育児・介護休業法の2022年4月からの5つの改正と3段階施行のポイント

1001_社労士つとむの実務と法令
この記事は約9分で読めます。

2021年6月3日に改正育児介護休業法が公布され、2022年4月から順次施行されます。

改正の趣旨は、出産・育児等による離職を防ぎ、男女ともに仕事と育児を両立できるようにすること。

改正の内容としては、大きく5つあります。

【1】育児休業を取得しやすい雇用環境整備、個別の周知・意向確認の義務化
【2】有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
【3】産後パパ育休(出生時育児休業制度)の創設
【4】育児休業の分割取得の可能化
【5】育児休業取得状況の公表義務化

企業においては、就業規則等の見直し、労使協定の締結、育休取得率の算定等が必要となります。

今回は、5つの改正事項を、3つの施行日にわけて、改正内容とポイントを確認します。

1.2022年4月1日施行

【1】雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化

「雇用環境の整備」と「個別の周知・意向確認」の大きく2つの措置が必要です。

■育児休業を取得しやすい雇用環境の整備

事業主は、育児休業と産後パパ育休の申し出が円滑に行われるようにするため、以下の①~④のいずれかの措置を講じなければなりません(育児・介護休業法第22条第1項)。

①育児休業・産後パパ育休に関する「研修の実施」
②育児休業・産後パパ育休に関する「相談体制の整備」等(相談窓口設置)
③自社の労働者の育児休業・産後パパ育休「取得事例の収集・提供」
④自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する「方針の周知」

💡 ポイント
4つの措置における具体的な対応は以下です。
①「研修の実施」は、全労働者を対象とすることが望ましいが、少なくとも管理職については研修を受けたことがある状態であることを意味する。
②「相談体制の整備」は、相談体制の窓口の設置や相談対応者を置き、これを周知することを意味する。
③「取得事例の収集・提供」は、自社の育児休業の取得事例を収集し、当該事例の掲載された書類の配付やイントラネットへの掲載等を行い、労働者の閲覧に供することを意味する。
④ 「方針の周知」は、育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する事業主の方針を記載したものを、事業所内やイントラネットへ掲示することを意味する。

自社の状況を勘案し適切な措置を選択しましょう

■ 妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置

妊娠又は出産等についての申出があった場合における措置等は、育児・介護休業法第21条に新設されました。

(妊娠又は出産等についての申出があった場合における措置等)
第二十一条 事業主は、労働者が当該事業主に対し、当該労働者又はその配偶者が妊娠し、又は出産したことその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める事実を申し出たときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者に対して、育児休業に関する制度その他の厚生労働省令で定める事項を知らせるとともに、育児休業申出等に係る当該労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措 置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の規定による申出をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

~育児・介護休業法第21条~

本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度等に関し以下の事項の周知取得意向の確認を、個別に行わなければなりません。

<周知事項>
①育児休業・産後パパ育休に関する制度
②育児休業・産後パパ育休の申し出先
育児休業給付に関すること
④労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

<個別周知・意向確認の方法>
①面談(オンライン可)、②書面交付、③FAX、④電子メール等のいずれか。ただし、③④は労働者が希望した場合のみ。

💡 ポイント
妊娠・出産の申出の時期により、周知・意向確認は適切な時期に実施が望まれます。
・出産予定日の1か月半以上前に申出が行われた場合
→出産予定日の1か月前まで。
・出産予定日の1か月前までに申出が行われた場合
→2週間以内。
・出産予定日の1か月前から2週間前の間に申出が行われた場合
→1週間以内など、できる限り早い時期に。
・出産予定日の2週間前以降に申出があった場合や、子の出生後に申出があった場合
→できる限り速やかに。

実施記録も確実に残すようにしましょう

【2】有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

有期雇用労働者の育児・介護休業取得には、それぞれの以下の①・②2つの要件がありましたが、①は撤廃されます(育児・介護休業法第5条第1項第11条第1項)。

<育児休業の場合>
①引き続き雇用された期間が1年以上→【撤廃】
②1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない

<介護休業の場合>
①引き続き雇用された期間が1年以上→【撤廃】
②介護休業開始予定日から93日経過日から6か月を経過する日までに契約が満了することが明らかでない

💡 ポイント
改正前は無期雇用契約者については、労使協定を締結することで、雇用された期間が1年に満たない労働者は除外することができました。
改正法で有期雇用契約者の雇用期間要件は撤廃されますが、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者を除外する場合は、労使協定の締結が必要です。

