36協定違反とサービス残業の罰則はどっちが重い?労基法違反の4つの罰則と罰則一覧

令和元年9月24日、厚生労働省公表の平成30年度の監督指導の結果によると、監督指導実施事業場の29,097事業場のうち、20,244事業場で何らかの労働基準関係法令違反が確認されています。

なんと・・・「7割」の事業場が違反です。

主な違反事項は「違法な時間外労働(いわゆる36協定違反)」と「賃金不払残業(いわゆるサービス残業)」です。

今回は、労働基準法違反の4つの罰則を確認するとともに、「36協定違反」と「サービス残業」の送検事例から法令順守のためのポイントを確認することとします。

    📚目次【本記事の内容】

  • 第一章:労基法違反の4つの罰則
  • 第二章:36協定違反とサービス残業の罰則
  • ―(1)違法な時間外労働(36協定違反)の送検事例。
  • ―(2)賃金不払残業(サービス残業)の送検事例
  • 第三章:労働基準法の罰則一覧
  • ―(1)1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金(第117条)
  • ―(2)1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(第118条)
  • ―(3)6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金(第119条)
  • ―(4)30万円以下の罰金(第120条)


第一章:労基法違反の4つの罰則

労働基準法の罰則は、労働基準法第十三章(第117条~第120条)に規定されています。

罰則の種類としては以下の①~④の4つです。

①1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金(第117条)

②1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(第118条)

③6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金(第119条)

④30万円以下の罰金(第120条)

一番重い労基法第117条は、強制労働の禁止(第5条)違反に適用されます。

(強制労働の禁止)
第5条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

戦後の労働基準法制定当時の日本は封建的悪習として暴行脅迫や前借金や賠償額予定契約の制度等により強制労働がまだ残っており、強制労働に対する直接な処罰規定もない状態でした。

労働基準法第5条(強制労働の禁止)は労働者の自由意思に基づく労働を保障するため、労働者の自由の侵害、基本的な人権の蹂躙に対し、厳罰を以て禁止するため、最も重い罰則が規定されています。

二番目に重いのは労基法第118条が適用される、中間搾取の排除(第6条)・最低年齢(第56条)・年少者の坑内労働の禁止(第63条)・女性の坑内労働の禁止(第64条の2)の4つの規定です。

三番目、四番目の労基法第119条・第120条には多くの条文規定が適用されていますので、第三章で一覧にしています。

第二章:36協定違反とサービス残業の罰則

36協定違反(違法な時間外労働)は労働基準法第32条違反、サービス残業(賃金不払残業)は労働基準法第37条違反となります。

それでは、どっちの罰則が重いでしょうか。

答え・・・

 ↓

 ↓

 ↓

同じです。

いずれも「 6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」となります。

厚生労働省及び都道府県労働局は労働基準関係法令違反に係る公表事案をホームページに掲載しています。

公表事案の概要でポイントを確認し、具体的な送検事例で違反内容を確認します。

―(1)違法な時間外労働(36協定違反)の送検事例

違法な時間外労働は労働基準法第32条違反として公表されています。

(労働時間)
第32条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

大別すると以下の2つに分類されます。

①36協定の締結なく、違法な時間外労働を行わせたもの

②36協定の延長時間を超える違法な時間外労働を行わせたもの

はじめは、①の そもそも36協定未締結で時間外労働をさせている事例です。

📣被疑者:道路貨物運送業を営む会社及びその代表者

トラック運転手が、建築資材を輸送途中の高速道路パーキングエリア内において意識不明の状態で発見され、翌日死亡したもの。労働基準法では、法定労働時間を1週40時間、1日8時間と定めているところ、時間外労働に関する協定を労働基準監督署に届け出ていない状態で、運転手に法定労働時間を超えて、1か月当たり127時間30分の違法な時間外労働を行わせていた。(東京労働局・平成28年5月送検事例)


時間外労働をさせるには36協定の締結、そして届出が必要です。36協定のない残業は法違反です。

🔎 36協定のない残業は法違反です!!【PDF】|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/170307-1.pdf

次は、②の 36協定は締結されているが締結した36協定が守られていない事例です。

📣被疑者:ディスカウントストア運営会社並びに同社の支社長3名及び店舗責任者5名

ディスカウントストア2店舗において、従業員2名に対し、労働基準法第36条に基づく時間外労働に関する協定で定める限度時間(3か月120時間)を超えて、平成26年10月1日から同年12月31日までの3か月間に、最長で415時間45分の時間外労働を行わせ、また、ディスカウントストア3店舗において、従業員4名に対し、平成27年1月1日から同年3月31日までの3か月間に、最長で265時間30分の時間外労働を行わせたものである。(東京労働局・平成28年1月送検事例)


