解雇予告手当の3つのポイント!支払日数・支払額・支払日の法的根拠と実務対応

1001_社労士つとむの実務と法令
この記事は約7分で読めます。

厚生労働省の発表(新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について)によると、コロナ関連の解雇・雇い止めは2023年2月時点で14万人を超えています。

解雇とは、使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了のこと。

解雇には、業績悪化等による「整理解雇」、勤務不良や職務規律違反等の「普通解雇」、労働者の重大な責による制裁として行われる「懲戒解雇」の3つに大別されます。

労働者の解雇にあたっては、突然の解雇による労働者の生活困窮を緩和するため、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30 日前にその予告をしなければならない」とされています(労基法第20条第1項)。

懲戒解雇については解雇予告なしに即時解雇することが一般的ですが、整理解雇や普通解雇の場合は、解雇予告を行い、解雇することとなります。

解雇予告を法で定められた30日前までに行えない場合に支払うのが、解雇予告手当です(労働基準法第20条第2項)。

今回は、解雇予告手当の3つのポイントである支払日数・支払額・支払時期について、確認します。

1.支払日数

はじめに、解雇予告手当の支払日数について、確認します。

解雇予告手当の支払日数の算定方法について、30日前に解雇予告をする場合としない場合の2つの具体例で、確認しましょう。

1-1.30日前に解雇予告をする場合

解雇日の30日前までに解雇予告を行えば、使用者は解雇予告手当の支払義務は生じません。

<30日前に解雇予告をする例>
・解雇日:3月31日  
・解雇予告日:3月1日  

↓ クリックして拡大 ↓

解雇日が3月31日、解雇予告日が3月1日の場合、解雇予告日から解雇日までの日数は30日が確保されていますので、解雇予告手当の支払日数はゼロとなります。

解雇予告期間の日数カウントは、初日不算入の原則により、解雇予告日は含めずにカウントします(民法第140条)。

後々のトラブル回避のため、解雇予告は書面で行う会社も多いでしょう。

書面で解雇予告を行った場合、書面が労働者に到着した日が、解雇予告日となります。

1-2.30日前に解雇予告をしない場合

解雇予告を行わない即時解雇の場合は、解雇日までの日数はゼロとなりますので、解雇予告手当として必要となる支払日数は30日となります。

解雇予告日から解雇日までの日数が30日に不足している場合は、使用者は不足日数分の解雇予告手当の支払義務が生じます。

<30日前に解雇予告をしない例>
・解雇日:3月31日 
・解雇予告日:3月16日

↓ クリックして拡大 ↓

解雇日が3月31日、解雇予告日が3月16日の場合、解雇予告日から解雇日までの日数は15日となり、解雇予告期間として必要な30日から15日を減じた15日が解雇予告手当の支払日数となります。

1-3.解雇予告が不要な場合

解雇予告が不要な場合も法令で4ケース定められています(労働基準法第21条)。

・日雇労働者(1か月まで)

・契約期間が 1か月以内の者(その契約期間まで)

・4 か月以内の季節労働者(その契約期間まで)

・試用期間中の者(14日間まで)

また、「労働者の責に帰すべき事由により解雇する場合」や「天災地変等により事業の継続が不可能となった場合」は、解雇予告なく解雇することは可能です(労働基準法第20条第1項ただし書き)。

実務上は、労働基準監督署に解雇予告除外認定申請を行うことが必要です。

解雇予告除外認定申請には、労働者の責に帰すべき事由が明確となる疎明資料の添付も求められます。

詳細は、以下の資料を参照しましょう。

🔎 解雇予告除外認定申請について【PDF】|厚生労働省 岩手労働局

2.支払額

つぎに、解雇予告手当の支払額について、確認します。

解雇予告手当の支払額の計算式は、以下となります。

解雇予告手当=平均賃金×支払日数(予告期間30日に満たない日数)

