位で子の看護休暇又は介護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者(1日単位での取得は可能)
③の1日未満単位で取得困難な業務は、厚生労働省告示第207号で以下の業務が例示されています。
(1日未満単位で取得困難な業務の例示)
・国際路線等に就航する航空機において従事する客室乗務員等の業務等であって、所定労働時間の途中まで又は途中から子の看護休暇又は介護休暇を取得させることが困難な業務
・長時間の移動を要する遠隔地で行う業務であって、時間単位の子の看護休暇又は介護休暇を取得した後の勤務時間又は取得する前の勤務時間では処理することが困難な業務
・流れ作業方式や交替制勤務による業務であって、時間単位で子の看護休暇又は介護休暇を取得する者を勤務体制に組み込むことによって業務を遂行することが困難な業務
3.実務面の取扱い
最後に、実務面の取扱いとして「就業規則の規定例」と「ケース別のQ&A」を確認しましょう。
3-1.就業規則の規定例
就業規則の規定も時間単位での取得が可能な旨の規定を追加します。
(子の看護休暇)
子の看護休暇は、時間単位で始業時刻から連続又は終業時刻まで連続して取得することができる。
(介護休暇)
介護休暇は、時間単位で始業時刻から連続又は終業時刻まで連続して取得することができる
詳細は、厚生労働省の以下のサイトで確認しましょう。
🔎 育児・介護休業等に関する規則の規定例|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533.html
3-2.ケース別のQ&A
厚生労働省は「子の看護休暇・介護休暇の時間単位での取得に関するQ&A【PDF】」を作成しています。
Q&Aの要旨について、以下に抜粋します。
●取得単位について
例えば2時間のように1時間を超える時間を最小単位として設定することは不可。
法を上回る「分」単位での取得を認めている場合は、「時間」単位での取得制度を新たに設けることは不要。
看護・介護休暇を1日の所定労働時間の全てで取得した場合は、「1日分」の看護・介護休暇として取り扱う。
例えば、1日の所定労働時間が7時間30分のような場合は、時間未満の30分という端数は切り上げ、時間単位での取得時間累計が8時間となることで1日分として取り扱う。
何時間分の時間単位での休暇取得により1日分となるかは、各労働者の1日の所定労働時間に応じて決まる。
年度の途中で所定労働時間が変更となった場合は、日単位に満たない時間数については所定労働時間数に比例して変更する。
改正前の規定に基づき半日単位の休暇として残った「半日分」は、所定労働時間数の2分の1の時間数として取り扱う。分単位の1時間に満たない端数が生じた場合は、時間数に切り上げることが必要。
時間単位で看護・介護休暇を取得する場合の「時間」は、看護・介護休暇を取得しようとする日の所定労働時間数未満の時間としており、休暇を取得する日の所定労働時間数と同じ時間数の看護・介護休暇を取得する場合には、日単位での看護・介護休暇の取得として取り扱うこととなる。
労務提供義務のない休憩時間に看護・介護休暇を請求する余地はないため、休憩時間を除いた実際に労働に従事することとなる時間帯でみて、始業時刻から連続し又は終業時刻まで連続する時間単位で看護・介護休暇を取得できる。
「時間単位」とは、始業時刻から連続し又は終業時刻まで連続する時間単位を指す。例えば、勤務時間が9:00~17:45(休憩 12:00~13:00)の労働者であれば、終業時刻(17時45 分)から遡った1時間である16時45分から17時45分までが1時間の区切りとなる。
これまで半日単位で看護・介護休暇を取得できることとされていた労働者について、改正後に日単位での看護・介護休暇の取得しか認めないこととすることは、労働者にとって不利益な労働条件の変更になるため、労働契約法の規定により、原則として労使間の合意が必要となる。
半日単位での看護・介護休暇の取得を可能とする場合には、日単位で看護・介護休暇を取得する場合と比べて労働者にとって不利益とならないよう、看護・介護休暇1日の合計時間数が1日の所定労働時間数を下回らないものとする必要がある。
時間単位での看護・介護休暇の取得が可能な労働者については、半日単位での取得を可能とする必要はない。
看護・介護休暇について、「中抜け」による時間単位での取得を認めている場合に、「中抜け」を想定しない制度に変更することは、労働者にとって不利益な労働条件の変更になるため、労働契約法の規定により原則として労使間の合意が必要となることに留意が必要。
●対象労働者について
1日の所定労働時間数が4時間以下の労働者について、改正後は、時間単位での看護・介護休暇の取得ができることとなる。ただし、それらの労働者について、「業務の性質や実施体制に照らし1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者」として労使協定を締結した場合は、事業主は、時間単位での看護・介護休暇の取得の申出を拒むことが可能であるが、業務の態様にかかわらず一律に「1日の所定労働時間数が4時間以下の者」であることをもって時間単位の看護・介護休暇の取得対象から除外する取扱いは適当ではない。
業務の性質や実施体制に照らし、半日単位で看護・介護休暇を取得することが困難と認められる業務と、時間単位で看護・介護休暇を取得することが困難と認められる業務の範囲が異なる可能性があるため、改めて労使協定を締結する必要がある。
例えば、交代制勤務による業務のうち夜勤の時間帯に行われる業務のみを「業務の性質や実施体制に照らし1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務」とすることは可能。
看護・介護休暇は、労働者の労務提供義務を消滅させる効果を有するものであり、柔軟な勤務制度であるフレックスタイム制度とは趣旨が異なる。たとえフレックスタイム制度のような柔軟な労働時間制度が適用される労働者であっても、申出があった場合には、時間単位で看護・介護休暇を取得できるようにしなければならない。
変形労働時間制が適用される労働者が時間単位で看護・介護休暇を取得する場合、変形期間における1日平均所定労働時間数(1時間に満たない端数がある場合には、端数を切り上げ)分の休暇で「1日分」の休暇となる。
以上
written by sharoshi-tsutomu