裁量労働まるわかり!専門型・企画型裁量労働制の導入要件と他の勤務制度との違い

裁量労働制とは、①労使であらかじめ定めた対象業務に従事する労働者に、②始業・終業の時刻その他の時間配分の決定及び業務遂行の手段や方法を委ねることで、③労使で定めた時間を働いた時間とみなす制度です。

使用者は、専門人材に裁量を与えることで、大きな成果をだしてもらうことが期待できます。

労働者は、好きな時に、好きな方法で、好きなだけ、仕事をすることで大きな成果をだすことが期待できます。

機能すれば、労使双方にとって合理的でメリットのある働き方となりますが、対象者の選定や運用方法を誤れば、長時間労働の温床となるでしょう。

今回は、裁量労働制の2つの制度の概要と他の勤務制度との違いを確認することとします。

1.制度概要と運用留意点

はじめに、裁量労働制の制度概要と運用留意点について確認します。

1-1.制度概要

裁量労働制の3つの特徴を理解しましょう。

❶みなし労働時間が適用されること

裁量労働制の一番の特徴は、実労働時間にかかわらず、労使で定めた時間を「みなし労働時間」として適用することです。

みなし労働時間は、「1日あたりの労働時間」を定めます。

1日あたりの労働時間は、「所定労働時間」とすることも可能ですし、対象業務が所定労働時間を超えて労働することが必要な場合は「所定労働時間を超えた時間」をみなし労働時間とすることも可能です。

なお、労働時間のみなしに関する規定が適用される場合であっても、休憩、深夜業、休日に関する規定の適用は排除されません(昭和63年3月14日基発第150号・平成12年1月1日基発第1号)。

❷対象業務が限定されていること

労働時間と成果が必ずしも連動しない職種や業務が対象となります。

❸業務遂行や時間配分を労働者の裁量に委ねること

業務の性質上、使用者が具体的な指示をすることが困難なものが対象業務とされていますので、業務遂行の手段や方法、時間配分は労働者に大幅な裁量が認められます。

1-2.運用留意点

労使で定めた時間を「みなし労働時間」とするために、対象労働者には業務遂行や時間配分について大きな裁量を与えることが必要です。

労働時間のみなしの効果が⽣じさせるための3つの留意事項を確認しましょう。

❶過剰な業務量を与えること

所定労働時間では明らかに処理できない過剰な業務量を与えることはできません。

また、業務遂行に通常必要となる時間は変化するものですので、一定期間ごとに見直しすることが望ましいでしょう。

❷対象業務以外の業務に従事させること

あらかじめ協定や決議で定めた業務以外の業務に就かせることはできません。

❸具体的な指示をすること

裁量労働制は、業務の遂行方法や労働時間の配分を自らの裁量により決定する制度ですので、使用者(上司)が具体的な指示を行うことはできません。

2.裁量労働制の2つの制度

裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2つの制度があります。

専門業務型裁量労働制の場合は「労使協定」、企画業務型裁量労働制の場合は「労使委員会の決議」を労働基準監督署に届け出ることが必要です。

それぞれの対象業務と締結・決議事項について確認しましょう。

2-1.専門業務型裁量労働制(労基法第38条の3)

専門業務型裁量労働制の導入にあたっては、労使協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。

(1)対象業務

専門業務型裁量労働制の対象業務は、労基則第第24条の2の2第2項と、同項第6号により厚生労働大臣が指定した業務(平成9年2月14日労働省告示第7号)の全19業務です。

―労基則第第24条の2の2第2項―

❶新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務

❷情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であつてプログラムの設計の基本となるものをいう。)の分析又は設計の業務

❸新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(略)第2条第28号に規定する放送番組(以下「放送番組」という。)の制作のための取材若しくは編集の業務

❹衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務

❺放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務

―同項第6号により厚生労働大臣が指定した業務(平成9年2月14日労働省告示第7号)―

❻広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務

❼事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務

❽建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務

❾ゲーム用ソフトウェアの創作の業務

❿有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務

⓫金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務

⓬学校教育法に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)

⓭公認会計士の業務

⓮弁護士の業務

⓯建築士の業務

⓰不動産鑑定士の業務

⓱弁理士の業務

⓲税理士の業務

⓳中小企業診断士の業務

(2)労使協定の締結事項

労使協定では、以下の6つの事項について締結します。

❶対象業務

❷労働時間として算定される時間(みなし労働時間)

