厚生労働省のサイトには、監督指導による賃金不払残業の是正結果が公表されています。
令和4年の監督指導結果が、令和5年7月27日に公表されました。
賃金不払事案は2万件、対象労働者数は18万人、金額は、なんと120億円です。
悪質な事例を除けば、賃金不払は、労働時間が適正に把握されていないことに起因します。
今回は、監督指導による是正事例・送検事例から、労働時間の適正把握のポイントを確認します。
1.客観時間の把握
🔶事例:タイムカード等がなく労働時間を適正に把握していない。
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のこと。
使用者には、労働時間を適正に把握する責務があります。
労働時間の適正把握には、始終業時刻を客観的に把握し記録することがポイントです。
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、原則的な記録方法として、タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間の記録を例示しています。
ガイドラインでは、自己申告制の場合の使用者の措置も記載されていますが、煩雑です。
手っ取り早く、勤怠管理システムを導入し、始終業時刻を客観的に把握する仕組みを作りましょう。
2.客観取得時間と申告労働時間の乖離
🔶事例:一定の時刻以降の残業時間に対する残業代を支払わない。
勤怠管理システムで、始終業時刻を客観的に取得しても、残業時間は自己申告・上長承認としている会社も多いでしょう。
ここで、問題となるのが、客観取得時間と申告労働時間の乖離です。
労働時間の適正把握には、客観取得時間と申告労働時間の乖離理由を把握することが、ポイントです。
例えば、乖離が10分以上ある場合は、申告時や承認時に乖離理由を入力させる等のルールとするとよいでしょう。
また、10分以上の乖離が月の半数を超えた場合は、人事部門が労働者本人にヒアリングするルールとすれば、牽制も働きます。
3.残業時間の上限設定
🔶事例:設定した上限時間を超える残業代は支払わない。
いわゆる固定(定額)残業の制度を導入している会社も多くあります。
固定(定額)残業の制度は、固定残業代の支払いにより、青天井で残業をさせられる制度ではありません。
固定残業代を超える残業をした場合は、超過分の残業手当は支払義務が生じます。
固定(定額)残業制度を導入している場合も、労働時間の適正把握は、当然に、必要です。
賃金不払防止のポイントまとめ。
・客観時間を把握する仕組みを作る。
・客観取得時間と申告労働時間の乖離理由を把握するルールを作る。
・固定(定額)残業の制度を導入しても、労働時間は適正に把握することが、当然、必要。
以上
written by horei-mamoru