要件撤廃による就業規則の改正とあわせて、雇用期間要件を存続させる場合は労使協定を締結しましょう

2.2022年10月1日施行

【3】産後パパ育休(出生時育児休業)の創設

産後パパ育休は、出生時育児休業の申出として、育児・介護休業法第9条の2に新設されました。

(出生時育児休業の申出)
第九条の二 労働者は、その養育する子について、その事業主に申し出ることにより、出生時育児休業(育児休業のうち、この条から第九条の五までに定めるところにより、子の出生の日から起算して八週間を経過する日の翌日まで(出産予定日前に当該子が出生した場合にあっては 当該出生の日から当該出産予定日から起算して八週間を経過する日の翌日までとし、出産予定日後に当該子が出生した場合にあっては当該出産予定日から当該出生の日から起算して八週間を経過する日の翌日までとする。次項第一号において同じ。)の期間内に四週間以内の期間を定めてする休業をいう。以下同じ。)をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、その養育する子の出生の日(出産予定日前に当該子が出生した場合にあっては、当該出産予定日)から起算して八週間を経過する日の翌日から六月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り、当該申出をすることができる。
(第2~4項・略)

育児・介護休業法第9条の2

原則、休業の2週間前までに、事業主に申出をすることによって、子の出生後8週間以内に4週間(28日)まで取得可能です。

また、2回までの分割取得も可能です。

なお、改正後においても、現行の育児休業はできます。

子の出生後8週以内の期間については、労働者の選択により、新制度と通常の育休のいずれも取得可能となります。

💡 ポイント
労使協定を締結することで、以下のことが可能となります。
・申出期限を1か月前までとすること。
・雇用された期間が1年未満の労働者、申出の日から8週間以内に雇用関係が終了する労働者、週の所定労働日数が2日以下の労働者を対象外とすること。
・労働者が合意した範囲で休業中に就業すること。

新制度となる出生時育児休業の就業規則・労使協定を整備しましょう

【4】育児休業の分割取得の可能化

従来、育児休業の分割取得は原則不可でした。

改正法では分割して2回まで取得可能とされました(育児・介護休業法第5条第2項)。

従来のいわゆる「パパ休暇」は、今回の改正に伴い廃止され、出生時育児休業と、育児休業の分割取得化に見直されます。

💡 ポイント
出生時育児休業の分割と通常の育児休業の分割取得は、別制度です。
・出生時育児休業と通常の育児休業をあわせた場合であれば、1歳までの間に4回まで取得可能。
・出生時育児休業は、分割取得する場合には初めにまとめて申し出なければならないが、通常の育児休業については、分割取得する場合であってもまとめて申し出することは不要。

出生時育児休業の分割取得と通常の育児休業の分割取得を混同しないようにしましょう。

3.2023年4月1日施行

【5】育児休業取得状況の公表の義務化

育児休業の取得の状況の公表は、育児・介護休業法第22条の2に新設されました。

(育児休業の取得の状況の公表)
第二十二条の二 常時雇用する労働者の数が千人を超える事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、毎年少なくとも一回、その雇用する労働者の育児休業の取得の状況として厚生労働省令で定めるものを公表しなければならない。

育児・介護休業法第22条の2

常時雇用する労働者が1000人を超える事業主は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられます。

公表方法は、インターネットの利用等により、一般に閲覧できるように公表することが必要です。

公表の数値としては、以下の①または②のいずれかの割合を公表する必要があります。

①育児休業等の取得割合
「公表前事業年度においてその雇用する男性労働者が育児休業等をしたものの数」÷「公表前事業年度において、事業主が雇用する男性労働者であって、配偶者が出産したものの数」

②育児休業等と育児目的休暇の取得割合
「公表前事業年度においてその雇用する男性労働者が育児休業等をしたものの数及び小学校就学の始期に達するまでの子を養育する男性労働者を雇用する事業主が講ずる育児を目的とした休暇制度を利用したものの数の合計数」÷「公表前事業年度において、事業主が雇用する男性労働者であって、配偶者が出産したものの数」

💡 ポイント
公表数値の算定にかかる用語の定義は以下の通りです。
・「常時雇用する労働者」とは、雇用契約の形態を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者を指す。
・「公表前事業年度」とは、公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度を指す。
・育児休業を分割して2回取得した場合や、育児休業と育児を目的とした休暇制度の両方を取得した場合等であっても、当該休業や休暇が同一の子について取得したものである場合は、1人として数える。
・公表する割合は、算出された割合について少数第1位以下を切り捨てる。

公表数値の定義を正しく理解し、正確に算定しましょう


厚生労働省のサイトで本改正に伴う資料が多数公開されています。

🔎 育児・介護休業法について|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

「法改正のQ&A」で制度理解を深め、「就業規則の規定例」で自社規定の整備を行いましょう。

以上

written by sharoshi-tsutomu

タイトルとURLをコピーしました