会社員が、育児休業中にもらえるお金が、育児休業給付金です。
会社員が、産前産後休業中にもらえるお金が、出産手当金です。
ここで、問題です。
「育児休業中に次の子を出産する場合、育児休業給付金と出産手当金は、両方もらえるのか？」
答えは、両方もらえます。
今回は、育児休業給付金と出産手当金が併給される理由について、順を追って確認してみましょう。
１.育児休業給付金の支給要件
育児休業給付金は、原則、子が１歳に達する日の前日(１歳の誕生日の前々日)まで、支給されます。
例外として、保育所に入れない等の理由がある場合は、最長、子が２歳に達する日の前日まで延長されます。
育児休業給付金の支給要件は、雇用保険法第61条の7に規定されています。
条文が長いので、要約した支給要件は、以下です。
＜支給要件＞
①１歳未満の子を養育するために育児休業を取得した雇用保険被保険者であること。
②育児休業を開始した日前の2年間に賃金支払基礎日数が11日以上、または、時間数が80時間以上である完全月が通算して12か月以上あること。
③一支給単位期間中の就業日数が10日以下、または、就業した時間数が80時間以下であること。
④有期雇用者の場合は、養育する子が1歳6か月に達する日までの間に、その労働契約の期間が満了することが明らかでないこと。
なお、育児休業中に就業した場合、就業により支払われた賃金が、休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の80％に相当する額以上となるときは、育児休業給付金は支給されません。
本題に戻ります。
育児休業給付金の支給要件は、大前提として、育児休業期間中であることが要件です。
育休中に妊娠し、次の子に係る産前産後休業が開始された場合は、現在の育児休業は産前産後休業が開始される日の前日で終了となります。
つまり、次の子の産前産後休業が開始されなければ、育児休業給付金の支給要件は継続して満たすこととなります。
２.労働基準法の産前産後休業の要件
産前産後休業は、労働基準法第65条に規定されています。
条文規定を確認してみましょう。
（産前産後）
第六十五条 使用者は、六週間（多胎妊娠の場合にあつては、十四週間）以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
②使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
③使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。
第1項が産前休業、第2項が産後休業の規定です。
２つの規定には大きな違いがあります。
産前休業は「出産予定の女性が請求した場合」就業禁止ですが、産後休業は「出産した女性の請求の有無にかかわらず」就業禁止です。
産前休業は「任意」で、産後休業は「強制」です。
つまり、産前休業は出産予定の女性が請求しなければ、産前休業は開始されないこととなります。
３.出産手当金の支給要件
出産手当金の支給要件は、健康保険法第102条第1項に規定されています。
条文規定を確認してみましょう。
（出産手当金）
第百二条 被保険者が出産したときは、出産の日（出産の日が出産の予定日後であるときは、出産の予定日）以前四十二日（多胎妊娠の場合においては、九十八日）から出産の日後五十六日までの間において労務に服さなかった期間、出産手当金を支給する。
２ 第九十九条第二項及び第三項の規定は、出産手当金の支給について準用する。
出産手当金は、法定の産前休業開始日から産後休業終了日までの、労務に服さなかった期間、支給されます。
ポイントとなるのは、労務に服さなかった期間です。
つまり、労務に服していないことが支給要件ですので、産前休業を取得しているか否かは、支給要件に影響しません。
最後にまとめ。
①育児休業給付金は、産前産後休業が開始されなければ、育児休業が継続するため、支給される。
↓産休を開始しなくても大丈夫？
②労働基準法上、産後休業の取得は強制だが、産前休業の取得は任意である。
↓産休を取得しなくても出産手当金はもらえるの？
③出産手当金は、法定の産前産後休業期間で、労務に服さなかった期間、支給される。
↓併給されるのはどんな場合？
以上
written by sharoshi-tsutomu
