保険料減で年金保障?育児短時間勤務者の育休終了時改定と養育期間特例措置

育児介護休業法では、3歳に満たない子を養育する労働者の仕事と育児の両立支援のため、所定労働時間の短縮措置等を企業に義務付けています(育介法23)。

厚生労働省の「令和元年度雇用均等基本調査」によると、所定労働時間短縮措置の最長利用期間は、3歳未満としている企業が38.4%、3歳以上は61.6%と、3分の2の企業で、法的要件を超える期間が定められています。

短時間勤務制度の利用で保育園の送迎等の時間は確保できますが、経済的には、時短分の給与は減額されることが一般的です。

そのため、育児短時間勤務者を経済的に支援する特例措置が設けられています。

育児休業等終了時改定と養育期間特例措置です。

今回は、育児短時間勤務者に対する「育児休業終了後の社会保険料の特例」と「3歳未満の子を養育する期間についての年金額計算の特例」の2つの特例について、確認することとします。

1.保険料負担の軽減措置(育児休業等終了時改定)

保険料負担を軽減するための特例が、育児休業等終了時改定です(健保法43の2、厚年法23の2)。

通常は、社会保険料の賦課対象となる標準報酬月額は、報酬が低下した場合は、随時改定の仕組みにより減額改定が行われます。

育児休業等終了時改定は、随時改定要件を緩和し、時短勤務による減額後の給与に見合う保険料に、より柔軟に、改定することを目的としています。

育児休業等終了時改定による標準報酬月額は、育児休業等を終了した日の翌日が属する月から4か月目に改定されます。

1-1.対象者

育児休業等の終了時に、3歳未満の子を養育し、育児休業終了時改定の適用を申し出た人です。

1-2.改定要件

育児休業終了時改定の標準報酬月額は、休業終了日の翌日の属する月以後3か月間に受けた報酬の総額の平均額に基づき算出します。

改定要件としては、支払基礎日数と等級変動の2要件があります。

①育児休業等終了日の翌日の属する月以後3カ月のうち、少なくとも1月における支払基礎日数が17日以上であること(一般被保険者)

ただし、パート労働者(短時間就労者)の場合で、3か月間の支払基礎日数がいずれも17日未満の場合は、支払基礎日数が15日以上17日未満の月の平均で算定します。

また、特定適用事業所に勤務する短時間労働者の場合は、11日以上で要件を満たします。

②従前の標準報酬月額と現在の標準報酬月額に1等級以上の差が生じていること

随時改定の場合は2等級以上の差が要件となりますが、育児休業等終了時改定は1等級以上の差があれば、改定可能です。

また、随時改定は固定的賃金の変動が要件となりますが、育児休業等終了時改定は、固定的賃金の変動の要件は不要です。

随時改定と育児休業等終了時改定の要件の差異は、以下の対比表で確認しましょう。

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1-3.手続き

被保険者からの申出を受けた事業主が『育児休業等終了時報酬月額変更届』を健康保険組合・年金事務所に、提出します。

添付書類は、不要です。

🔎 育児休業等終了時報酬月額変更届の提出|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/ikuji-menjo/20150407.html

2.年金計算のみなし措置(養育期間特例措置)

育児短時間勤務により減額された給与により標準報酬月額が改定されることで、将来受け取る老齢厚生年金も減少してしまいます。

標準報酬月額は下がっても、将来受け取る年金額は従前の標準報酬月額で計算することで、年金額を保障しようという制度が養育期間特例措置です(厚年法26)。

図で、養育特例の仕組みを確認しましょう。

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従前標準報酬月額とは、養育を開始した日(原則は子の出生日)の前月の標準報酬月額です。

1-1.対象者

3歳未満の子を養育する厚生年金保険の被保険者、又は、被保険者であった者で、養育期間特例措置の適用を申し出た人です。

養育特例は退職した場合であっても、本人が直接手続きをすることで、適用可能です。

また、3歳未満の子を養育している被保険者が転職した場合も、転職先での標準報酬月額が、従前標準報酬月額より下がっている場合であれば、転職先で再度手続きをすることで、適用されます。

1-2.適用要件

養育期間中の各月の標準報酬月額が、養育開始月の前月の標準報酬月額を下回ることが必要です。

標準報酬月額の低下の理由は、問いません。

1-3.手続き

被保険者からの申出を受けた事業主が『厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書』を年金事務所へ提出します。

添付書類も、必要です。

必要な添付書類は、申出者と子の身分関係および子の生年月日を確認するための『戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書』と、申出者と子が同居していることを確認するための『住民票』です。

住民票は、提出日から遡って90日以内に発行されたものが必要です。

なお、出生後に転居している場合は、出生日に同居していることを確認するため、転居前の同居を確認できる住民票の除票、又は、戸籍の附表の添付も必要です。

🔎 養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/menjo/20150120.html

以上

written by sharoshi-tsutomu