相続財産で非課税?役職員の死亡後に支給する退職金の課税関係と作成書類

所得税法上の退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与に係る所得をいいます。

通常の退職金であれば、勤務先は所得税法の規定による源泉徴収が必要です。

しかしながら、役職員の死亡に基因し、遺族に支払う退職金については、死亡した役職員の勤務先での源泉徴収は要しません。

死亡時までに支給期が到来し、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、みなし相続財産として相続税の課税対象となるためです。

退職所得に該当しないため、勤務先は『退職所得の源泉徴収票』の作成は不要です。

代わりに『退職手当等受給者別支払調書』の作成が必要となります。

今回は、役職員の死亡後に遺族に支給する退職金の課税関係と作成書類について、確認します。

1.死亡退職金の課税関係

役職員の死亡後に退職金を支給する場合の課税関係は、死亡時に支給期が到来しているか否かで取扱いが異なります。

一般の社員であれば支給期は退職日、役員であれば株主総会の決議日が原則の支給期となります。

🔎 退職所得の収入金額の収入すべき時期|国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2728.htm

ここでは、死亡時までに支給期が到来している場合と、死亡前に支給期が到来している場合の2つのケースにわけて確認します。

1-1.死亡時までに支給期が到来している場合

死亡時までに支給期が到来している場合とは、一般社員であれば、いわゆる死亡退職の場合が該当します。

死亡退職により遺族に支給される退職金で、死亡後3年以内に支給が確定したものは、遺族のみなし相続財産となりますので、勤務先で所得税(及び復興特別所得税)の源泉徴収は不要です

🔎 相続税の課税対象になる死亡退職金|国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4117.htm

■所得税基本通達9-17
(相続財産とされる死亡者の給与等、公的年金等及び退職手当等)
死亡した者に係る給与等、公的年金等及び退職手当等(法第30条第1項《退職所得》に規定する退職手当等をいう。)で、その死亡後に支給期の到来するもののうち相続税法の規定により相続税の課税価格計算の基礎に算入されるものについては、課税しないものとする。

なお、死亡後3年経過後に支給が確定した場合は、遺族の一時所得となり、支給を受ける遺族の所得として所得税の課税対象となります。

■所得税基本通達34-2
(遺族が受ける給与等、公的年金等及び退職手当等)
死亡した者に係る給与等、公的年金等及び退職手当等で、その死亡後に支給期の到来するもののうち9-17により課税しないものとされるもの以外のものに係る所得は、その支払を受ける遺族の一時所得に該当するものとする。

💡 ワンポイント「死亡退職金は誰に払う?」
退職金規程等で死亡退職金を誰に支払うか明記していないと民法の一般原則による遺産相続人に支払うこととなり、遺産相続人が複数いる場合は、それぞれの相続分に従って払うこととなり、大変です。
労働基準法施行規則第42条と第43条の順位による旨定める等、死亡退職金は誰に払うか規程に明記するようにしましょう。

1-2.死亡前に支給期が到来している場合

死亡前に支給期が到来している場合とは、一般社員であれば、支給期となる退職日から退職金支給日の間に死亡した場合が該当します。

支給期となる退職日は生存しているため、死亡した社員の退職所得となり、勤務先で所得税(及び復興特別所得税)の源泉徴収が必要です

死亡した役職員(被相続人)と遺族(相続人)の課税関係を一覧表にすると、以下となります。

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2.死亡退職金の作成書類

退職金を支給した場合、勤務先は『退職所得の源泉徴収票』を作成し、受給者に交付することが義務づけられています。

一方、役職員の死亡後に支給期が到来したいわゆる死亡退職金は、そもそも退職所得に該当しないため、『退職所得の源泉徴収票』の作成・交付は不要です。

2-1.退職手当等受給者別支払調書

死亡退職金支給時に、勤務先で作成を要する書類は『退職手当等受給者別支払調書』です。

🔎 退職手当金等受給者別支払調書(同合計表)|国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/23100060.htm

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支払調書は税務署への提出が必要となります。

税務署への提出が必要なのは、受給者ごとの受給額が100万円を超える場合です。

『退職所得の源泉徴収票』の提出範囲は、役員に限定されていますが、『退職手当金等受給者別支払調書』は一般社員であっても受給者ごとの受給額が100万円を超えた場合については、税務署への提出が必要となりますので、留意しましょう。

提出期限は、退職金支給日の翌月15日まで、提出先は、支払者(勤務先)の所轄税務署へ提出します。

なお、死亡後3年経過後に支給が確定した場合は、遺族の一時所得となりますので、相続税法に規定される『退職手当金等受給者別支払調書』の作成は不要です。

2-2.退職手当等受給者別支払調書合計表

『退職手当金等受給者別支払調書』を提出する際に、あわせて提出するのが、『合計表』です。

🔎 退職手当金等受給者別支払調書(同合計表)|国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/23100060.htm

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なお、「支払総額」欄には、支払調書の提出省略限度額以下のため支払調書の提出を省略するものを含めたすべての死亡退職による退職金について記載が必要です。

以上

written by tantosya-masao