合意分割と3号分割?離婚時の年金分割の基本的な仕組みと2つの制度

厚生労働省の人口動態調査によると、2018年の離婚件数は約20万件。

そのうち、同居期間20年以上のいわゆる熟年離婚の件数は約4万件。

5組に1組は、熟年離婚です。

熟年離婚でおさえるべきポイントいえば、やはり年金分割でしょう。

年金分割には、合意分割と3号分割の2つの制度があります。

今回は、年金分割の基本的な仕組みと、合意分割と3号分割という年金分割の2つの制度について確認します。

1.年金分割って何?

1-1.分割の対象

年金分割の対象となる年金は、厚生年金(老齢厚生年金)です。

国民年金(老齢基礎年金)は、当事者自身の年金記録により計算されますので、対象とはなりません。

分割するのは、年金額ではなく、厚生年金の保険料納付記録(標準報酬)。

標準報酬とは、標準報酬月額と標準賞与額の合算額です。

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保険料納付記録の受け側は、分割分を含めた納付記録で老齢厚生年金が計算されるため、年金額は増えます。

一方、保険料納付記録の渡し側は、分割分を除いた納付記録で老齢厚生年金が計算されるため、年金額は減ります。

一般的には、妻の年金が増え、夫の年金は減ります。

1-2.年金分割の2つの制度

年金分割には、合意分割と3号分割の2つの制度があります。

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一つ目は、2007年4月に施行された離婚時の厚生年金分割制度。

いわゆる、合意分割です。

合意という名の通り、夫婦間で按分割合の合意が必要です。

夫婦間の協議(話し合い)で合意できない場合は、裁判(調停)で按分割合を決定します。

二つ目は、2008年4月に施行された離婚時の第3号被保険者期間の厚生年金分割制度。

いわゆる、3号分割です。

3号分割の別名は、強制分割

2008年4月以降の専業主婦・主夫の第3号被保険者であった期間については、夫婦間の合意がなくても、強制的に二分割されます。

基本的な仕組みが理解できたところで、合意分割と3号分割のそれぞれの制度ついて確認していきましょう。

2.合意分割って何?

2-1.合意分割制度

合意分割の対象となる離婚は、2007年4月1日以降に成立した離婚です。

ただし、2007年4月1日前の婚姻期間中の保険料納付記録も、夫婦間で合意(又は裁判で決定)すれば、分割対象とすることは可能。

合意分割により、分割対象期間における標準報酬総額が多い方から、少ない方へ保険料納付記録は移行します。

対象期間標準報酬総額の多い方を「第1号改定者」、少ない方を「第2号改定者」と呼びます。

第1号改定者が夫、第2号改定者が妻のケースが一般的でしょう。

分割の按分割合の上限は、5割です。

按分割合の下限は、第1号改定者と第2号改定者の保険料納付記録に応じて、決定されます。

これは、第2号改定者の持分が減らないように、また、第2号改定者の持分が第1号改定者の持分を超えないように決めるためです。

按分割合の範囲は、後述の『年金分割のための情報通知書』に記載されます。

2-2.合意分割の流れ

ここからは、合意分割の手続きを流れに沿って、確認していきましょう。

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(合意分割に関する情報提供の請求)

年金分割に際し、はじめに行うことは、保険料納付記録等の情報提供の請求です。

請求時期は、離婚前でも、離婚後でも可能。

また、当事者双方が一緒に請求することも、一方だけで請求することも可能です。

手続きは年金事務所で行います。

場所は問いませんので、最寄りの年金事務所でよいでしょう。

情報提供の請求は、『年金分割のための情報提供請求書 』により行います。

以下の❶~❸の添付書類も必要です。
❶請求者の年金手帳又は基礎年金番号通知書
❷婚姻期間等を明らかにできる書類(戸籍謄本、それぞれの戸籍抄本、戸籍の全部事項証明書又はそれぞれの戸籍の個人事項証明書のいずれかの書類)
❸事実婚関係にある期間の情報通知書を請求する場合は、その事実を明らかにできる書類(住民票等)

情報提供の請求により、『年金分割のための情報通知書』が交付され、相手方の年金記録も把握でき、50歳以上であれば老齢厚生年金の見込額もわかります。

一方だけで請求した場合の『年金分割のための情報通知書』の交付は、離婚後であれば相手方にも通知されますが、離婚前であれば、請求者にのみ交付されるため、相手方には知られずに受け取ることも可能です。

