総務省の平成28年社会生活基本調査の結果によると、通勤時間の全国平均は片道約40分。
首都圏に限れば、片道1時間くらいが許容範囲でしょうか。
働き方改革の一環として職住近接の施策を講じている会社も多いでしょう。
一方で、転勤や結婚により、本人の意思にかかわらず長時間通勤を強いられることもあります。
長時間通勤が困難なため、やむなく会社を辞める人もいるでしょう。
今回は転勤や結婚で通勤が困難となった場合の失業給付の優遇措置についてご紹介します。
1.失業給付の優遇措置
自己都合退職の場合、会社を辞めてもすぐには失業給付(失業手当)を受給することはできません。
安易な離職を制限する趣旨で、自己都合退職には3か月の給付制限期間が設けられています。
一方で待期期間の7日経過後すぐに、失業給付を受給できる場合があります。
特定受給資格者と特定理由離職者です。
特定受給資格者とは、倒産・解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた人です。一言でいえば、会社都合で離職した人です。
特定理由離職者とは、特定受給資格者以外の人で期間の定めのある労働契約が更新されなかったこと等のやむ得ない理由により離職した人です。
特定理由離職者は、離職理由により特定理由離職者Ⅰと特例理由離職者Ⅱにわけられます。特定理由離職者Ⅰは、本人に契約更新の意思はあったが雇い止めされた人が該当します。特定理由離職者Ⅱは、自己都合ではあるが正当な理由により離職した人が該当します。
特定受給資格者と特定理由離職者は、該当する区分により以下の3つの優遇措置があります。
1-1.給付制限の免除
特定受給資格者と特定理由離職者に該当する場合は、3か月の給付制限なく失業給付を受けることができます。
↓ クリックして拡大(優遇措置1) ↓
1-2.所定給付日数の優遇
特定受給資格者と特定理由離職者Ⅰに該当する場合は、一般の受給資格者より失業給付の所定給付日数が多くなります(雇用保険の加入期間が短い場合等は一般の受給資格者と同様の日数となる場合も有り)。
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1-3.受給要件期間の短縮
失業給付の受給には、原則として離職日以前2年間(算定対象期間)に、被保険者期間が12か月以上あることが必要ですが、特定受給資格者と特定理由離職者の場合は、離職日以前1年間に被保険者期間が6か月あれば受給要件を満たすことができます。
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1-4.受給資格区分別の優遇措置一覧
優遇措置を表にすると以下です。
↓ クリックして拡大(優遇措置一覧) ↓
特定受給資格者と特定理由離職者に該当するか否かは離職者の離職理由により判定されます。
特定受給資格者と特例理由離職者の具体的な範囲は以下のページを参照しましょう。
🔎 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要|ハローワークインターネットサービス
https://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_range.html
2.通勤困難の基準
特定受給資格者と特例理由離職者の判定基準の一つに「通勤困難となったことによる離職」が含まれます。
それぞれの要件を確認します。
特定受給資格者の要件は、「事業所の移転」により通勤することが困難となったことによる離職です。
具体的な判断基準は以下です。
通勤困難(通常の方法により通勤するための往復所要時間が概ね4時間以上であるとき等)な適用事業所の移転について事業主より通知され(事業所移転の1年前以降の通知に限る。)、事業所移転直後(概ね3か月以内)までに離職した場合がこの基準に該当します。
次に、特定理由離職者の要件を確認します。
特定理由離職者は、次の理由により通勤不可能又は困難となったことが要件です。
・結婚に伴う住所の変更
・育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼
・事業所の通勤困難な地への移転(船員については、「船舶に乗船すべき場所の変更」)
・自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと
・鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
・事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
・配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避
この場合の通勤困難も、特定受給資格者の通勤困難の基準と同様、往復4時間(片道2時間)です。
通勤時間には乗り継ぎ時間も含みます。いわゆるドアtoドアの時間と解することで差し支えないでしょう。
今回のまとめ。
・通勤時間は片道2時間までは我慢する。
・転勤や結婚で通勤時間が片道2時間以上となり会社を辞めたのであれば、失業保険はすぐにもらえる。
・事業所移転で通勤時間が片道2時間以上となり会社を辞めたのであれば、失業保険はすぐにもらえ、また、たくさんもらえる。
以上
written by sharoshi-tsutomu