年末調整の過不足税額精算等の計算処理が一通り完了し、最後に行う作業が、法定調書の提出です。
法定調書とは、所得税法等の法律により税務署に提出が義務づけられている書類です。
翌年1月末日までに、所轄税務署に提出しなければなりません。
提出するのは、6種類の法定調書と給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表です。
今回は、6種類の法定調書の提出範囲と、4つの提出方法、そして、e-Tax等による提出義務基準を確認します。
1.6種類の法定調書の提出範囲
初めに、6種類の法定調書の提出範囲について、確認しましょう。
1-1.給与所得の源泉徴収票
「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲は、年末調整の実施有無と、支払金額等により判定します。
<給与所得の源泉徴収票の提出範囲>
●年末調整をした者
(1)法人(人格のない社団等を含みます。)の役員(取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事、清算人、相談役、顧問等である方)及び現に役員をしていなくても当該年に役員であった者で、支払金額が150万円超の場合
(2)弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、弁理士、海事代理士、建築士等(所得税法第 204 条第 1 項第 2 号に規定する方)で、支払金額が250万円超の場合
(3)上記(1)・(2)以外の者で、支払金額が500万円超の場合
○年末調整をしなかった者
(4-1)「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した者で、退職者や源泉猶予者で、支払金額が250万円超の場合(法人役員は50万円超の場合)
(4-2) 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した者で、支払金額が2000万円超の場合
(5) 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなかった者(月額表又は日額表の乙欄若しくは丙欄適用者等)で、支払金額が50万円超の場合
🔎 給与所得の源泉徴収票|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/23100051.htm
1-2.退職所得の源泉徴収票
「退職所得の源泉徴収票」の提出範囲は、法人の役員のみです。
<退職所得の源泉徴収票の提出範囲>
法人(人格のない社団等を含みます。)の役員(取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事、清算人、相談役、顧問等)に対して支払う退職手当等
🔎 退職所得の源泉徴収票|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/23100052.htm
1-3.報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲は、報酬や料金等の区分と、支払金額により判定します。
<報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の提出範囲>
●以下の(1)~(3)に該当し、同一人に対する支払金額の合計が50万円超の場合。
(1) 外交員、集金人、電力量計の検針人及びプロボクサーの報酬、料金
(2) バー、キャバレー等のホステス、バンケットホステス、コンパニオン等の報酬、料金
(3) 広告宣伝のための賞金
●以下の(4)に該当し、同一人に対する支払金額の合計が50万円超の場合。ただし、国立病院、公立病院、その他の公共法人等に支払うものは提出不要。
(4) 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
●以下の(5)に該当し、1回の支払賞金額が75万円超の支払を受けた場合。その年中の全ての支払金額について提出要。
(5) 馬主が受ける競馬の賞金
●以下の(6)・(7)に該当し、同一人に対する支払金額の合計が5万円超の場合。
(6) プロ野球の選手などが受ける報酬及び契約金
(7) (1)から(6)以外の報酬、料金等
🔎 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/23100038.htm
1-4.不動産の使用料等の支払調書
「不動産の使用料等の支払調書」の提出範囲は、同一人に対する支払金額の合計が15万円を超える場合となります。
🔎 不動産の使用料等の支払調書|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/23100034.htm
1-5.不動産等の譲受けの対価の支払調書
不動産等の譲受けとは、売買・競売・公売・交換・収用・現物出資等をいいます。
「不動産等の譲受けの対価の支払調書」の提出範囲は、同一人に対する支払金額の合計が100万円を超える場合となります。
🔎 不動産等の譲受けの対価の支払調書|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/23100035.htm
1-6.不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書
「不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書」の提出範囲は、同一人に対する支払金額の合計が15万円を超える場合となります。
🔎 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/23100033.htm
2.4つの提出方法
次に、法定調書の4つの提出方法について、確認しましょう。
2-1.e-Tax
e-Taxで提出するには、国税庁のe-Taxサイトで、利用者識別番号の取得等の利用開始の手続きが必要です。
e-Taxによる提出方法の詳細は、以下のサイトで、確認しましょう。
🔎 e-Tax情報(東京国税局)|国税庁
https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/topics/e-tax/01.htm
2-2.光ディスク等
光ディスク等とは、具体的には、コンパクトディスク(CD)・デジタルバーサタイルディスク(DVD)・フロッピーディスク(FD)・光磁気ディスク(MO)等が該当します。
🔎 法定調書の光ディスク等による提出のご案内|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/hoteichosho/hoteichosho.htm
2-3.クラウド等
クラウドサービス利用による法定調書の提出は、令和4年1月から開始されました。
提出方法としては、認定クラウドサービスの提出領域に、法定調書データを記録し、税務署長に対してアクセス権を付与し、法定調書を提出する流れとなります。
国税庁長官の認定を受けている認定クラウドサービスは、令和4年2月28日現在、e-私書箱法定調書提出クラウドサービス(株式会社野村総合研究所)があります。
🔎 クラウドサービス等を利用した法定調書の提出について|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/cloud/index.htm
2-4.書面
書面で提出する場合は、所定の様式を使用し、給与システムから印刷した書面や、様式に手書きした書面等を提出することとなります。
3.e-Tax等による提出義務基準
最後に、4つの提出方法のうち、書面を除く、e-Tax、光ディスク等、クラウド等による提出が義務となる場合を確認します。
e-Tax等の提出義務化の対象は、前々年の提出すべきであった当該法定調書の枚数が、100枚以上である法定調書です。
法定調書の種類ごとに、判定します。
具体例で、確認しましょう。
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例の場合、令和3年に提出した「給与所得の源泉徴収票」の枚数が100枚以上となるため、令和5年に提出する「給与所得の源泉徴収票」は、書面以外のe-Tax、光ディスク等、クラウド等で提出することが必要です。
🔎 法定調書の提出枚数が100枚以上の場合のe-Tax、光ディスク等又はクラウド等による提出義務|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7455.htm
最後にまとめ。
・法定調書とは、所得税法等の法律により税務署に提出が義務づけられている書類。
・税務署には、給与所得の源泉徴収票等の6種類の法定調書と法定調書合計表の提出が必要。
・提出方法は、e-Taxや光ディスク等の4種類の方法が有る。
以上
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