全員一律はNG?住宅手当を割増賃金の算定基礎額から除外するための要件

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割増賃金の算定基礎額から除外可能な賃金は、法令で限定列挙されています。

具体的には、①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤臨時に支払われた賃金、⑥1か月を超える期間ごとに支払われる賃金、そして、⑦住宅手当です。

覚えた方は「かつべしリーチ、プラスじゅう」。

住宅手当が、平成11年10月に最後に追加されたので「プラスじゅう」と覚えましょう。

ただし、住宅手当の名称であれば、割増賃金の算定基礎額から一律に除外できるものでありません。

除外可能な住宅手当は「住宅に要する費用に応じて算定する手当」です。

今回は、住宅手当の割増賃金算定基礎額からの除外要件を具体例とあわせ、確認します。

1.割増賃金算定基礎額から除外できる賃金

はじめに、大原則となる割増賃金算定基礎額への算入要件を確認します。

該当の条文は労基法第37条第1条の規定です。

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

~労働基準法第37条第1項~

割増賃金算定基礎額に算入が必要なのは「通常の労働時間又は労働日の賃金」です。

よって、時間外労働に従事したことによる支給される特殊勤務手当等、「通常の労働時間又は労働日の賃金」にそもそも該当しない賃金は除外されます。

大原則を抑えたところで、除外可能な賃金を確認します。

「通常の労働時間又は労働日の賃金」であっても、割増賃金算定基礎額から除外できる賃金は、労基法第37条第5項と労基則第21条に、限定列挙されています。

はじめに労基法第37条第5項を確認します。

第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

~労働基準法第37条第5項~

労基法では、①家族手当と②通勤手当の2つが規定されています。

その他厚生労働省令が、労基則第21条です。

第二十一条 法第三十七条第五項の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第一項及び第四項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。
一 別居手当
二 子女教育手当
三 住宅手当
四 臨時に支払われた賃金
五 一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

~労働基準法施行規則第21条~

労基則では、①別居手当、②子女教育手当、③住宅手当、④臨時に支払われた賃金(例:慶弔見舞金など)、⑤1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:賞与など)の5つが規定されています。

労基法で2つ、労基則で5つの、計7つが、割増賃金算定基礎額から除外可能な賃金です。

7つの賃金を除外する趣旨としては、労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基いて支給されていることなどにより除外可能な賃金とされています。

2.住宅手当の割増賃金算定基礎額からの除外要件

では、本題の住宅手当の割増賃金算定基礎額からの除外要件を確認します。

通達(平成11年3月31日基発第170号)では「住宅に要する費用に応じて算定する手当」とされています。

前半部分の「住宅に要する費用」とは、

賃貸住宅であればその賃貸に必要となる費用、持ち家であれば住宅購入や住宅ローン等の費用です。

後半部分の「費用に応じて算定する手当」とは、

費用に定率を乗じた額や、費用を段階的に区分し費用が増えるにしたがい手当が増額する場合です。

3.住宅手当の割増賃金算定基礎額への除外可否の例

住宅手当の割増賃金算定基礎額から「除外できる例」と「除外できない例」を確認します。

3-1.除外できる例

<定率方式>

・賃貸住宅の家賃や持家の住宅ローン月額に応じて、一定割合を支給する場合。

(例)家賃月額や住宅ローン月額の10%を支給する。

<段階方式>

・賃貸住宅の家賃や持家の住宅ローン月額を段階的に区分し費用が増えるにしたがって額を多くする場合。

(例)家賃月額(住宅ローン)10万円未満は1万円、10万円以上は2万円を支給する。

3-2.除外できない例

<全員一律方式>

・全員に一律の定額を支給する場合。

(例)全員に2万円を支給する。

<住宅形態一律方式>

・住宅の形態ごとに一律に定額で支給する場合。

(例)賃貸住宅居住者には2万円、持家居住者には1万円を支給する。

<扶養家族有無方式>

・扶養家族の有無により一律に定額で支給する場合。

(例)扶養家族有は2万円、扶養家族無は1万円を支給する。


最後にまとめ。

・通常の労働時間又は労働日の賃金で、割増賃金の算定基礎額から除外できる賃金は、7つ。

・7つの賃金のうち、住宅手当が、平成11年10月に最後に追加された。

・住宅手当を割増賃金の算定基礎額から除外するための要件は「住宅に要する費用に応じて算定する」手当であることが必要。

以上

written by sharoshi-tsutomu

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