手帳やカレンダーの一週間のはじまりは、日曜はじまりと月曜はじまりの2種類があります。
多くの方の日常生活の感覚では、週のはじまりは月曜日でしょう。
日付や時刻に関する国際規格である「ISO8601」でも、月曜日に1のコードが付与され、月曜日を週の最初の日ととらえています。
ですが、労働基準法の週のはじまりの定義は、異なります。
労基法第32条では、一週間の労働時間は40時間を超えて労働させないことが規定されています。
この一週間の労働時間の集計で重要なポイントが、一週間のはじまりが、何曜日かということです。
答えは、「就業規則に定めがある場合は、その日。ない場合は、日曜日。」です。
今回は、休日の振替により、一週間の労働時間が週40時間を超えた場合の割増賃金の取扱いについて、確認します。
1.週のはじまりは何曜日か
はじめに、週のはじまりが定義されている通達を確認します。
<一週間の法定労働時間と一日の法定労働時間>
~昭和63年1月1日基発第1号~
法第三二条第一項で一週間の法定労働時間を規定し、同条第二項で一日の法定労働時間を規定することとしたが、これは、労働時間の規制は一週間単位の規制を基本として一週間の労働時間を短縮し、一日の労働時間は一週間の労働時間を各日に割り振る場合の上限として考えるという考え方によるものであること。
一週間の法定労働時間と一日の法定労働時間とを項を分けて規定することとしたが、いずれも法定労働時間であることに変わりはなく、使用者は、労働者に、法定除外事由なく、一週間の法定労働時間及び一日の法定労働時間を超えて労働させてはならないものであること。
なお、一週間とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、日曜日から土曜日までのいわゆる暦週をいうものであること。また、一日とは、午前〇時から午後一二時までのいわゆる暦日をいうものであり、継続勤務が二暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも一勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の「一日」の労働とするものであること。
週の始まりは、就業規則その他に別段の定めがあれば定めた日、別段の定めがなければ日曜日となります。
2.振替出勤と代休の違いは何か
振替出勤とは、「事前」に休日と労働日を変更した上で、当初の休日に出勤すること。
休日の振替ですので、当初の休日は通常の労働日となり、休日出勤には該当しません。
休日出勤に該当しないため、割増賃金の支払は、原則、不要です。
一方で、代休とは、休日出勤の「事後」に休日出勤の代償として労働日を休日に変更すること。
事後に代償として休日を与えても、休日出勤した事実に変更はありません。
そのため、休日出勤による、割増賃金の支払いが必要となります。
3.振替出勤で週40時間を超えた場合の割増賃金
週のはじまりと振替出勤が理解できたところで、本題です。
振替出勤の場合は、休日出勤に該当しませんので、原則、割増賃金は不要です。
例外となるのは、振替出勤により同一週の労働時間が40時間を超えた場合です。
週40時間を超えた時間については、割増賃金の支払いを要します。
<休日の振替と時間外労働>
~昭和22年11月27日基発第401号、昭和63年3月14日基発第150号~
就業規則に定める休日の振替規定により休日を振り替える場合、当該休日は労働日となるので、休日労働とはならないが、振り替えたことにより当該週の労働時間が一週間の法定労働時間を超えるときは、その超えた時間については時間外労働となり、時間外労働に関する三六協定及び割増賃金の支払が必要であることに注意されたい。
具体例で、確認します。
具体例の前提としては、以下です。
<前提>
・就業規則で週のはじまりは定めていない。よって、一週間は日曜日から土曜日までの暦週となる。
・一日の所定労働時間は8時間。
・完全週休2日制。変形労働時間制の適用はない。
<例1:同一週の振替>
休日の4月7日(日)に出勤し、4月12日(金)を休日とする場合。
同一週で振替が行われたことで、週労働時間は40時間となりますので、割増賃金の支払は不要です。
<例2:同一週でない振替>
休日の4月14日(日)に出勤し、4月12日(金)を休日とする場合。
振替出勤を翌週としたことで、4月14日(日)~4月20日(土)の週労働時間は48時間となりますので、8時間分の割増賃金(25%割増)の支払が必要です。
振替休日(振休)と代休の違いを、振替休日は割増賃金の支払が不要、代休は割増賃金の支払が必要と画一的に理解しないように留意しましょう。
最後にまとめ。
・週のはじまりは、就業規則その他に別段の定めがあれば定めた日、別段の定めがなければ日曜日。
・振替出勤とは、「事前」に休日と労働日を変更し、当初の休日に出勤すること。
・振替出勤が、同一週で行われない場合、週40時間超の割増賃金の支払いが生ずる可能性有り。
以上
written by sharoshi-tsutomu