インフルエンザで何日休む?出勤停止期間の目安と賃金・休業手当の取扱い

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インフルエンザは空気が乾燥する冬に流行します。

厚生労働省は9月~4月にかけて、原則、毎週金曜日14時に報道発表を行っています。

🔎 インフルエンザの発生状況|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou.html

インフルエンザウイルスによる感染拡大を防ぐため、職場では出勤停止期間を設けている会社も多いでしょう。

今回は、従業員がインフルエンザにかかった場合の出勤停止期間の目安と、出勤停止期間中の賃金の取扱いについてご案内します。

1.出勤停止期間の目安

インフルエンザにかかると38℃以上の発熱、せきやのどの痛み、全身の倦怠感が発生します。

また、非常に感染力が強く、インフルエンザ罹患者がそのまま出勤した場合は、職場全体に感染が広がってしまうことが想定されます。

労働安全衛生法第68条に病者の就業制限にかかる規定がありますが、季節型インフルエンザ(いわゆる普通のインフルエンザ)は該当しません。よって、出勤停止期間は会社が任意に設けることとなります。

(病者の就業禁止)
第六十八条 事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかつた労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない。

~労働安全衛生法第68条~

出勤停止期間を設ける場合は、学校における出席停止期間を定めた学校保健安全法の出席停止期間の基準を参考にすることが一般的です。

学校保健安全法施行規則の該当条文は、以下です。

インフルエンザ(特定鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)にあつては、発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあつては、三日)を経過するまで。

~学校保健安全法施行規則第19条~

図解すると、以下となります。

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・発症日と解熱日は「初日不算入の原則」により含めません。

・発症日の「翌日」から5日、解熱日の「翌日」から2日のいずれも満たすことが必要です。

出勤停止期間の目安としては、インフルエンザ発症日から一週間が目安となります。

2.出勤停止期間中の賃金

次に、出勤停止期間を設けた場合の賃金の取扱いについて、確認しましょう。

インフルエンザ罹患者が自発的に年次有給休暇を取得した場合や、就業規則等で有給とする旨の規定がある場合は、賃金支給にかかる問題は発生しません。

問題となるのは、インフルエンザ罹患者に年次有給休暇の残数がない場合で、かつ、インフルエンザによる出勤停止期間が無給である場合です。

会社都合による休業と認められれば、会社は労働基準法に定める休業手当の支給を要することとなります。

(休業手当)
第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

~労働基準法第26条~

以下の①~③のケースで、休業手当の支給の要否を確認しましょう。

①労働者に出勤意思がない場合

→単に体調不良による欠勤となりますので、休業手当の支給は不要です。

②医師等による指導により労働者が休業する場合

→医師の指示に基づくものですので会社に帰責事由はないことから、休業手当の支給は不要です。

③労働者に出勤意思があり、かつ、医師の指示もない場合

→労働者が就労可能であると認められれば、会社の出勤停止命令による休業(使用者の責に帰すべき事由)となりますので、休業手当の支給が必要です。

ポイントは、「労働者が就労可能であると認められる場合」です。

学校保健安全法の出席停止期間の基準に準ずる期間であれば、従業員はインフルエンザに罹患し保菌している状態であり、労務提供が可能な状況とはいえません。

労務提供が不能であれば、医師の指示云々は関係なく、会社に帰責事由はありませんから、休業手当の支給は不要との解釈ができるでしょう

3.インフルエンザ事例集

最後に、インフルエンザにかかるいくつかの事例についてQ&A形式で確認しましょう。

(1)同居家族がインフルエンザに感染した場合に労働者を出勤停止とすることはできるか。

出勤停止とすることはできます。

ただし、労働者は職務遂行が可能であることから、使用者の責に帰すべき事由に該当し、会社は休業手当の支払義務を負います。

(2)職場でインフルエンザに感染した場合に労災とすることはできるか。

インフルエンザの感染機会が明確に特定できない限り、労災には該当しません。

労災に該当する可能性はゼロではありませんが、病院でインフルエンザ患者の治療に従事する医師や看護師のように業務と疾病が密接に関係している者以外で認められることはないでしょう。

厚生労働省のホームページにも労災保険の給付対象となるのは「一般に、細菌、ウイルス等の病原体の感染によって起きた疾患については、感染機会が明確に特定され、それが業務又は通勤に起因して発症したものであると認められる場合には、保険給付の対象となります。」と限定的に記載されています。

🔎 新型インフルエンザ(A_H1N1)に関する事業者・職場のQ&A|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/21.html

(3)インフルエンザで傷病手当金を受給することはできるか。

待期期間経過後の無給期間については傷病手当金を受給することができます。

傷病手当金には連続3日間の待期期間が必要です。

待期期間は暦日でカウントすることとなりますので、土日・祝日の会社公休日も含めます。

また、傷病手当金の受給には医師の証明も必要となることから、労働者は有料で医師の証明書を取得しなければなりません。

なお、支給額は加入する健康保険が協会けんぽである場合はおおよそ月給の3分の2の額となります。

加入する健康保険が健康保険組合の場合で、独自に付加給付を設けているときは、3分の2以上の額を受給することが可能です。

🔎 病気やケガで会社を休んだとき|協会けんぽhttps://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139/


最後にまとめ。

・インフルエンザの出勤停止期間の目安は、発症日から一週間。

・出勤停止期間が使用者(会社)の責に帰すべき事由に該当すれば、使用者(会社)は休業手当の支払を要する。

・インフルエンザの予防には、ワクチン接種💉が有効。

以上

written by sharoshi-tsutomu

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