労働施策総合推進法が改正され、2021年4月1日より大企業(従業員301人以上)に対し「中途採用比率の公表義務化」が施行されます。
対象企業は、中途採用比率を定期的に自社ホームページ等での公開が必要となります。
改正趣旨は、職業生活の長期化に向けた、中途採用に関する環境整備の推進です。
企業が長期的な安定雇用の機会を中途採用者にも提供している状況を明らかにすることで、中途採用を希望する労働者と企業のマッチングを促進していくことが狙いです。
今回は、中途採用比率の公表義務化について、条文規定と具体的な公表措置を確認するとともに、行政が公表している中途採用比率等の指標についても把握することとします。
1.法令条文
労働施策総合推進法の正式名称は労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律です。
1-1.法律
中途採用比率の公表義務化は、第七章の中途採用に関する情報の公表を促進するための措置等で規定されています。
(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)
第27条の2 常時雇用する労働者の数が300人を超える事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の職業選択に資するよう、雇い入れた通常の労働者及びこれに準ずる者として厚生労働省令で定める者の数に占める中途採用(新規学卒等採用者(学校教育法(略)第1条に規定する学校(小学校及び幼稚園を除く。)その他厚生労働省令で定める施設の学生又は生徒であつて卒業することが見込まれる者その他厚生労働省令で定める者であることを条件とした求人により雇い入れられた者をいう。)以外の雇入れをいう。次項において同じ。)により雇い入れられた者の数の割合を定期的に公表しなければならない。
2 国は、事業主による前項に規定する割合その他の中途採用に関する情報の自主的な公表が促進されるよう、必要な支援を行うものとする。
1-2.省令
法律の具体的な内容を定めた改正省令も、2020年12月28日に公布されています(施行は2021年4月1日)。
(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則)
第9条の2 法第27条の2第1項の規定による公表は、おおむね一年に1回以上、公表した日を明らかにして、直近の3事業年度について、インターネットの利用その他の方法により、求職者等が容易に閲覧できるように行わなければならない。
2 法第27条の2第1項の通常の労働者に準ずる者として厚生労働省令で定める者は、短時間正社員(期間の定めのない労働契約を締結している労働者であって、一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短く、かつ、通常の労働者と同等の待遇を受けるものをいう。)とする。
3 法第27条の2第1項の厚生労働省省令で定める施設は、専修学校とする。
4 法第27条の2第1項のその他厚生労働省令で定める者は、次のとおりとする。
一 公共職業能力開発施設(職業能力開発促進法第15条の7第1項各号(第四号を除く。)に掲げる施設をいう。次号ロにおいて同じ。)又は職業能力開発総合大学校の行う職業訓練を受ける者であって終了することが見込まれるもの
二 次に掲げる者であって、学校の生徒若しくは学生又は専修学校の生徒であって卒業することが見込まれる者及び前号に掲げる者に準ずるもの
イ 学校又は専修学校を卒業した者
ロ 公共職業能力開発施設又は職業能力開発総合大学校の行う職業訓練を終了した者
ハ 学校教育法第134条第1項に規定する各種学校に在学する者であって卒業することが見込まれるもの又は当該各種学校を卒業した者
ニ 学校若しくは専修学校に相当する外国の教育施設に在学する者であって卒業することが見込まれるもの又は当該外国の教育施設を卒業した者
2.公表措置
中途採用に関する情報の具体的な公表措置について確認します。
2-1.公表企業
公表義務化の対象企業は、常時雇用する労働者の数が300人を超える事業主です。
中小企業については中途採用がすでに活発に行われていることから公表義務化は見送られています。
なお、中途採用比率公表の義務違反に対する罰則規定は設けられていません。
2-2.公表指標
公表指標は、正規雇用労働者の採用者数に占める中途採用者の割合(中途採用比率)です。
算出式は以下となります。
分子となる中途採用者とは、新規学卒等採用者以外の採用者です。ただし、募集という性質とは異なる再雇用者や転籍者は含まれません。一方で、契約社員を正社員に転換するいわゆる正社員登用は分子に含める取扱いとなります。
分母となる正規雇用労働者には、短時間正社員も含まれます。短時間正社員とは、期間の定めのない労働契約を締結している労働者であって、一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短く、かつ、通常の労働者と同等の待遇を受けるものです(改正省令第9条の2第2項)。なお、出向者は賃金支払いをしている企業の常時雇用している労働者の扱いとなります。
中途採用比率の算出により小数点未満の端数が生じた場合は、小数点以下第1位を四捨五入した整数値での公表しますが、各企業の判断で小数点以下の値まで公表することは差し支えありません。
2-3.公表方法
中途採用比率は、定期的に公表しなければなりません。
具体的には、おおむね一年に1回以上、公表した日を明らかにして、直近3事業年度について、インターネットの利用その他の方法により、求職者等が容易に閲覧できるように行うことが必要です(改正省令第9条の2第1項)。
企業側の対応としては、年に1回、自社のホームページを更新する作業が想定されます。
3.参考指標
中途採用比率や中途採用にかかる参考指標を確認し、自社の現状と比較しましょう。
3-1. 中途採用比率
📊 中途採用に係る現状等について【PDF】|厚生労働省(労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会資料)
https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000557900.pdf
現状は、3人に2人が中途採用者です。
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リンクの資料には「年齢別の転職回数」もまとめられています。
初職が正規雇用労働者の男性であれば、3割は定年まで転職しません。
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3-2. 転職入職率
📊 雇用動向調査|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/9-23-1.html
男性は40歳を過ぎたら転職者は急減します。
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厚生労働省サイトに、中途採用比率の公表にかかるページが作られました。
🔎 正規雇用労働者の中途採用比率の公表|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/tp120903-1_00001.html
以上
written by suchika-hakaru