同日得喪とは、被保険者資格の取得と喪失を同日に実施することです。
同日得喪により、標準報酬月額は、即時改定されます。
60歳以降に定年等で退職し再雇用された場合、再雇用月から、再雇用後の給与に応じた標準報酬月額に改定することが可能となります。
給与減額の場合、通常は、随時改定の仕組みにより、標準報酬月額改定には3か月を要します。
一方で、同日得喪の仕組みを利用すれば、再雇用月から減額後の給与による標準報酬月額を適用することが可能となり、再雇用者の保険料負担を軽減することができます。
今回は、同日得喪の対象者と手続き、同日得喪する場合の留意点について確認します。
1. 同日得喪の対象者
同日得喪の対象者となるのは「60歳以上の者で、退職後継続して再雇用されるもの」です。
60歳以上が対象となりますので、60歳前に再雇用で給与が減額されても、対象とはなりません。
継続して再雇用とは、同じ会社に1日の空白もなく再雇用されることをいいます
定年等の再雇用の理由は、問いません。
60歳以降に再雇用されれば、対象となります。年齢上限も、ありません。
同日得喪したあとに改めて給与減額等の労働条件の変更があれば、何回でも、同日得喪を行うことは可能です。
なお、同日得喪は任意です。強制ではありません。
2. 同日得喪の手続き
同日得喪は、被保険者資格の取得と喪失の手続きが必要です。
提出が必要となる届出は、「被保険者資格取得届」と「被保険者資格喪失届」です。
🔎 従業員を採用したとき|日本年金機構
🔎 従業員が退職、死亡したとき|日本年金機構
また、添付書類として、「退職したことがわかる書類(就業規則等)」と「継続再雇用されたことわかる書類(雇用契約書等)」も必要です。
「事業主の証明」で代替することも可能です。
様式は、以下を参照しましょう。
🔎 60歳以上の厚生年金の被保険者が退職し、継続して再雇用される場合、どのような手続きが必要ですか。|日本年金機構
3.同日得喪の留意点
同日得喪を行う場合の留意点について、確認します。
3-1.同日得喪月に賞与を支給する場合
社会保険料(健保・介護・厚年)は、資格喪失月の前月まで徴収されます。
例えば、6月20日に定年退職し、6月21日に同日得喪した場合で、考えてみましょう。
【 ケース1:賞与支給日が6月15日の場合 】
→→→→6/15賞与支給→→→→6/21同日得喪-・
賞与支給日の6/15は資格再取得前ですので、社会保険料は徴収されません。
【 ケース2:賞与支給日が6月30日の場合 】
→→→→6/21同日得喪→→→→6/30賞与支給-・
賞与支給日の6/30は資格再取得以降ですので、社会保険料が徴収されます。
つまり、賞与支給日が同日得喪「前」であれば、社会保険料は徴収されず、同日得喪「以降」であれば、社会保険料は資格再取得後の賞与として、社会保険料が徴収されます。
3-2.同日得喪月に70歳に到達した場合
厚生年金保険料は、70歳になると、70歳以上被用者となり、保険料の徴収は不要となります。
前述の通り、社会保険料は、資格喪失月の前月まで徴収されます。
ここで、問題となるのが、同月得喪の仕組みです。
同月得喪とは、社会保険の資格取得日と資格喪失日が、同一月に存在することです。
同月得喪に該当する場合、社会保険料は1か月分の控除が必要となります。
つまり、同日得喪による資格取得「後」に70歳に到達した場合、年齢としては社会保険料の徴収が不要となるが、同月得喪の仕組みにより、1か月分の社会保険料が賦課されることが起こりえます。
同日得喪月が70歳到達月と同月の場合は、保険料の徴収について、事前に年金事務所に確認することがよいでしょう。
3-3.再雇用者が傷病手当金を受給している場合
再雇用者が、傷病手当金を受給している場合も、留意が必要です。
同日得喪により、標準報酬月額が、下がります。
傷病手当金の受給額の基礎となるのは、標準報酬月額です。
つまり、傷病手当金の算定基礎となる標準報酬月額も下がるため、受給額が減額となり、保険料軽減効果以上のデメリットが発生する可能性があります。
再雇用時点で傷病手当金を受給している場合、給与支給も停止していることが多いため、随時改定にも該当せず、同日得喪を行わなければ、再雇用前の高い給与を基準とした傷病手当金を受給できます。
🔎 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|協会けんぽ
再雇用時に傷病手当金を受給している場合は、保険料軽減効果と受給額減額を勘案して、手続きするのが懸命です。
最後にまとめ。
・同日得喪の対象者は、60歳以上の者で、退職後継続して再雇用される者。
・同日得喪の手続きは、資格取得・喪失届に、継続再雇用を証明する書類の添付も必要。
・同日得喪月に賞与を支払う場合等、個々の事情により同日得喪には留意点がある。
以上
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