傷病手当金とは、健康保険の被保険者が病気やケガで仕事を休み、労務に服することができない場合に支給される給付金です。
傷病により休業すると給与が支給されなくなるため、経済的に困窮する被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。
支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から通算して1年6月間です。
支給額としては、おおよそ、毎月の給与の額の3分の2が支給されます。
この傷病手当金ですが、退職により健康保険の被保険者資格を喪失しても、継続給付できます。
この継続給付の制度を、資格喪失後の傷病手当金といいます。
今回は、資格喪失後の傷病手当金の支給要件と留意点について、確認します。
1.傷病手当金の支給要件
はじめに、通常の傷病手当金の4つの支給要件を確認しましょう(健康保険法第99条)。
1-1.働けない状況であること(労務不能)
労務不能の状況は、医師等の療養担当者の証明が必要です。
療養担当者は、『傷病手当金支給申請書』の療養担当者記入用に、療養のため就労できなかったと認められる期間の始期と終期、傷病名、症状・経過・治療内容等を記入します。
1-2.業務外の事由による傷病であること(業務外事由)
業務上や通勤途中での傷病は、労災保険の給付対象となるため、対象外です。
なお、業務外の事由であっても、美容整形手術など、健康保険の給付対象とならない傷病は対象外です(昭和4年6月29日保理第1704号)。
1-3.連続3日の待期が完成していること(待期完成)
傷病手当金の待期期間は、連続する3日の休業で完成します。
待期期間は、土日祝の公休日や年次有給休暇であっても、問題ありません。
この待期期間は傷病手当金は支給されず、待期期間完成後の4日目より支給されます。
1-4.給与の支給がないこと(給与なし)
給与が全額支給されている場合は、傷病手当金は支給されません。
給与が一部支給されている場合は、給与の日額が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。
2.資格喪失後の傷病手当金の支給要件
つぎは、資格喪失後の傷病手当金の2つの支給要件を確認します(健康保険法第104条)
2-1.1年以上の被保険者期間(被保険者期間)
資格喪失日の前日(退職日)までに被保険者期間が継続して1年以上あることが必要です(任意継続被保険者期間は除く)。
転職等により異なった保険者における被保険者期間であっても、被保険者期間に1日の空白もなく継続している場合で、合算すれば1年になる場合には、被保険者期間の要件は満たすこととなります。
なお、資格喪失後の継続給付は、任意継続被保険者は支給されますが、特定退職被保険者には支給されません。
2-2.傷病手当金受給者又は受給可能者(受給資格有り)
資格喪失(退職)の際に、傷病手当金を受給していない場合でも、傷病手当金が受けられる状態にある場合は、要件を満たします。
例えば、傷病手当金が給与や障害年金の額との調整により支給停止されている状態である場合が、該当します。
ここで、留意点です。
資格喪失後の傷病手当金は、資格喪失(退職)の際に労務不能であることが必要です。
よくあるケースとしては、ずっと休んでいた人が会社の荷物を片付けるために、退職日に出社してしまうことがあります。
退職時に傷病にかかっていたとしても、出勤して労務に服していれば、資格喪失後の傷病手当金は受給できません(昭和31年2月29日保文発第1590号)。
一日の出勤により、まったく、受給できない事態となりますので、留意しましょう。
待期期間が完成している点も留意です。
例えば、労務不能となった日から3日目に退職した場合には、待期期間が未完成となりますので、資格喪失後の傷病手当金は支給されません。
🔎 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|協会けんぽ
以上
written by sharoshi-tsutomu