雇用形態別の社会保険と労働保険の適用関係と身分関係変更に伴う手続き

各企業における採用・配置・異動・評価・報酬等の人事管理は、雇用形態別に制度化され運用されていることが一般的です。

同一労働同一賃金が法制化された現在においては、雇用形態別の処遇について見直しを検討している企業も多いでしょう。

社会保険・労働保険は、雇用契約や労働実態に応じて、各保険制度で適用条件が異なります。

今回は、各保険制度における適用条件と雇用形態別の保険関係を確認するとともに、社員の身分関係に変更が生じた場合の手続きについても確認することとします。

1.保険制度別の適用条件

はじめに、5つの保険制度の被保険者の適用条件を確認します。

1-1.健康保険(健保法第3条第1項)

適用条件を3つの被保険者区分ごとに確認しましょう。

●一般社員

正社員や役員等の適用事業所に常時使用される者は被保険者となります。

●短時間就労者

パートタイマー・アルバイト等で、1日又は1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上である場合は、被保険者となります。

●短時間労働者

パートタイマー・アルバイト等で、1日又は1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3未満であっても、①週の所定労働時間が20時間以上、②勤務期間が1年以上見込まれること、③月額賃金が8.8万円以上、④学生以外、⑤特定適用事業所に勤務していることの5つの要件を全て満たす場合は、被保険者となります。

なお、以下に該当する者は適用条件を満たす場合であっても適用除外となります。

・船員保険の被保険者
・日々雇い入れられる者、二月以内の期間を定めて使用される者
・事業所又は事務所で所在地が一定しないものに使用される者
・季節的業務に使用される者
・臨時的事業の事業所に使用される者
・国民健康保険組合の事業所に使用される者
・後期高齢者医療の被保険者
・厚生労働大臣、健康保険組合又は共済組合の承認を受けた者

1-2.介護保険(介保法第9条第二号)

健康保険の被保険者で、日本国内に住所を有する40歳以上65歳未満の者は被保険者(第二号被保険者)になります。

1-3.厚生年金保険(厚年法第9条)

健康保険の適用条件と原則同一となりますが、適用対象となる年齢は70歳未満の者となります(健康保険は75歳未満が適用対象)。

1-4.雇用保険(雇保法第4条第1項)

適用事業に雇用される者で、次の❶・❷に該当する者は被保険者となります。

❶1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
❷31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。

❶の「1週間の所定労働時間」とは、就業規則、雇用契約書等により、その者が通常の週に勤務すべきこととされている時間をいいます。この場合の「通常の週」とは、祝祭日及びその振替休日、年末年始の休日・夏季休暇等の特別休日(すなわち、週休日その他概ね1か月以内の期間を周期として規則的に与えられる休日以外の休日)を含まない週をいいます。

❷の「31日以上雇用されることが見込まれる」とは、次のa~cの場合をいいます。
a.期間の定めがなく雇用される場合
b.雇用期間が31日以上である場合
c.雇用期間が31日未満である場合であっても、雇用契約書に契約更新される場合がある旨が記載されている、又は、当該事業所において同様の雇用契約に基づき雇用されている者について更新等により 31日以上雇用された実績がある場合

なお、以下に該当する者は❶・❷を満たす場合であっても適用除外となります。

・季節的に雇用される者であって、4か月以内の期間を定めて雇用される者、又は、1週間の所定労働時間が30時間未満の者
・学校教育法第1条に規定する学校、同法第124条に規定する専修学校または同法第134条に規定する各種学校の学生または生徒(いわゆる昼間学生)
・船員であって、特定漁船以外の漁船に乗り組むために雇用される者(1年を通じて船員として雇用される場合を除く)
・国、都道府県、市区町村等の事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、雇用保険の求職者給付および就職促進給付の内容を超えると認められる者

1-5.労災保険(労基法第9条)

労働者災害補償保険法には、労働者の定義は規定されていませんが、法律の目的・趣旨等から、労働基準法上の労働者を指すと解されます。

労働基準法の労働者とは、職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者をいいます。

<保険制度別の適用条件表>

保険制度別の適用条件について表にまとめました。

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2.雇用形態別の保険関係

次に、雇用形態を5つに分類し、一般的な保険関係の適用について確認します。

2-1.役員

社会保険(健保・介護・年金)は、役員であっても適用事業所に使用される者として、適用対象となります。

一方、労働保険(雇保・労災)は、法人の役員は雇用者には該当しないため、原則、適用除外となります。

2-2.正社員(無期雇用)

社会保険・労働保険のいずれも適用対象となります。

2-3.契約社員(有期雇用)

無期・有期の雇用形態による差は社会保険・労働保険の適用に影響はありませんので、正社員と同様の勤務形態であれば、契約社員は社会保険・労働保険のいずれも適用対象となります。

2-4.パートタイマー(短時間・有期雇用)

パートタイマーとは、一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいいます(パートタイム労働法第2条第1項)。

パートタイマーの保険関係の適用は、社会保険であればいわゆる4分の3基準、雇用保険であれば週20時間基準で適用判定を行うこととなります。

2-5.アルバイト(短期間・有期雇用)

パートとアルバイトに法的な身分の違いはありませんが、一般的には、パートは長期雇用を前提とした短時間労働者、アルバイトは長期雇用を前提としていない短時間労働者となります。

