加減乗除(かげんじょうじょ)とは、算数の基本となる四則演算の日本語表記です。
・足し算→「加」法
・引き算→「減」法
・掛け算→「乗」法
・割り算→「除」法
一方、四則演算の結果の漢字一文字表記が、和差積商(わさせきしょう)です。
・足し算の結果の漢字一文字 →「和」
・引き算の結果の漢字一文字 →「差」
・掛け算の結果の漢字一文字 →「積」
・割り算の結果の漢字一文字 →「商」
日本は、古くは、縦書きの文化でした。
そのため、法律も、縦書きです。
算用数字はアラビア数字ではなく漢数字で表され、四則演算は加減乗除(かげんじょうじょ)の表し方で規定されています。
今回は、四則演算の加減乗除の表し方を、厚生年金法第46条の条文規定で確認してみましょう。
単に読む
厚生年金法第46条は65歳以上の在職老齢年金のしくみによる厚生年金の支給停止について規定された条文です。
厚生年金法第46条第1項には、加減乗除の全てが詰まっています。
まずは、一読しましょう。
(支給停止)
第四十六条 老齢厚生年金の受給権者が被保険者(前月以前の月に属する日から引き続き当該被保険者の資格を有する者に限る。)である日(厚生労働省令で定める日を除く。)、国会議員若しくは地方公共団体の議会の議員(前月以前の月に属する日から引き続き当該国会議員又は地方公共団体の議会の議員である者に限る。)である日又は七十歳以上の使用される者(前月以前の月に属する日から引き続き当該適用事業所において第二十七条の厚生労働省令で定める要件に該当する者に限る。)である日が属する月において、その者の標準報酬月額とその月以前の一年間の標準賞与額の総額を十二で除して得た額とを合算して得た額(国会議員又は地方公共団体の議会の議員については、その者の標準報酬月額に相当する額として政令で定める額とその月以前の一年間の標準賞与額及び標準賞与額に相当する額として政令で定める額の総額を十二で除して得た額とを合算して得た額とし、七十歳以上の使用される者(国会議員又は地方公共団体の議会の議員を除く。次項において同じ。)については、その者の標準報酬月額に相当する額とその月以前の一年間の標準賞与額及び標準賞与額に相当する額の総額を十二で除して得た額とを合算して得た額とする。以下「総報酬月額相当額」という。)及び老齢厚生年金の額(第四十四条第一項に規定する加給年金額及び第四十四条の三第四項に規定する加算額を除く。以下この項において同じ。)を十二で除して得た額(以下この項において「基本月額」という。)との合計額が支給停止調整額を超えるときは、その月の分の当該老齢厚生年金について、総報酬月額相当額と基本月額との合計額から支給停止調整額を控除して得た額の二分の一に相当する額に十二を乗じて得た額(以下この項において「支給停止基準額」という。)に相当する部分の支給を停止する。ただし、支給停止基準額が老齢厚生年金の額以上であるときは、老齢厚生年金の全部(同条第四項に規定する加算額を除く。)の支給を停止するものとする。
内容はもちろん、数式も全くみえてきません。
意識して読む
次は、加減乗除のキーワードを意識して一読しましょう。
⊕ 足し算(加)…合算して得た額・合計額
⊖ 引き算(減)…控除して得た額
⊗ 掛け算(乗)…乗じて得た額
⊘ 割り算(除)…除して得た額
判読性を高めるため、(カッコ書き)はグレーにします。
(支給停止)
第四十六条 老齢厚生年金の受給権者が被保険者(前月以前の月に属する日から引き続き当該被保険者の資格を有する者に限る。)である日(厚生労働省令で定める日を除く。)、国会議員若しくは地方公共団体の議会の議員(前月以前の月に属する日から引き続き当該国会議員又は地方公共団体の議会の議員である者に限る。)である日又は七十歳以上の使用される者(前月以前の月に属する日から引き続き当該適用事業所において第二十七条の厚生労働省令で定める要件に該当する者に限る。)である日が属する月において、その者の標準報酬月額とその月以前の一年間の標準賞与額の総額を十二で除して得た額とを合算して得た額(国会議員又は地方公共団体の議会の議員については、その者の標準報酬月額に相当する額として政令で定める額とその月以前の一年間の標準賞与額及び標準賞与額に相当する額として政令で定める額の総額を十二で除して得た額とを合算して得た額とし、七十歳以上の使用される者(国会議員又は地方公共団体の議会の議員を除く。次項において同じ。)