退職時改定って何?働いている年金受給者の厚生年金額が変更となる4つの時期

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010_退職時改定って何?働いている年金受給者の厚生年金額が変更となる4つの時期
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高齢者の就業率が伸びています。男性に限れば60代後半でも約半数以上が働いています(平成30年版高齢社会白書-内閣府)。

年金受給者であっても、フルタイムで働く人も多くいます。年金受給者がフルタイムで働く場合、70歳までは厚生年金の被保険者として資格を有することとなります。

ここで疑問。

年金受給権の取得後に厚生年金の被保険者として保険料を納付し続けている人は、毎月年金額が変わるのか?

答え・・・

毎月は、変わりません。事務が煩雑なので。

60歳代前半の特別支給の老齢厚生年金の受給権者が、厚生年金に加入しながら働いた場合の年金額の改定時期は4つです。

今回は、厚生年金額の改定時期について、「70歳を超えるまで継続して働き続けた場合」と「途中で退職した場合」の2つのケースで確認することとします。

1.70歳を超えるまで働き続けた場合

平成12年の法改正により、老齢厚生年金の報酬比例部分についても、60歳から65歳に引き上げられました。

ただし、法改正の平成12年4月1日時点の年齢により段階的な引き上げが適用されることとされ、昭和36年4月1日以前生まれの男子(女子は5年遅れ)は、65歳前から老齢厚生年金の報酬比例部分を受給することができます。

🔎 特別支給の老齢厚生年金について|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20140421-02.html

前置き、以上です。

それでは、報酬比例部分の支給開始年齢が63歳となる昭和32年4月2日生まれの男性を例にして、改定時期を確認しましょう。

70歳まで継続して厚生年金の被保険者の資格を継続した場合、厚生年金の改定時期は年齢による改定の3回です。

(昭和32年4月2日生まれの男性の場合の改定時期)

🚩1回目

――63歳

・特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の受給権を得たとき

🚩2回目

――65歳

・本来の老齢厚生年金の受給権を得たとき

🚩3回目

――70歳

・厚生年金の被保険者の喪失事由に該当したとき(70歳到達)

―厚生年金保険法第14条―
(資格喪失の時期)
第14条 第9条又は第10条第1項の規定による被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至つた日の翌日(その事実があつた日に更に前条に該当するに至つたとき、又は第五号に該当するに至つたときは、その日)に、被保険者の資格を喪失する。
一 死亡したとき。
二 その事業所又は船舶に使用されなくなつたとき。
三 第8条第1項又は第11条の認可があつたとき。
四 第12条の規定に該当するに至つたとき。
五 70歳に達したとき

年金額の基礎となる被保険者期間は、受給権を得た月の前月までの期間が算入されます。

よって、62歳までに納付した厚生年金保険料は、1回目の63歳時に反映。

63歳から64歳の保険料は、2回目の65歳時に反映。

65歳から69歳までの保険料は、3回目の70歳時に反映します。

2.途中で退職した場合

それでは、70歳に達するまでの間に退職した場合の取扱いを確認しましょう。

途中で退職した場合の改定を・・・

  退職時改定といいます。

やっと、でてきました。

退職時改定の条件は「資格喪失日(退職日の翌日)」から1か月経過することです。

改定された年金額は「退職日」から1か月経過した日の属する月から改定されます。

「資格喪失日」と「退職日」で改定条件と改定月の基準日が異なります。興味のある方はいないと思いますが、以下の条文を紹介します。読み解いてください。

―厚生年金保険法第43条―
(年金額)
第43条 老齢厚生年金の額は、被保険者であつた全期間の平均標準報酬額(被保険者期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額に、別表各号に掲げる受給権者の区分に応じてそれぞれ当該各号に定める率(以下「再評価率」という。)を乗じて得た額の総額を、当該被保険者期間の月数で除して得た額をいう。附則第17条の6第1項及び第29条第3項を除き、以下同じ。)の1000分の5.481に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて得た額とする。
2 老齢厚生年金の額については、受給権者がその権利を取得した月以後における被保険者であつた期間は、その計算の基礎としない。
3 被保険者である受給権者がその被保険者の資格を喪失し、かつ、被保険者となることなくして被保険者の資格を喪失した日から起算して1月を経過したときは、前項の規定にかかわらず、その被保険者の資格を喪失した月前における被保険者であつた期間を老齢厚生年金の額の計算の基礎とするものとし、資格を喪失した日第14条第二号から第四号までのいずれかに該当するに至つた日にあつては、その日から起算して1月を経過した日の属する月から、年金の額を改定する

厚生年金の被保険者の資格を有する人は、在職老齢年金の仕組みで年金受給額の支給停止も行われます。

🔎 在職中の年金|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/zaishoku/20140421.html

定年再雇用制度や、年金受給者の雇用条件の決定にあたっては、在職老齢年金の仕組みと年金額の改定ルールを勘案し、柔軟な制度設計を行いましょう。

【法改正情報】

2022年4月からは「在職定時改定」という制度が開始されます。

制度の詳細は、以下のリンクで確認ください。

在職定時改定って何?働いている年金受給者の年金額を毎年10月に改定する仕組み – 複線型キャリア開発空間(仮) (virtual-area.net)

以上

written by sharoshi-tsutomu

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