対象者200万人?2020年9月厚生年金標準報酬月額上限65万円改定

厚生年金保険料は、被保険者の厚生年金標準報酬月額に厚生年金保険料率を乗ずることで算出されます。

厚生年金保険料率は、2017年度(平成29年9月分)から18.3%(労使折半)で固定されましたので、もう上がりません。

一方の厚生年金標準報酬月額は、2020年9月より上限が65万円に改定されます。

2000年10月に上限62万円となってから、約20年ぶりの見直しです。

今回は厚生年金保険の標準報酬月額の上限改定の内容、改定により影響を受ける人とその額、実務対応の3点について確認します。

1.改定内容

公示された政府のパブリックコメントによると、改正内容は次のとおりです。

○厚生年金保険法の標準報酬月額の等級区分の改定等に関する政令案(仮称)に関する御意見募集(パブリックコメント)について

<改正内容>

①標準報酬月額の等級区分について

法第20条第1項に規定する標準報酬月額の等級区分について、同条第2項の規定に基づき、健康保険法(略)第40条第1項に規定する標準報酬月額の等級区分を参酌して、現行の最高等級(第31級:620,000円)の上に、さらに1等級(第32級:650,000円)を加えるための必要な読替えを規定する。

②標準賞与額の最高限度額について

標準賞与額の最高限度額を150万円(現行と同額)と定める。

※法第24条の4第1項に規定する標準賞与額の最高限度額については、法第20条第2項の規定による標準報酬月額の等級区分の改定が行われたときは、政令で定める額とされている。

<施行期日>

令和2(2020)年9月1日(予定)

標準報酬月額の上限は65万円に改定されますが、標準賞与額の上限は150万円に変更はありません。

厚生年金の標準報酬月額の上限の見直しは、厚生年金保険法第20条第2項に規定されています。

~厚生年金保険法第20条第2項~
毎年3月31日における全被保険者の標準報酬月額を平均した額の100分の200に相当する額が標準報酬月額等級の最高等級の標準報酬月額を超える場合において、その状態が継続すると認められるときは、その年の9月1日から、健康保険法(略)第40条第1項に規定する標準報酬月額の等級区分を参酌して、政令で、当該最高等級の上に更に等級を加える標準報酬月額の等級区分の改定を行うことができる。

厚生年金の標準報酬月額の上限見直しの条件は、

「年度末時点の全厚生年金被保険者の標準報酬月額の平均額の2倍が、標準報酬月額の上限を上回る状態が継続すると見込まれる場合」

に、行われることがわかります。

厚生労働省の資料によると、2019年3月末の全被保険者の平均標準報酬月額は322,404円。

2倍の額は、644,808円となります。

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健康保険の標準報酬月額の65万円の報酬月額は635,000円以上です。

2倍の額の水準は、2016年3月末から4年度続けて、上限追加の要件を満たしていることとなります。

厚生年金の標準報酬月額等級の変遷は、以下の日本年金機構のページで確認することができます。

🔎 厚生年金保険料率と標準報酬月額等級の変遷表|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-gaku/hensen/20140710.html

平成のはじまりの上限等級額は47万円。

この30年で約20万円も上限等級額があがることとなります。

2.影響を受ける人とその額

厚生労働省の資料では、標準報酬月額62万円の被保険者は全体では6.78%。

人数にすると、288万人。

結構います。

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上限見直し後も標準報酬月額が62万円に留まる人(報酬月額63万5千円未満)もいますので、65万円の上限適用となる人は、ザクっと200万人くらいでしょう。

上限改定に該当すると、標準報酬月額は3万円あがりますので、3万円×18.3%=5,490円。

保険料は労使折半ですので、被保険者負担分は月額2,745円上がります。

年額では、2,745円×12か月=32,940円。

約3万円上がります。

なお、月額3万円の保険料の上昇により、受け取る厚生年金額も、若干あがります。

🔎 老齢厚生年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20200306.html

3.実務対応

標準報酬月額等級の上限・下限追加は、平成28年4月に健康保険で3等級の上限追加、平成28年10月に厚生年金保険で1等級の下限追加が行われています。

①新等級該当者への通知について

標準報酬月額の上限・下限改定に際しては、事業主からの新たな届出はなく改定後の新等級に該当する被保険者の事業主に対して管轄の年金事務所(又は健康保険組合)より「標準報酬改定通知書」が送付されました。

令和2年9月の今回の厚生年金保険の標準報酬月額の上限追加の施行に際しても、同様の措置により通知されることが想定されます。

②上限改定に係る特例的な取扱い

厚生年金保険の上限(62万円)に達しているため、固定的賃金の変動がありながら、随時改定の対象とならないため月額変更届を提出していない被保険者については、特例的に月額変更届を提出することで新等級に該当させる措置が講じられることが想定されます。

改正法の施行後には通達等により具体的な実務上の取扱いが明示されるものと推察されますので、改正前には必ず確認することにしましょう。

🔎健康保険・船員保険の標準報酬月額の上限改定及び累計標準賞与額の上限変更|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/kyokaikenpo/0208.html

🔎 厚生年金保険の標準報酬月額の下限の改定|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/sonota/1118.html


今回のまとめ。

・厚生年金の標準報酬月額は、2020年9月より、上限が65万円に改定される。

・現在の上限62万円に該当する被保険者は6.78%、288万人いる。

・実務面は、これまでの健保上限追加・厚年下限追加と同様に、定時決定等により年金事務所に届出された報酬月額により新等級に該当する被保険者がいる場合は年金事務所より事業主宛に通知がされると想定されるが、任意に届出をする特例的な取扱いも併存するため、改正内容の詳細は法改正前に確認する。

以上

written by sharoshi-tsutomu