解雇予告手当の算出には、平均賃金の計算方法の理解が必須です。

平均賃金の計算方法には、通常計算(原則)と最低保証額計算(例外)の2つの計算方法があります。

具体例で2つの計算方法を確認しましょう。

2-1.平均賃金が通常計算(原則)の場合

平均賃金とは、算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいいます(労働基準法第12条第1項)。

解雇予告手当における算定事由発生日とは、労働者に解雇通告をした日です(昭和39年6月12日基収第2316号)。

以前三箇月の起算にあたっては、賃金締切日がある場合は、算定事由発生日直前の賃金締切日が起算日となります(労働基準法第12条第2項)。

なお、賃金締切日が算定事由発生日と同一日の場合、当該賃金締切日を含む期間は算定期間には含めません(昭和24年7月13日基収第2044号)。

支払われた賃金の総額とは、算定期間中に支払われる時間外労働割増賃金や各種手当を含む賃金のすべてが含まれますが、臨時の賃金(慶弔見舞金等)や3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)の一部の賃金は除かれます。

その期間の総日数とは、暦日のことです。

平均賃金を計算式にすると、以下となります。

平均賃金=算定事由発生日以前3か月間の賃金総額÷その期間の総日数(暦日)

<通常計算(原則)の例>
・解雇日:3月31日  
・解雇予告日:3月16日
・解雇予告手当支払日数:15日
・賃金支払形態:月給制
・賃金締切日:毎月20日
・賃金:基本給・時間外手当・通勤手当

↓ クリックして拡大 ↓

平均賃金の端数処理は、銭の単位まで求め、銭未満の端数は切り捨てます(昭和22年11月5日基発第232号)。

賃金ごとに賃金締切日が異なる場合(基本給は末締、時間外は10日締など)は、賃金締切日ごとに平均賃金を算定することが必要です(昭和26年12月27日基収第5926号)。

なお、算定期間中に業務上負傷・傷病による休業期間や、産前産後・育児休業期間等の除外期間がある場合は平均賃金算定期間及びその間の賃金の総額から控除します(労働基準法第12条第3項)。

また、労働者の業務上傷病による休業期間とその後30日間、女性の産前産後休業期間とその後30日間は、解雇制限期間として、原則、解雇することはできません(労働基準法第19条)。

2-2.平均賃金が最低保障額計算(例外)の場合

賃金が時間額や日額、出来高給で決められており労働日数が少ない場合、総額を労働日数で除した額の6割に当たる額の方が高い場合はその額を、平均賃金として適用することとなります(労働基準法第12条第1項ただし書き・第1号)。

計算式は、以下です。

平均賃金(最低保障額)=算定事由発生日以前3か月間の賃金総額÷その期間の労働日数×60%

具体例で、確認しましょう。

<最低保証額計算(例外)の例>
・解雇日:3月31日  
・解雇予告日:3月16日
・解雇予告手当支払日数:15日
・賃金支払形態:日給制
・賃金締切日:毎月20日
・賃金:基本給・時間外手当・通勤手当

↓ クリックして拡大 ↓

例の場合、通常計算の平均賃金より、最低保障額計算の平均賃金の方が高くなるため、最低保障額の平均賃金を、解雇予告手当の計算に使用することとなります。

なお、賃金の一部が、月、週その他一定の期間により定められている場合は、通常計算+例外計算の合算額が最低保障額となります(労働基準法第12条第1項第2号)。

なお、雇い入れ後3か月未満の場合の平均賃金は、算定期間3か月が確保できないため、入社日以降を算定期間にすることとなります(労働基準法第12条第6項)。

3.支払時期

さいごに、解雇予告手当の支払時期について、確認します。

即時解雇の場合と、解雇予告有りの場合で、支払時期は異なります。

3-1.即時解雇の場合

解雇予告なく、即時解雇の場合の解雇予告手当の支払は、解雇の申渡しと同時に支払うべきものとされています(昭和23年3月17日基発464号)。

3-2.解雇予告有りの場合

即時解雇でない場合は、法令通達上の明確な規定はありませんが、解雇予告日数と解雇予告手当支払日数が明示されていることを勘案し、解雇の日までに支払うことで足りるとされています。


解雇予告手当の税法上の取扱いは、退職金と同様の退職所得の取扱いとなります。

🔎 解雇予告手当や未払賃金立替払制度に基づき国が弁済する未払賃金を受け取ったとき|国税庁

解雇予告手当の支払時には、留意しましょう。

以上

written by sharoshi-tsutomu

タイトルとURLをコピーしました