については、その者の標準報酬月額に相当する額とその月以前の一年間の標準賞与額及び標準賞与額に相当する額の総額を十二で除して得た額とを合算して得た額とする。以下「総報酬月額相当額」という。)及び老齢厚生年金の額(第四十四条第一項に規定する加給年金額及び第四十四条の三第四項に規定する加算額を除く。以下この項において同じ。)を十二で除して得た額(以下この項において「基本月額」という。)との合計額が支給停止調整額を超えるときは、その月の分の当該老齢厚生年金について、総報酬月額相当額と基本月額との合計額から支給停止調整額を控除して得た額の二分の一に相当する額に十二を乗じて得た額(以下この項において「支給停止基準額」という。)に相当する部分の支給を停止する。ただし、支給停止基準額が老齢厚生年金の額以上であるときは、老齢厚生年金の全部(同条第四項に規定する加算額を除く。)の支給を停止するものとする。
カッコ書きをグレーにしたことで文字量が減り、少しわかったような気がしますが、数式はやはり頭に浮かびません。
数式にする
加減乗除による日本語表記をひとつずつ数式にしましょう。
厚生年金法第46条第1項では、3つの額の算出方法が規定されています。
①総報酬月額相当額
老齢厚生年金の受給権者が被保険者である日、国会議員若しくは地方公共団体の議会の議員である日又は70歳以上の使用される者である日が属する月において、標準報酬月額とその月以前の1年間の標準賞与額の総額を12で除して得た額⊘とを合算して得た額⊕
→ その月の標準報酬月額 ⊕ (その月以前の1年間の標準賞与額の総額 ⊘ 12)
(計算例①)
その月の標準報酬月額が32万円、その月以前の1年間の標準賞与額の総額が120万円の場合、総報酬月額相当額は42万円になります。
→ 320,000円 ⊕ (1,200,000円 ⊘ 12)=420,000円
②基本月額
老齢厚生年金の額を12で除して得た額⊘
→ 老齢厚生年金 ⊘ 12
(計算例②)
老齢厚生年金の額が180万円の場合、基本月額は15万円になります。
→ 1,800,000円 ⊘ 12 = 150,000円
③支給停止基準額
総報酬月額相当額及び基本月額との合計額が支給停止調整額を超えるときは、その月の分の老齢厚生年金について、総報酬月額相当額と基本月額との合計額⊕から支給停止調整額を控除して得た額⊖の2分の1に相当する額⊘に12を乗じて得た額⊗
→{( 総報酬月額相当額 ⊕ 基本月額 ) ⊖ 支給停止調整額 } ⊘ 2 ⊗ 12
(計算例③)
計算例①の総報酬月額相当額42万円、計算例②の基本月額15万円、支給停止調整額が47万円の場合、支給停止基準額(支給停止額)は60万円(月額5万円)となります。
→{( 420,000円 ⊕ 150,000円 ) ⊖ 470,000円 } ⊘ 2 ⊗ 12=600,000円(月額5万円)
なお、支給停止調整額は、厚生年金保険法第46条第3項に規定されており、毎年見直しがされます。
投稿日時点(2020年2月)の支給停止調整額は47万円です。
🔎 在職老齢年金の支給停止基準額が平成31年4月1日より変更になりました|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2019/2019040102.html
図解する
最後に、厚生年金法第46条第1項の条文規定を図解します。
↓ クリックして拡大 ↓
①総報酬月額相当額、②基本月額、③支給停止基準額の3つの額を算出することで、
・全額支給される場合
・一部支給停止される場合
・全額支給停止される場合
の3つのケースが理解できればよいでしょう。
🔎 65歳以後の在職老齢年金の計算方法|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/zaishoku/20150401-01.html
文化庁ホームページには「公用文の書き方資料集 」が掲載されています。
その中に、「公用文の左横書きについて」述べられた文書が収録されており、官庁事務の能率化をはかる処置として「なるべく広い範囲にわたって左横書きとする。」との通達(昭和24年4月5日内閣閣甲第104号)があります。
前述の通達を受け、官庁や地方自治体では「文書の左横書きの実施に関する規程」を制定し、原則は横書きで公文書を作成することが実施されています。
左横書きで漢数字がアラビア数字になっているだけでも、読みやすく、内容も理解しやすいものになるでしょう。
以上
written by suchika-hakaru