マイカー通勤中に事故!会社責任の法根拠と利用許可3点セットのリスク対策

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従業員のマイカー通勤は、会社の許可制とすることが原則です。

許可とは、禁止されている行為を、特定の条件を満たすときは、解除(許可)すること。

従業員のマイカー通勤の許可にあたっては、免許・車検・任意保険の3つを確認することが一般的です。

会社がマイカー通勤を許可制とする理由の一つは、会社責任に対するリスク対策です。

会社は、マイカー通勤中に従業員が第三者に損害を与えた場合、使用者責任と運行供用者責任を負う可能性があります。

今回は、従業員がマイカー通勤中に事故を起こした場合の、会社責任を負う法根拠と許可制によるリスク対策を、確認します。

1.使用者責任と運行供用者責任

従業員のマイカー通勤中の事故で、会社責任を負う法根拠は使用者責任と運行供用者責任です。

1-1.使用者責任

使用者責任は、民法第715条に規定されています。

(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

民法第715条

使用者責任は、報償責任の原理を根拠としています。

報償責任の原理とは、使用者は労働者(被用者)を使うことで利益を得ているのであるから、労働者(被用者)の危険行為による損失も負うべきとの原理です。

ただし書きで、被用者の選任と事業の監督について使用者の過失がなければ免責となる免責要件も規定されていますが、事実上、使用者責任を逃れることは困難です。

なお、使用者責任は、人身事故・物損事故を問わず、被害者の損害全般に及びます。

1-2.運行供用者責任

運行供用者責任は、自賠責法第3条に規定されています。

(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

自動車損害賠償保障法第3条

マイカー通勤であっても、会社の業務の一環として会社は運用を支配し利益を得ているとされ、運行供用者責任を負う可能性があります。

使用者責任と同様、ただし書きで、免責要件が規定されていますが会社側が立証することは、実質的には困難です。

なお、運行供用者責任は、「その運行によって他人の生命又は身体を害したとき」が条件となりますので、人身事故が対象となり、物損事故は対象外です。

2.許可制によるリスク対策

会社側のリスクを軽減するために、従業員のマイカー通勤は許可制として、任意保険加入を必須とするなどの対策が必要です。

許可にあたっては、マイカー通勤許可の「申請書・誓約書」のほかに、次の3つの書類の提出により、許可することがよいでしょう。

2-1.免許証

運転者として、有効な免許証を保持していることを、確認します。

期限切れは無免許運転となりますので、更新の都度、再提出させるなどの対応が必要です。

2-2.車検証

車が公道を走れる有効な車であるかを、確認します。

車検切れの場合、車検とセットの自賠責保険も切れている可能性があり、無車検・無保険の状態になってしまいます。

2023年1月4日からは、車検証の電子化が、スタートしています。

電子車検証の券面には、有効期間や使用者住所、所有者情報が記載されませんので、車検証閲覧アプリにより、車検証情報ファイル(PDFデータ)を出力し、従業員に提出させる等の方法としましょう。

🔎 電子車検証特設サイト|国土交通省

2-3.任意保険証書

任意保険に加入していない場合、事故の被害者は十分な補償を受けることができません。

従業員がマイカー通勤中に事故で加害者となった場合に、任意保険が未加入であれば、被害者は勤務先である会社に損害賠償を請求するでしょう。

マイカー通勤者への任意保険の強制は、差し支えありません(昭和53年12月12日最高裁判決)。

なお、任意保険の契約内容は、対人・対物無制限など、許可要件を明確に決定しましょう。


最後にまとめ。

・従業員がマイカー通勤中に事故を起こし加害者となった場合、会社も責任を負う可能性が高い。

・会社責任のリスク対策として、マイカー通勤を許可制とし、免許証・車検証・任意保険証書の3セットを提出させる。

・従業員に定期的に安全運転教育を行い、ルール遵守を徹底し続けることが、ポイント。

以上

written by tantosya-masao

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