(按分割合の決定)

まずは、当事者間で協議(話し合い)します。

当事者間の協議で按分割合の合意ができないときは、当事者の一方が家庭裁判所に申し立て。

いざ、裁判(調停)へ。

大半は50%の按分割合で決定されます。

(合意分割の請求)

合意分割の請求手続きは、離婚後の手続きです。

当事者間の協議(話し合い)又は裁判(調停)により按分割合が決定したら、合意分割の請求を年金事務所に行います。

提出する書類は、『標準報酬改定請求書 』です。

年金分割の請求も、情報通知書の請求と同様、双方が共同で行うことも、一方だけで行うことも可能。

請求期限は、離婚をした日の翌日から2年です。

添付書類は、按分割合の決定方法や代理人の選定有無等で、状況に応じて、以下の❶~❻の書類が必要です。

❶マイナンバーカード(個人番号を請求書に記入したとき)、年金手帳または基礎年金番号通知書(基礎年金番号を請求書に記入したとき)
❷婚姻期間等を明らかにできる書類(戸籍謄本、それぞれの戸籍抄本、戸籍の全部事項証明書またはそれぞれの戸籍の個人事項証明書のいずれかの書類)
❸請求日前1カ月以内に作成された、当事者二人の生存を証明できる書類((戸籍謄本、それぞれの戸籍抄本、戸籍の全部事項証明書、それぞれの戸籍の個人事項証明書または住民票のいずれかの書類)※請求書に個人番号を記入した場合は省略可。
❹事実婚関係にある期間の合意分割を請求する場合は、その事実を明らかにできる書類(住民票等)
➎年金分割を明らかにできる書類(以下の書類のいずれか1つ)
A:話し合いにより、年金分割の割合を定めたとき
・年金分割すること及び按分割合について合意している旨を記入し、自らが署名した書類
(年金分割請求時に当事者二人で出所、又は、当事者二人のそれぞれの代理人が年金事務所に直接持参する必要有り。)
・公正証書の謄本もしくは抄録謄本
・公証人の認証を受けた私署証書
B:裁判所で年金分割の割合を定めたとき(当事者の一方の手続きで可)
・審判(判決)の場合…審判(判決)書の謄本または抄本および確定証明書
・調停(和解)の場合…調停(和解)調書の謄本または抄本
❻年金分割の請求者(代理人を含む)の本人確認書類(運転免許証、パスポート、顔写真付きの住民基本台帳カード、印鑑およびその印鑑にかかる印鑑登録証明書のいずれかの書類)
※代理人の場合は、代理人にかかる上記の書類のほかに、委任状(年金分割の合意書請求用)の「ご本人(委任をする方)」欄に捺印した印鑑にかかる印鑑登録証明書も必要。

手続きにあたっては、年金事務所に問い合わせ、確実に漏れなく、準備しましょう。

(合意分割による標準報酬の改定)

年金事務所は、按分割合に基づき、当事者それぞれの標準報酬を改定します。

改定が完了すると、年金事務所は、改定後の標準報酬を合意分割の請求者とその相手方に対して、通知します。

3.3号分割って何?

3-1.3号分割制度

3号分割は、強制分割という別名の通り、当事者間の合意は不要です。

第3号被保険者(専業主婦・主夫)が請求すれば、年金分割は行われます。

3号分割の対象となるのは、2008年4月1日以降の第3号被保険者期間です。

按分割合は5割と決まっています。

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3-2.3号分割の流れ

3号分割は、按分割合も5割と決定していますので、按分割合の当事者間の合意というプロセスが不要となります。

離婚後に、年金事務所に『標準報酬改定請求書 』を提出し、分割の請求をすれば、標準報酬は分割されます。

なお、2008年4月1日前の婚姻期間中の年金記録も分割したい場合は、合意分割の手続きが必要です。


最後に年金分割、合意分割、3号分割にかかる日本年金機構のサイトを紹介します。

🔎 離婚時の年金分割|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/rikon/20140421-04.html

🔎 離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/rikon/20140421-02.html

🔎 離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/rikon/20140421-03.html

以上

written by sharoshi-tustomu