在職定時改定って何?働いている年金受給者の年金額を毎年10月に改定する仕組み

1001_社労士つとむの実務と法令
この記事は約3分で読めます。

2022年4月、働きながら年金を受給している人の年金額改定の仕組みが変わります。

これまでは、65歳で年金受給権を得たとき以降に厚生年金保険料を納付しても、70歳到達や退職により厚生年金保険の被保険者資格を喪失しない限り、年金額には反映されない仕組みでした。

退職すると年金額が改定されることから、従来の仕組みを「退職時改定」といいます。

2022年4月からは、在職中の老齢厚生年金受給者の年金額は毎年10月に改定し、納めた保険料を定期的に年金額に反映する仕組みとなります。

年1回定期的に年金額が改定されることから、今後の仕組みは「在職定時改定」といいます。

今回は、新設される「在職定時改定」の仕組みや増額効果について、確認します。

1.在職定時改定の仕組み

70歳まで継続就労した場合で、旧制度の退職時改定と、新制度の在職定時改定の仕組みを、図で、確認します。

【図1】退職時改定と在職定時改定の仕組み

↓ クリックして拡大 ↓

退職時改定では、在職時に保険料を納付していても、退職するか、又は、70歳到達で資格を喪失しない限り、年金額の改定は行われません。

一方、在職定時改定は、保険料納付実績が、毎年、定期的に増額される仕組みです。

制度の詳細を、新条文規定で確認しましょう。

在職定時改定は、厚生年金保険法第43条第2項(2022年4月1日施行)に規定されます。

(厚生年金保険法第43条第2項)
受給権者が毎年9月1日(以下この項において「基準日」という。)において被保険者である場合(基準日に被保険者の資格を取得した場合を除く。)の老齢厚生年金の額は、基準日の属する月前の被保険者であつた期間をその計算の基礎とするものとし、基準日の属する月の翌月から、年金の額を改定する。ただし、基準日が被保険者の資格を喪失した日から再び被保険者の資格を取得した日までの間に到来し、かつ、当該被保険者の資格を喪失した日から再び被保険者の資格を取得した日までの期間が一月以内である場合は、基準日の属する月前の被保険者であつた期間を老齢厚生年金の額の計算の基礎とするものとし、基準日の属する月の翌月から、年金の額を改定する。

改定基準日は9月1日、改定の対象となる期間は基準日前月の8月まで、実際に年金額が改定されるのは基準日翌月の10月からです。

対象期間・基準日・改定月の関係を、図で、確認します。

【図2】在職定時改定の適用時期

↓ クリックして拡大 ↓

法施行日は2022年4月1日ですので、在職定時改定が最初に実施されるのは、2022年10月となります。

2.在職定時改定の増額効果

在職年金受給者の総報酬月額相当額別に、年金額の増額効果を確認します。

総報酬月額相当額とは、標準報酬月額と標準賞与額の年度総額を12で除して得た額とを合算した額です。

例えば、給与が20万円で、賞与が年度で120万円の人であれば、20万円+(120万円÷12)=30万円が、総報酬月額相当額となります。

●月額10万円で1年間就労した場合

毎月:約500円増額

年間:約7000円増額

●月額20万円で1年間就労した場合

毎月:約1100円増額

年間:約13000円増額

●月額30万円で1年間就労した場合

毎月:約1600円増額

年間:約20000円増額

【図3】在職定時改定の増額効果

↓ クリックして拡大 ↓

年金額の正確な算定には、平均標準報酬額・乗率・再評価率などが必要です。

ザックリとは、年収に0.5%を乗じた額が年間での増加額となります。

以上

written by sharoshi-tsutomu

タイトルとURLをコピーしました