2020年5月29日に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が成立し、厚生年金保険の短時間労働者への適用拡大にかかる見直しも行われました。
法改正の目的は、一言でいえば、適用拡大によって厚生年金の適用対象者を「更に」増やすこと。
短時間労働者の厚生年金保険の適用拡大に関しては、2016年10月に開始され、約40万人超に適用されています。
短時間労働者の適用は、企業規模要件、労働時間要件、勤続期間要件、賃金要件、学生除外要件の5つの要件により判定することとされていましたが、勤続期間要件は2022年10月に撤廃され、4つの要件で判定することとなります。
今回は、短時間労働者の厚生年金適用判定について改めて確認するとともに、2022年10月より施行される法改正内容もあわせて確認することとします。
1.厚生年金適用判定チャート
詳細の適用要件や除外要件の確認前に、厚生年金適用判定チャートで全体像を理解しましょう。
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適用判定の詳細は、チャートに沿って、以下の順で確認していくこととします。
▶ 原則の除外要件 (2-1)
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▶「一般社員」の適用要件(2-2)
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▶「短時間就労者」の適用要件(2-3)
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▶「短時間労働者」の適用要件(3-1~5)
2.原則の除外要件と適用要件
はじめに、原則の除外要件と適用要件について確認します。
2-1.原則の除外要件
厚生年金法第12条により、次に該当する者は適用要件を満たす場合であっても適用除外となります。
・日々雇い入れられる者(1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合を除く)
・二月以内の期間を定めて使用される者(所定の期間を超え引き続き使用されるに至った場合を除く)
・所在地が一定しない事業所に使用される者
・季節的業務に使用される者(継続して4か月を超えて使用されるべき場合を除く)
・臨時的事業の事業所に使用される者(継続して6か月を超えて使用されるべき場合を除く)
2-2.原則の適用要件(一般社員)
「適用事業所に使用される70歳未満の者」は、厚生年金保険の被保険者となります。
いわゆる常用雇用者(フルタイム)です。
使用関係が常用的である正社員や法人の代表者、役員等が該当します。
厚生年金保険の被保険者区分は、一般社員・短時間就労者・短時間労働者の3つに大別されますが、原則の適用要件に該当する者は、一般社員に分類されます。
2-3.4分の3基準適用要件(短時間就労者)
契約社員やパート等で一般社員よりも短時間で労働している者であっても、「1週間の所定労働時間が4分の3以上、かつ、1か月の所定労働日数が4分の3以上」の者は、被保険者となります。
厚生年金保険の被保険者区分では、短時間就労者に分類されます。
3.短時間労働者の適用要件
短時間労働者の適用要件は5要件です。
5要件全てを満たした場合に短時間労働者として適用されます。
3-1.企業規模要件
被保険者が常時500人を超える適用事業所であること。
※2022年10月からは100人超、2024年10月からは50人超へ引き下げ。
同一の法人番号を有する企業単位で、厚生年金保険の通常の被保険者数(短時間労働者を含まない)が基準値となります。
被保険者数は、月ごとにカウントし直近12か月のうち6か月で基準を上回った場合に、特定適用事業所となります。
2020年の法改正により、企業規模要件は、2022年10月からは100人超規模へ、2024年10月からは50人超規模へ段階的に引き下げられることが決定しています。
法改正により新たに適用となる人数は、企業規模要件が100人超で45万人、50人超で65万人と推計されています(厚生労働省第123回社会保障審議会医療保険部会)。
なお、特定適用事業所に該当しない場合も、所定の要件を満たす場合は任意適用事業所となることも可能です。
🔎 平成29年4月より短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用対象が広がります。|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2017/20170315.html
3-2.労働時間要件
1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
週20時間の判定は、契約上の所定労働時間によって行うため臨時に生じた残業時間は含みません。
所定労働時間が1か月単位又は1年単位で定められている場合の1週間の所定労働時間は以下となります。
・所定労働時間が1か月単位で定められている場合
…1か月の所定労働時間を12分の52(1年=52週換算)で除して算出。(つまり、1か月の所定労働時間に12(か月)を乗じてから、1年の週数となる52(週)で除すということ。)
・所定労働時間が1年単位で定められている場合
…1年の所定労働時間を52(週)で除して算出。
3-3.勤続期間要件【2022年10月撤廃】
雇用期間が継続して1年以上見込まれること。
※2022年10月からは要件撤廃
現在は短時間労働者の場合、フルタイム労働者に⽐べて入退職が頻繁であるため、企業の事務負担が過重にならないようにする観点から定められています。
しかしながら、適用除外となる「雇用期間1年未満」とは、契約期間が1年未満で、かつ、書面上更新可能性を示す記載がなく、更新の前例もない場合に限られています。
実務的にはほとんど機能していない要件となるため、勤続期間要件は2022年10月からは撤廃されます。
撤廃後は、原則の適用除外要件に該当しない「雇用期間2か月超」の要件が勤続期間要件の判定基準となります。
3-4.賃金要件
月額賃金が8.8万円以上であること。
月額賃金は、基本給及び諸手当で判断します。
以下の①~④のような賃金は含まれません。
① 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
② 1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
③ 時間外労働に対して支払われる賃金、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)
④ 最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)
なお、日給や時間給によって賃金が定められている場合には、被保険者の資格を取得する月前1月間に同じ事業所において同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける最も近似した状態にある者が受けた報酬の額の平均額を算出します。
3-5.学生除外要件
学生ではないこと。
いわゆる学生は除外されます。
就業年数の限られる学生を被用者保険の適用対象とする意義は大きくないためです。
学生の対象範囲は以下の条文規定で確認しましょう。
・学校教育法第50条
・学校教育法第83条
・厚生年金保険法施行規則第9条の6
最後にまとめ。
・年金等の保障を厚くする観点から短時間労働者の適用拡大が2020年10月より開始。
・2020年10月時点では5つの要件(企業規模要件・労働時間要件・勤続期間要件・賃金要件・学生除外要件)がある。
・企業規模要件は段階的に引き下げ、勤続期間要件は2022年10月から撤廃される。
written by sharoshi-tsutomu