アルバイトは、社会保険は未加入(4分の3基準非該当)、雇用保険は労働実績に応じて加入(週20時間・31日以上雇用)とされる場合が一般的でしょう。

なお、アルバイトであっても、労災保険については当然に適用対象となります。

<雇用形態別の保険関係の適用表>

雇用形態別の一般的な保険関係の適用について表にまとめました。

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3.身分関係が変更となったときの保険関係の手続き

最後は、社員の雇用形態(身分関係)の変更に伴い行う、社会保険・労働保険関係の変更手続きです。

3-1.社員が兼務役員となったとき

💡 雇用保険の手続きが必要です。

役員は原則として雇用保険の被保険者とはなりませんが、部長、支店長、工場長等の従業員としての身分も有し、報酬支払等の面からみて労働者的性格が強い者は、兼務役員として継続して被保険者となることができます。

手続きとしては、ハローワークに『兼務役員雇用実態証明書』を所要の書類を添付し提出します。

🔎 兼務役員雇用実態証明書|東京ハローワーク

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/kakushu_jouhou/sinsei_todokede/koyounushi/koyou_hoken.html

3-2.社員が出向となったとき

💡 労災保険の保険関係が変更されます。

労災保険関係については、出向労働者が、出向先事業の組織に組み入れられ、出向先事業場の他の労働者と同様の立場(ただし、身分関係及び賃金関係を除く。)で、出向先事業主の指揮監督を受けて労働に従事している場合には、出向先の労災保険の適用を受けることとなります(昭和35年11月2日基発第932号)。

労災保険料の納付についても、出向労働に対して支払う賃金は、出向先事業に関する賃金総額に含め、保険料を算定し、納付することとなります。

労災保険の保険料の納付先は変更となりますが、出向者個人に関する労災保険関係の異動手続きは発生しません。

なお、雇用保険については、生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける事業所においてのみ被保険者となりますので、在籍出向の際も出向元で継続加入となります。

3-3.社員が定年により再雇用となったとき

💡 社会保険の同日得喪の手続きが必要となる場合があります。

60歳以上の者で、退職後継続して再雇用される場合は、使用関係が一旦中断したものとみなし、事業主から『被保険者資格喪失届』及び『被保険者資格取得届』を提出させる取扱いが認められています。

定年再雇用により賃金額が下がる場合は、同日得喪の手続きを行うことにより、再雇用月より低下した賃金額による標準報酬月額となりますので、保険料を低減することが可能となります。

🔎 嘱託として再雇用された者の被保険者資格の取扱い|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/faq/kounen/kounenseido/shokutakusaikoyo/index.html

3-4.社員が海外勤務となったとき

💡 介護保険の適用除外、厚生年金の適用証明、労災保険の特別加入の手続きが必要です。

介護保険は、海外勤務者は日本国内に住所を有さないこととなりますので、適用除外となります。

手続きとしては、『介護保険適用除外等該当・非該当届』を日本年金機構又は健保組合に提出します。

🔎 介護保険の被保険者から外れるまたは被保険者になるための手続き|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha2/20120803-02.html

健康保険及び厚生年金保険は、海外に住所がある人に対しても引き続き適用されますが、厚生年金保険については外国の社会保制度と二重に加入を防ぐため、社会保障協定を締結した国に短期間の赴任をする場合は、外国の年金制度の適用を免除するための手続きが必要です。

具体的には、事業主が年金事務所に『適用証明書交付申請書』を提出し、適用証明書の交付を受け、赴任先で社会保障制度に加入していない理由を照会されたときに提示することとなります。

🔎 日本から協定を結んでいる国で働く場合の手続き|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/shaho-kyotei/shikumi/nijukanyuboshi/20131220-04.html

労災保険は、本来、国内にある事業場に適用され、そこで就労する労働者が給付の対象となる制度ですから、海外の事業場で就労する方は対象となりませんが、外国の制度の適用範囲や給付内容が必ずしも十分でない場合もあることから、海外派遣者についても特別加入の制度が設けられています

手続きとしては、所轄の労働基準監督署に『特別加入申請書』を提出します。

🔎 特別加入制度のしおり(海外派遣者用)|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040324-7.html

3-5.社員が2か所勤務者となったとき

💡 社会保険の2か所勤務の手続きが必要です。

役員が複数会社の役員に就任することとなった場合等は、社会保険の二以上事業所勤務の手続きが必要となります。

🔎 複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20131022.html

標準報酬月額の決定に際してはそれぞれの事業所の報酬額を合算し、合算額により決定された標準報酬月額により保険料の納付額は事業所ごとの按分額により納付することとなります。煩雑です。

なお、雇用保険制度では同時に二以上の雇用関係がある場合であっても、労働者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける一の雇用関係についてのみ、被保険者となりますので、身分関係の変更に伴う手続きは発生しません。

3-6.社員が資格喪失年齢に到達したとき

💡 社会保険の保険関係の喪失手続きが必要です。

社会保険制度は、一定年齢に到達すると被保険者資格が喪失される仕組みとなっています。

●健康保険

75歳になると後期高齢者医療の被保険者となるので75歳になると被保険者資格は喪失します。

後期高齢者医療制度への加入手続きは自動で行われますが、健康保険の喪失手続きは自動では行われませんので、事業主は手続きが必要となります。

●介護保険

65歳になると第一号被保険者となりますので、第二号被保険者としての身分は喪失します。

第一号被保険者になると本人が直接市区町村へ保険料を納付することとなりますので、給与から介護保険料の控除は不要となります。

なお、65歳到達による事業主の届出手続きは発生しません。

●厚生年金保険

70歳になると厚生年金保険法の被保険者資格は喪失します。

なお、70歳到達日以降も引き続き同一の適用事業所に使用され、かつ、70歳到達日時点の標準報酬月額相当額に変更がない場合は、日本年金機構において、厚生年金保険の資格喪失処理及び70歳以上被用者該当処理が行われますので、事業主の手続きは不要となります。

🔎 平成31年4月から被保険者の70歳到達時における資格喪失等の手続きが変更となります|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2019/2019031501.html

以上

written by sharoshi-tsutomu