退職後の健康保険はどれがトク?3つの選択肢のメリットとデメリット

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日本は、国民皆保険です。

すべての人が何らかの公的医療保険制度に加入しています。

退職するとそれまで勤務先で加入していた健康保険からは外れます。

再就職先が決まっている場合は、再就職先の健康保険に加入することとなりますので、考えることはありません。

再就職しない場合の選択肢は、3つです。

一つ目は、健康保険の任意継続被保険者になること。

二つ目は、市区町村の国民健康保険に加入すること。

三つ目は、家族の健康保険の被扶養者になること。

今回は、退職後の健康保険の3つの選択肢のメリットとデメリットを確認し、どれを選べばトクなのか結論づけましょう。

1.健康保険の任意継続被保険者になる

健康保険の任意継続被保険者になる場合は、退職前に加入していた健康保険(協会けんぽ、又は、健保組合)で手続きをします。

1-1.加入要件

以下の①・②のいずれも満たすことが必要です。

①健康保険の被保険者期間が継続して2か月以上あること。

②退職日の翌日から20日以内に手続きすること。

🔎 任意継続被保険者となるための要件|協会けんぽ

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat710/sb3160/sb3180/sbb3180/1984-6168/

1-2.保険料

会社に勤めていたときは、会社にも保険料を負担してもらっていましたが、任意継続被保険者になると保険料は、全額が自己負担です。

保険料率を乗ずる標準報酬月額は、以下の①・②のいずれか少ない方の額となります。

①退職時の本人の標準報酬月額

②加入していた健康保険の全被保険者の平均標準報酬月額

退職時の本人の標準報酬月額が高くても加入している健康保険の平均標準報酬月額が少ない場合は保険料は抑えることができますが、みんなが高給取りの健康保険組合では、保険料を抑えることはできません。

1-3.メリット・デメリット

🔷メリット

○健康保険組合であれば付加給付もあるので、給付メリットを受けることができる。

○人間ドック補助や福利厚生サービスも継続して受けることができる。

○出産手当金や傷病手当金を退職時に受給している場合は継続して受けることができる場合がある。

🔶デメリット

●本人収入が高く、かつ、みんなが高給取りの健康保険組合では、保険料は高額となる。

●再就職する場合などを除き、加入すると2年間は任意に脱退することができない。

任意継続被保険者のデメリットの任意に脱退することができない件は、保険料を指定された納付期日までに納めなければ強制的に任意継続被保険者としての資格は喪失されますので、脱退が不可能なわけではありません。

ですが、国民健康保険に加入するのも、家族の健康保険の被扶養者になるのも、手続きに時間がかかりますので、一時的に無保険者状態となり、危険です。

2.国民健康保険に加入する

国民健康保険に加入する場合は、住んでいる市区町村で手続きをします。

2-1.加入要件

所定の申請期間に所定の申請書類を提出すれば、原則、加入できます。

加入要件と手続きの詳細は、住んでいる市区町村に問い合わせましょう。

2-2.保険料

前年の収入や世帯の加入者数等で保険料が決定されますが、市区町村により、保険料は異なります。

市区町村のサイトで保険料を簡易に試算できる場合もありますので、検索しましょう。

全国の市区町村の国民健康保険料を試算できる便利なサイトもあります。

🔎 国民健康保険計算機

kokuho-keisan.com

倒産や雇止めなどで、非自発的に退職せざるを得なかった人には、国民健康保険料を一定期間、軽減する制度もありますので、該当する人は、市区町村に確認しましょう。

2-3.メリット・デメリット

🔷メリット

○倒産や雇止めなどで、非自発的に退職せざるを得なかった人であれば、任意継続被保険者の保険料より安くなることがある。

🔶デメリット

●前年の収入が高い人は保険料が高い。

●付加給付や人間ドック補助・福利厚生サービスとかの給付や補助の恩恵がない。

本人都合で退職した人にはほとんどメリットはないので、消去法による最後の選択でしょう。

3.家族の健康保険の被扶養者になる

家族の健康保険の被扶養者になる場合は、家族が加入している協会けんぽ・健保組合で手続きします。

3-1.加入要件

家族が加入している健康保険の被扶養者要件を満たす必要があります。

大きくは以下の①~④の4つの要件があります。

①被保険者に経済的に養われていること。(生計維持要件)

②健康保険法に定める被扶養者の範囲であること(親族要件)

③年間収入が130万円未満(60歳以上または一定の障害がある場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満であること。(収入要件)

④国内に住所があること。(国内居住要件)

要件を満たすことを証明するために、多数の書類の準備が必要です。

被扶養者に該当するのか否かは以下のサイトが参考になります。

🔎 チャートで確認!健康保険 扶養認定|協会けんぽ

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/sthtml/chart/index2.html

3-2.保険料

被扶養者になれば、保険料負担はありません。

3-3.メリット・デメリット

🔷メリット

○保険料負担がない。

○付加給付や人間ドック補助・福利厚生サービスなどの給付や補助を受けることができる。

○国民年金第3号被保険者となれば、国民年金保険料の負担もない。

🔎 国民年金第3号被保険者の保険料について|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/20120803.html

🔶デメリット

●見当たりません。

デメリットを強いていえば、提出書類の準備など、手続きが煩雑なことくらいでしょう。

家族の勤務先の健康保険に加入できるのであれば、これ一択です。


メリットとデメリットを勘案すれば、結論は、以下です。

【結論1】家族の健康保険の被扶養者になれる人は、迷わず、被扶養者となることを選択する。

【結論2】家族の健康保険の被扶養者になれない人は、保険料と給付メリットを比較し、任意継続被保険者となるか国民健康保険に加入するかを選択する。

【結論3】出産手当金や傷病手当金の資格喪失後の継続給付を受けるのであれば、任意継続被保険者を選択する。

以上 

written by syaroshi-tsutomu

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