❸業務の遂行手段、時間配分の決定等に関し具体的な指示をしない旨

❹健康・福祉を確保する措置

❺苦情処理に関する措置

❻その他厚生労働省令(労基則第24条の2の2)で定める事項…有効期間の定め、記録の保存等

労使協定の締結例は、以下の厚生労働省の資料を参照ください。

🔎 専門業務型裁量労働制【PDF】|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-9a.pdf

2-2.企画業務型裁量労働制(労基法第38条の4)

企画業務型裁量労働制の導入にあたっては、労使委員会を設置し、労使委員会で決議し、所轄労働基準監督署長に決議の届け出をし、対象労働者の同意を得ることが必要です。

(1)対象業務

企画業務型裁量労働制の対象業務は、以下の4つの要件のいずれにも該当することが必要です(平成11年12月27日労働省告示第149号・平成15年10月22日基発第1022001号)。

❶事業の運営に関する事項についての業務であること。

❷企画、立案、調査及び分析の業務であること。

❸当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の 裁量にゆだねる必要がある業務であること。

❹当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をし ないこととする業務であること。

(2)労使委員会の決議事項

労使委員会では、以下の7つの事項を委員の5分の4以上の多数決により決議します。

❶対象業務

❷対象労働者

❸労働時間として算定される時間(みなし労働時間)

❹健康、福祉を確保する措置

❺苦情処理に関する措置

❻本人の同意の取得及び不同意者の不利益取扱いの禁止に関する措置

❼その他厚生労働省令(労基則第24条の2の3)で定める事項…有効期間の定め、記録の保存等

労使委員会の決議例は、以下の厚生労働省の資料を参照ください。

🔎 企画業務型裁量労働制【PDF】|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-8a.pdf

3.他の勤務制度との違い

他の勤務制度との違いについて、最後に確認します。

3-1.事業場外みなし労働時間制との違い

事業場外みなし労働時間制とは、事業場外で働く人で労働時間の算定が困難な場合に適用されます。

外回りの営業職や在宅勤務など、使用者の管理監督が及ばないときが対象となります。

裁量労働制は「専門的業務に従事する労働者」が対象となるが、事業場外のみなし労働時間制は事業場外で「労働時間の算定が困難な場合」に対象となる。

🔎 「事業場外労働に関するみなし労働時間制」の適正な運用のために【PDF】|東京労働局

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/jikanka/jigyougairoudou.pdf

3-2.フレックスタイム制との違い

フレックスタイム制は、始業・終業の時刻を労働者が自由に選択することができる制度です。

みなし労働時間が適用されるわけではないので、労働者に労働時間の裁量はありません。

時間外労働についても、通常通り、適用対象となります。

裁量労働制は「みなし労働時間」に対して給与が支払われるが、フレックスタイム制は「実労働時間」に対して給与が支払われる。

🔎 フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き【PDF】|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/000476042.pdf

3-3.高プロ制との違い

高度プロフェッショナル制度の対象労働者には、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定が適用されません。

究極の裁量労働制です。

対象職種(金融専門職やコルサルタント職等)も限定的で、年収条件(年収1075万円)もあります。

裁量労働制は「休日や深夜の割増賃金の規定は適用される」が、高プロは「休日や深夜の規定も適用されない」。

🔎 高度プロフェッショナル制度わかりやすい解説【PDF】|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/000497408.pdf

3-4.管理監督者との違い

勤務制度ではありませんが、スタッフ職の管理監督者ですと、裁量労働者と実態としては同じような印象を受けます。

管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人で、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けません(深夜の制限は受けます)。

裁量労働者は「休日や休憩の制限は有る」が、管理監督者は「そもそも労働時間の制限もなく休日や休憩に至るまで労基法の適用除外」となる。

🔎 しっかりマスター 管理監督者編【PDF】|東京労働局

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000501863.pdf

裁量労働制と他の勤務制度との違いを一覧表でまとめると以下となります。

↓ クリックして拡大 ↓

*勤務制度比較表です。裁量労働制と他の勤務制度の違いについて確認しましょう。

以上

written by sharoshi-tsutomu