2023年3月31日、政府は次元の異なる少子化対策の試案を公表しました。
目玉となるのは、児童手当の拡充です。
具体的には、①所得制限の撤廃、②対象年齢の拡大、③多子世帯の増額の3つの拡充策です。
児童手当拡充の課題となるのが、財源です。
3つの拡充策の実現には、数兆円規模の財源が必要となります。
今回は、児童手当制度の現状と財源、財源の一部である子ども・子育て拠出金の料率推移と上限料率について確認します。
1.児童手当の3つの拡充策の現状
児童手当は1972(昭47)年から実施されています。
発足当初は、義務教育終了前までの第3子以降について、月額3000円支給する制度でした。
制度開始以降は、所得制限の有無・対象年齢の範囲・支給額について、変更を重ねています。
現制度(2023年4月現在)は、所得制限有り、中学校修了まで、子どもの年齢に応じた支給額の制度となっています。
現在の児童手当の支給額は、以下です。
・3歳未満: 15000円
・3歳以上小学校修了前:10000円(第3子以降は15000円)
・中学生:10000円
※所得制限限度額超過者:5000円(特例給付)
※所得上限限度額超過者:支給なし
それでは、3つの拡充策の現状について、詳細を確認しましょう。
1-1.所得制限の現状
所得制限額として一般的に使用されているのは、夫が妻・子2人を扶養しているいわゆるモデル家庭です。
妻・子2人の家庭の場合は、世帯主である夫の年収が960万円を超えると特例給付の5000円となり、年収が1200万円を超えると支給されません。
扶養親族の数に応じた所得制限限度額・上限限度額と年収の目安を一覧にしました。
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年収は、給与収入の場合で、あくまでも目安です。
限度額の判定は、各個人の医療費控除等も考慮した所得額により、判定されます。
拡充策では、所得制限の撤廃が検討されています。
1-2.対象年齢の現状
児童手当の現状の対象年齢、0歳~中学校修了前までとなります。
拡充策では、対象年齢の拡大として、高校卒業までとすることが検討されています。
1-3.多子世帯加算の現状
多子世帯加算の現状は、第3子以降の3歳以上小学校修了前の児童に対する15000円(第2子までは10000円)が多子世帯に対する加算です。
政府試案の拡充策では金額の明記はありませんが、自民党の「危機突破のための少子化対策」では、第2子は最大月額3万円、第3子以降は最大月額6万円を財源確保と併せて検討すべきと提言しています。
2.児童手当の財源
児童手当の2022(令4)年度の予算は、約2兆円でした。
財源は、国、地方(都道府県・市区町村)、企業(=事業主拠出金)の三者で負担します。
被用者(会社員)と非被用者(会社員以外)の財源内訳を確認しましょう。
2-1.被用者の財源内訳
会社員である被用者の財源内訳は、子の年齢により、異なります。
<3歳未満>
3歳未満の財源内訳は、複雑です。
・国 16/45
・地方(都道府県・市町村) 8/45
・事業主拠出金(企業) 7/15(21/45)
※特例給付の財源内訳は、国2/3、地方1/3
地方16/45の内訳は、都道府県と市町村で折半(4/45ずつ)です。
事業主拠出金=子ども・子育て拠出金です。
<3歳以上>
3歳以上の財源内訳は、シンプルです。
・国 2/3
・地方(都道府県・市町村) 1/3
※特例給付の財源内訳も同様(国2/3、地方1/3)
事業主拠出金の費用負担は、ありません。
なお、公務員に対する児童手当は、所轄庁が全て負担する制度となっています。
2-2.非被用者の財源内訳
会社員以外の非被用者の財源内訳は、3歳以上の被用者と同様です。
・国 2/3
・地方(都道府県・市町村) 1/3
事業主拠出金の費用負担は、ありません。
3.子ども・子育て拠出金の料率推移と上限料率
子ども・子育て拠出金は、以前は、児童手当拠出金の名称でした。
現在は、子ども・子育て支援法に基づく、子ども・子育て拠出金に改称されています。
拠出金の徴収及び納付義務は、子ども・子育て支援法第 69 条に規定されており、拠出金の負担者は、厚生年金保険等の適用事業所の事業主です。
被用者である会社員の負担はなく、全額が事業主負担(企業負担)となります。
事業主負担額は、被保険者個々の厚生年金保険の標準報酬月額・標準賞与額に拠出金率を乗じた額の総額となります。
3-1.子ども・子育て拠出金の料率推移
2015年度以降の子ども・子育て拠出金の推移を確認しましょう。
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2015年度から2020年までは毎年上がっていましたが、2020年に0.36%となってからは、据え置きが続いています。
3-2.子ども・子育て拠出金の上限料率
子ども・子育て拠出金の料率は、2018年4月の料率引き上げにあたり、0.25%の上限から、0.45%の上限に改正されました。
児童手当の拡充策の実現には、所得制限の撤廃で1500億円、対象年齢の拡大(高校生まで10000円)で4000億円、多子世帯の増額では数兆円の財源が必要となります。
拡充策の実現に向けては、子ども・子育て拠出金の料率の引き上げが検討されるでしょう。
(参照)
🔎 児童手当|内閣府
🔎 こども基本法|こども家庭庁
以上
written by suchika-hakaru