給付乗率0.5481%?短時間労働者が厚生年金に加入した場合の年金受給額

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2016年10月1日より、短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の適用拡大が開始されました。

短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用には、企業規模要件があります。

企業規模要件は、501人以上(2016年10月~)→101人以上(2022年10月~)と変遷し、2024年10月からは51人以上の企業まで範囲が拡大されます。

適用拡大の目的の一つは、「適用拡大によって厚生年金保険の適用対象となった者が、定額の基礎年金に加えて報酬比例給付による保障を受けられるようになること等を通じて、社会保障の機能を強化すること」です。

一言でいうと「短時間労働者の年金を増やして老後の生活を安定させること」が目的の一つです。

適用拡大の対象となる短時間労働者が、一番知りたいことは、「厚生年金保険に加入するといくら年金が増えるの?」ということでしょう。

今回は、短時間労働者の社会保険加入要件のおさらいと、老齢厚生年金の計算方法→平均月収別の年金受給額について確認します。

1.短時間労働者の社会保険加入要件

はじめに、短時間労働者の社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入要件について確認します。

企業規模要件(2024年10月以降は51人以上)を満たす短時間労働者の加入要件は以下の4つです。

①週の所定労働時間が20時間以上であること

契約上の所定労働時間が基準となります。残業時間は含みません。

なお、実労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、かつ、今後も同様の労働時間が見込まれる場合は3か月目から保険加入となります。

②所定内賃金が月額8.8万円以上であること

所定内賃金には、基本給・諸手当が対象となりますが、最低賃金に算入しない手当(通勤手当等)は除かれます。

また、残業代や、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)も、所定内賃金には含めません。

③2か月を超える雇用の見込みがあること

雇用契約書等において2か月を超える雇用期間であれば対象となります。

また、雇用期間が2か月以内であっても、雇用契約書等においてその契約が更新される旨又は更新される場合がある旨が明示されている場合や、同一の事業所において同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新等により2か月を超えて雇用された実績がある場合は、原則、対象となります。

なお、2か月を超える見込みであった人が、退職により雇用期間が2か月未満になったとしても、被保険者の資格取得の取り消しはできません。

④学生ではないこと

夜間学生は対象です。

また、昼間学生であっても休学中の場合は、原則、対象となります。

🔎 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内|日本年金機構https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html

2.老齢厚生年金の計算方法

つぎは、老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算方法について、確認します。

前提として、老齢厚生年金の計算は、「平成15年3月以前」と「平成15年4月以降」で異なります。

平成15年4月以降の計算式は、以下です。

老齢厚生年金(報酬比例部分)=平均標準報酬額×0.005481×加入月数

平均標準報酬額とは、計算の基礎となる各月の「標準報酬月額」と「標準賞与額」の総額を加入期間で割って得た額です。

標準報酬月額とは、給与から天引きされた厚生年金保険料の元となった額です。

🔎 標準報酬月額|日本年金機構https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/hagyo/hyojunhoshugetsu.html

標準賞与額とは、賞与から天引きされた厚生年金保険料の元となった額です。

🔎 標準賞与額|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/hagyo/hyojunshoyo.html

簡易的に考えると、

平均標準報酬額とは厚生年金に加入していた期間の平均年収を12で割った額

となります。

例えば、厚生年金加入期間の平均年収が120万円の場合、平均月収(平均標準報酬額)は10万円。

平均標準報酬額10万円で、加入期間10年であれば、老齢厚生年金の年間受給額は、65,772円となります。

月額では、5,481円(65,772円÷12か月)です。

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🔎 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額|日本年金機構https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20140421-01.html

3.平均月収別の年金受給額(簡易試算表)

加入期間を10年(120か月)とした場合の、平均月収別の年金受給額(簡易試算表)は以下です。

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加入月数が5年(60か月)であれば、上記の表の額÷2をした額が、おおよその年金額です。

加入月数が1年(12か月)であれば、上記の表の額÷10をした額が、おおよその年金額です。

🔎 公的年金シミュレーター使い方ホームページ|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/kouteki_nenkin_simulator.html


最後にまとめ。

・短時間労働者の社会保険加入要件の企業規模要件は、2024年10月から51人以上の企業に範囲が拡大される。

・老齢厚生年金の受給額の算出に用いる給付乗率は、平成15年4月以降は0.005481(0.5481%)を用いる。

・老齢厚生年金の受給額は、平均月収と加入月数がわかれば試算することができる。

以上

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