2019年4月1日から、大企業では罰則付きの時間外労働の上限規制が適用されています。管理者は単月・複数月・年間の労働時間を適法に管理する義務があります。送検事例でも店舗責任者5名が被疑者として対象とされています。

↓ 以下の記事も参照しよう ↓

―(2)賃金不払残業(サービス残業)の送検事例

賃金不払残業は労働基準法第37条違反として公表されています。

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第37条 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

大別すると以下の2つに分類されます。

①割増賃金を支払わなかったもの

②割増賃金の一部を支払わなかったもの

はじめは、①の完全なサービス残業の事例です。

📣被疑者:リネンサプライ業者及び同社代表取締役専務

被疑会社リネンサプライ業者は、平成25年2月1日から平成25年9月30日までの間、同社東京事業部所属の労働者1名に対し、法定の労働時間を延長して労働させながら、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金計1,117,439円を所定賃金支払日である毎月23日に支払わなかったものである。(東京労働局・平成27年3月送検事例)


平成29年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果では、是正企業1870企業、対象労働者数は20万人、支払われた割増賃金の合計は、驚きの446億円です。

残業させたらきちんと払いましょう。

🔎 監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成29年度)|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00831.html

次は、②の 本来の割増賃金額と比し不当に安価な賃金を支払った事例です。

📣被疑者:衣類のアイロンプレス業の経営者

外国人技能実習生である労働者3名に対し、平成18年11月1日から平成19年5月31日までの7ヶ月間において、一律1時間400円の単価で計算した時間外労働手当合計734,300円のみを支払い通常賃金の2割5分以上の率計算した割増賃金との差額合計694,215円を、各々所定支払日に支払わなかった。(東京労働局・平成20年度送検事例)


割増賃金の計算にあたっては割増率の適用や、時給単価に算出元となる基礎賃金に含めるか否か等、法令通達を確認し適法な対応が求められます。

↓ 以下の記事も参照しよう ↓

第三章:労働基準法の罰則一覧

―(1)1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金(第117条)

第5条(強制労働の禁止)

―(2)1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(第118条)

第6条(中間搾取の排除)

第56条(最低年齢)

第63条(坑内労働の禁止)

第64条の2(坑内業務の就業制限)

―(3)6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金(第119条)

第3条(均等待遇)

第4条(男女同一賃金の原則)

第7条(公民権行使の保障)

第16条(賠償予定の禁止)

第17条(前借金相殺の禁止)

第18条第1項(強制貯金)

第19条(解雇制限)

第20条(解雇の予告)

第22条第4項(退職時等の証明)

第32条(労働時間)

第34条(休憩)

第35条(休日)

第36条第6項(時間外及び休日の労働)

第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

第39条(第7項を除く。)(年次有給休暇)

第61条(深夜業)

第62条(危険有害業務の就業制限)

第64条の3(危険有害業務の就業制限)

第65条・66条(産前産後)

第67条(育児時間)

第72条(職業訓練に関する特例)

第75条(療養補償)

第76条(休業補償)

第77条(障害補償)

第79条(遺族補償)

第80条(葬祭料)

第94条第2項(寄宿舎生活の自治)

第96条(寄宿舎の設備及び安全衛生)

第104条第2項(報告等)

―(4)30万円以下の罰金(第120条)

第14条(契約期間等)

第15条第1項・3項(労働条件の明示)

第18条第7項(強制貯金)

第22条第1項から3項(退職時等の証明)

第23条(金品の返還)

第24条(賃金の支払)

第25条(非常時払)

第26条(休業手当)

第27条(出来高払制の保障給)

第32条の2第2項[1か月単位の変形労働時間制の協定]

第32条の3第4項[フレックス勤務制の協定]

第32条の4第4項[1年単位の変形労働時間制の協定]

第32条の5第3項[1週間単位の非定型的変形労働時間制の協定]

第32条の5第2項[1週間単位の非定型的変形労働時間制の通知]

第33条第1項ただし書(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)

第38条の2第3項[事業場外労働制の協定]

第38条の3第2項[裁量労働制の協定]

第39条第7項[年次有給休暇の取得義務]

第57条(年少者の証明書)

第58条・59条(未成年者の労働契約)

第64条(帰郷旅費)

第68条(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)

第89条(作成及び届出の義務)

第90条第1項(作成の手続)

第91条(制裁規定の制限)

第95条第1項・2項(寄宿舎生活の秩序)

第96条の2第1項(監督上の行政措置)

第100条第3項(女性主管局長の権限)

第105条(労働基準監督官の義務)

第106条(法令等の周知義務)

第107条(労働者名簿)

第108条(賃金台帳)

第109条(記録の保存)


厚生労働省は労働基準法違反の企業に対する情報をメールで受け付けています。

使用者や管理者は通報されないように気をつけましょう。

📩 労働基準関係情報メール窓口|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/mail_madoguchi.html

以上

written by horei-mamoru