振休とは休日と労働日を「事前」に変更すること、代休とは休日出勤の代償として「事後」に労働日を休日に変更することです。
振休の場合は、休日が通常の労働日となりますので休日出勤にはあたりません。
代休の場合は、休日出勤の代償として休日を与えても、休日出勤の事実は帳消しにはなりません。
今回は、振休と代休の取扱いを3つの観点で比較し、制度面と実務面の違いを行政解釈をまじえ確認することとします。
1.制度(定義)の違い
厚生労働省の振替休日と代休の違いでは、以下のように定義されています。
○振休とは、予め休日と定められていた日を労働日とし、そのかわりに他の労働日を休日とすること。
●代休とは、休日労働が行われた場合に、その代償として以後の特定の労働日を休みとするもの。
休日の振替が「事前」に行われるのが振休、「事後」に行われるのが代休と覚えましょう。
就業規則に、休日の振替を必要とする場合には休日を振り替えることができる旨の規定を設け、これによって所定の休日と所定の労働日とを振り替えることができるか。
答
一 就業規則において休日を特定したとしても、別に休日の振替を必要とする場合休日を振り替えることができる旨の規定を設け、これによって休日を振り替える前にあらかじめ振り替えるべき日を特定して振り替えた場合は、当該休日は労働日となり、休日に労働させることにならない。
二 前記一によることなく休日に労働を行った後にその代償としてその後の特定の労働日の労働義務を免除するいわゆる代休の場合はこれに当たらないこと。
(昭和23年4月19日基収第1397号、昭和63年3月14日基発第150号)
2.休日指定時期の違い
休日の振替が事前なのか、事後なのかで振替休日と代休日の指定時期は異なります。
○振休は、休日出勤の前日までに振替休日をあらかじめ使用者が指定することが必要。
●代休は、休日出勤の後に会社の定めた期限内に任意に代休日を指定することが可能。使用者が指定することも労働者の申請により与えることでも可。
休日の指定時期については、振休は「前日まで」、代休は休日出勤後に就業規則等で定めた期限内であれば「任意」に指定することが可能です。
代休日は休日出勤の代償として休日を与えるものですので、労働基準法の規制も受けません。
一方、振替休日は労働義務のない休日となりますので、労働基準法の休日の規制を受けることとなります。
振休には、以下の①~④の4つの措置が求められます。
①就業規則に振替休日の規程を置くこと。
②振替休日は特定すること。
③振替休日は4週4日の休日が確保される範囲のできるだけ近接した日とすること。
④振替は前日までに通知すること。
(昭和23年7月5日基発第968号・昭和63年3月14日基発第150号)
代休に関しては、代休日の付与は、そもそも労働基準法上は求められていません。代休日を与えることとする場合は、会社が任意に取扱いを定めることができます。
労働基準法第36条第1項によって休日労働をした労働者に対しては以後必ず代休を与えねばならないか。
答
労働基準法第36条第1項において「前条の休日に関する規定にかかわらず」と規定してあるから、設問の場合においては代休を与える法律上の義務はない。
(昭和23年4月9日基収第1004号・昭和63年3月14日基発第150号・平成11年3月31日基発第168号)
3.割増賃金の違い
振休は労働日と休日を交換していますので振替前の休日の勤務は通常日の勤務となり休日勤務には該当せず、休日の割増賃金の問題は生じません。
○振休は、休日出勤には該当しないので休日割増の問題は生じないが、振替により出勤日した週の労働時間が週40時間を超える場合は時間外の割増賃金(割増率25%以上)の支払は必要となる。
●代休は、休日出勤した日が法定休日であれば休日の割増賃金(割増率35%以上)、休日出勤した日が所定休日(法定休日以外に会社が定めた休日)であれば時間外の割増賃金(割増率25%以上)の支払が必要。
(昭和22年11月27日基発第401号・昭和63年3月14日基発第150号)
最後にまとめ。
シンプルな制度設計のための3つのポイント。
①振替休日は同一週内の取得とする。(週40時間超の時間外手当が発生しない。)
②代休は同一賃金期間内の取得とする。(未取得の代休管理が不要。休日手当・時間外手当の精算も同一月の支払で完結。)
③管理監督者は、労基法の休日の規定はそもそも適用除外のため代休は与えない。(名ばかり管理職は除く。)
以上
written by sharoushi-tsutomu