民間企業や公的機関は、障害者雇用促進法に基づき、一定割合の障害者を雇用することが義務づけられています。
民間企業の障害者雇用率は、現行(2023年度)は2.3%ですが、2024年度からは2.5%、2026年度からは2.7%へ引き上げとなります。
事業主は、毎年6月1日現在の障害者雇用の状況を「障害者雇用状況報告書」に記載し、ハローワークに提出します。
厚生労働省発表の2022年の障害者雇用状況の集計結果によると、法定の障害者雇用率達成企業の割合は48.3%と、約半数の結果となっています。
今回は、障害者雇用率の推移と実雇用率の計算方法、障害者雇用納付金制度について、確認します。
1.障害者雇用率の推移
障害者雇用率制度は、1976年(昭51)に制度創設され、法の定めに基づき、少なくとも5年ごとに見直しを行う制度となっています。
今般の引き上げも、5年ごとの見直しにより、本来は2023年(令5)からの引き上げとなりますが、雇入れに係る計画的な対応を行う準備期間を設けるため、2024年(令6)と2026年(令8)に段階的な引き上げすることに決定しました。
障害者雇用率の推移と達成企業割合の推移について、確認します。
1-1.障害者雇用率の推移
障害者雇用率は、事業主の区分ごとに設定されています。
2023年度以降の障害者雇用率は以下となります。
事業主区分 | 2023年度 | 2024年度 | 2026年度 |
民間企業 | 2.3% | 2.5% | 2.7% |
国・地方公共団体等 | 2.6% | 2.8% | 3.0% |
都道府県等の教育委員会 | 2.5% | 2.7% | 2.9% |
現行、民間企業は2.3%となりますので、43.5人以上の労働者を雇用する企業は1人の障害者を雇用する義務が生じます。
民間企業の障害者雇用率の推移は、以下の通りです。
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制度創設時の1976年に1.5%であった障害者雇用率は、2013年には2.0%となり、1.5%から2.0%へ0.5%引き上げるのに約40年かかりました。
2024年には2.5%に引き上げとなりますので、2013年の2.0%から0.5%の引き上げには約10年と短期間での引き上げとなっています。
1-2.達成企業割合の推移
2013年以降の10年間の障害者雇用率の達成企業割合の推移を確認します。
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達成企業割合50%以上は、過去10年で、2017年の1回のみとなっています。
今後の障害者雇用率の引き上げを勘案すると、当面は、同水準となる50%前後で推移すると想定されます。
2.障害者実雇用率の計算
各企業においては、障害者の実雇用率の計算が必要となります。
実雇用率の計算式と、計算に必要となる対象障害者の範囲やカウント方法について、確認します。
2-1.実雇用率の計算方法
企業における障害者の実雇用率の計算式は、以下です。
用語の定義を、確認します。
「常用労働者」とは、1年以上継続して雇用される労働者(見込み含む)で、かつ、週所定労働時間30時間以上勤務する労働者をいいます。
「短時間労働者」とは、週所定労働時間20時間以上30時間未満の労働者です。
実雇用率の分子となる対象障害者の範囲やカウント方法は、次の2-2で詳細を確認します。
2-2.対象障害者の範囲とカウント方法
障害者雇用率の対象となる障害者は、1976年(昭51)の制度創設当時は身体障害者のみが対象でしたが、1998年(平10)には知的障害者、2018年(平30)からは精神障害者も実雇用率の算定基礎対象として追加されました。
身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を所有している労働者が、実雇用率の原則の算定対象となります。
障害の程度や週所定労働時間に応じた障害者数のカウント方法は、以下の通りです。
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…常用労働者(週30時間以上)…
常用労働者が、重度の身体障害者・知的障害者である場合は、ダブルカウントとなります。
…短時間労働者(週20時間以上30時間未満)…
短時間労働者は、常用労働者のハーフカウントが原則ですが、精神障害者の算定特例(短時間労働者も1人カウント。2023年4月以降も延長。)により精神障害の短時間労働者は1人カウントとなります。
…特定短時間労働者(週10時間以上20時間未満)…
2024年4月以降は、週所定労働時間10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者については、0.5人カウントとして算定できるようになります。
3.障害者雇用納付金制度
障害者雇用納付金制度は、障害者の雇用に伴う事業主の経済的負担の調整を図り、全体の障害者雇用水準を引き上げることを目的とし、制定されました。
法で定められた障害者雇用率の未達成企業から徴収するのが障害者雇用納付金、達成企業に支給するのが障害者雇用調整金・報奨金です。
それぞれの対象企業と金額を、確認します。
3-1.障害者雇用納付金
障害者雇用率未達成企業のうち、障害者雇用納付金が徴収される民間企業は常用労働者が100人を超える場合です。
障害者雇用にあたっては、作業設備等の職場環境や仕事内容・処遇等の雇用条件の整備が必要となりますので、常用雇用者100人以下の中小企業は経済的な負担等を勘案し対象外となっています。
障害者雇用納付金として徴収される金額は、不足1人あたり月額5万円です。
3-2.障害者雇用調整金・報奨金
常用労働者100人超の障害者雇用率達成企業には障害者雇用調整金として、超過1人あたり月額2万9千円(2024年4月1日以降の雇用期間については支給対象人数が月10人を超える場合には当該超過人数分への支給額が1人月額2万3千円)が支給されます。
常用労働者100人以下の企業でも、各月の常時雇用者数の4%の年度間合計数、又は、72人(月6人×12か月換算)のいずれか多い数を超えている場合は障害者雇用報奨金として、超過1人あたり月額2万1千円(2024年4月1日以降の雇用期間については支給対象人数が月35人を超える場合には当該超過人数分への支給額が1人月額1万6千円)が支給されます。
(参照)
🔎 障害者雇用対策|厚生労働省
🔎 障害者雇用率制度|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
🔎 障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について【PDF】|厚生労働省
以上
written by suchika-hakaru