3年で正社員?派遣3年ルールの2つの期間制限と抵触日後の4つの雇用安定措置

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2015年の労働者派遣法の改正により、派遣労働者が同一の派遣先で3年を超えて働くことが、原則できなくなりました。

いわゆる「派遣3年ルール」です。

期間制限となる3年経過後の最初の日を「抵触日」と呼びます。

抵触日後、派遣元となる派遣会社には、派遣先に直接雇用の依頼等の雇用安定措置が求められます。

今回は、派遣3年ルールの基本となる2つの期間制限の内容と、抵触日後に派遣元に課される4つの雇用安定措置について、確認しましょう。

1.2つの期間制限

派遣3年ルールには、2つの期間制限があります。

期間制限の趣旨は、派遣労働は臨時的・一時的な労働力と位置付けられており、派遣先の常用雇用の代替とすることを防止するためです。

1-1.事業所単位の期間制限

同一の派遣先の事業所に対し、派遣できる期間は、原則、3年が限度となります(労働者派遣法第40条の2)。

ここでいう「事業所」とは、雇用保険の適用事業所と同一の考え方です。

雇用保険の適用事業所の考え方は、①場所的に他の事業所から独立していること、②経営(又は業務)単位としてある程度の独立性を有すること、③一定期間継続し施設としての持続性を有することの3つの点で判断されます。

事業所単位の派遣労働者の受入状況は派遣先でしかわかりませんので、事業所単位の抵触日は派遣先から派遣元に通知します(労働者派遣法第26条第4項)。

派遣元は派遣先からの事業所抵触日の通知なしに派遣契約の締結を行うことができません(労働者派遣法第26条第5項)。

ただし、派遣先の過半数労働組合(過半数労働組合がない場合は過半数代表者)から意見聴取を行うことで、3年を超えて受け入れることは可能です。

意見聴取期限は、抵触日の1か月前まで。

1回の意見聴取で、延長できる期間は3年までとなります。

意見聴取の結果は書面に記載し、延長前の派遣可能期間の終了後3年間保存が必要となります。

意見聴取の通知書や意見書の様式は、以下のページを参照しましょう。

🔎 労働者派遣事業に係る契約書・通知書・台帳関係様式例|東京労働局

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/riyousha_mokuteki_menu/mokuteki_naiyou/haken_part/youshikirei.html

1-2.個人単位の期間制限

同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位に対し派遣できる期間は、3年が限度となります(労働者派遣法第35条の3)。

個人単位の期間制限は、事業所単位の期間制限と異なり、意見聴取による延長の例外措置はありません。

同一の組織単位とは、いわゆる「課」や「グループ」などです。

業務の類似性や同一の組織長が業務配分・指揮監督権限を有する場合など、実態に即して判断されます。

同一の事業所であっても、組織単位を変更すれば、同一の派遣労働者を派遣として就業させることは可能です。

💡 期間制限が適用されない場合

以下の①~⑤のいずれかに該当する場合は、事業所単位及び個人単位の期間制限は適用されません。

①無期雇用派遣労働者に係る労働者派遣の場合

②派遣労働者が60歳以上である場合

③有期プロジェクト業務に派遣労働者が従事する場合

④日数限定業務に派遣労働者が従事する場合

⑤産前産後休業、育児休業及び介護休業等で休業する労働者の業務に派遣労働者が従事する場合

2.4つの雇用安定措置

派遣元である派遣会社は、派遣就業見込みが3年であり、継続就業を希望する有期雇用派遣労働者について、4つの雇用安定措置のいずれかを実施することが義務付けられています(労働者派遣法第30条)。

2-1.派遣先への直接雇用の依頼

派遣契約終了後に、派遣先で直接雇用の申込みをしてもらうように依頼する措置です。

派遣先での直接雇用の形態は、無期・有期は問いません。

2-2.新たな派遣先の提供

派遣契約終了後に、派遣労働者に新しい派遣先を提供する措置です。

新しい派遣先は、合理的なものに限られます。

極端に遠方の勤務地の提供や、賃金が大幅に低下する場合は措置を講じたものとは認められません。

2-3.派遣元での無期雇用

派遣契約終了後に、派遣元事業主が、対象となる派遣労働者を無期雇用とし、自社で就業させるものです

無期雇用労働者になると期間制限の対象外となりますので、派遣元企業は同一の派遣先へ就業させることは可能となります。

2-4.その他の措置

その他の措置の例としては、有給の教育訓練や紹介予定派遣などの措置です。


派遣の期間制限に違反した場合の罰則は、30万円以下の罰金が規定されています(労働者派遣法第61条第三号)。

30万円以下の罰金の罰則規定以外にも、派遣元には労働者派遣事業の許可の取消や停止(労働者派遣法第14条)、派遣先には是正措置の勧告や公表(労働者派遣法第49条の2)が課される可能性があります。

以上

written by sharoshi-tsutomu

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