すぐできる!同一労働同一賃金にジョブ型雇用?職務分析と職務評価の手順とまとめ方

2020年4月から同一労働同一賃金にかかる改正法が施行されています。

同一労働同一賃金の目的は、正規社員と非正規者社員(パート・契約・派遣社員)の不合理な待遇差を解消すること。

同一労働同一賃金の実現には、職務分析と職務評価が不可欠です。

また、コロナ拡大防止のため、テレワークが急速に進展し、職務記述書を整備しジョブ型雇用の導入を検討する会社も多いでしょう。

職務とは、一人一人が担当する仕事の集まりのこと。英語ではJOB(ジョブ)。

ジョブ型雇用とは、職務に人を割り当てる雇用制度のことです。

今回は、職務内容と職務価値の明確化を目的とした職務分析と職務評価の手順とまとめ方について、確認することとします。

1.職務分析(職務記述書)

職務分析とは、職務内容を明確にすることです。職務分析の結果は「職務記述書」としてまとめます。

職務分析は、以下の3つの手順で進めましょう。

🔽STEP1.職務分類の整理(1-1)

🔽STEP2.職務調査の実施(1-2)

🔽STEP3.職務記述書の作成(1-3)

それでは、順を追って、各ステップでの実施事項を確認することにしましょう。

🔽1-1.職務分類の整理

はじめに自社の職務を体系的に整理しましょう。

ハローワークのインターネットサービスの「厚生労働省編職業分類 」を参考にするとよいでしょう。

例えば、人事労務担当者であれば、大分類:C事務的職業>中分類:25一般事務の職業>小分類:252人事事務員>細分類:252-01人事係事務員/252-02教育・研修係事務員にわかれています。

大きな会社であれば細分類を更に細分化し、中・小規模な会社であれば小分類で職務分類を作成することでよいでしょう。

🔽1-2.職務調査の実施

職務調査の主な方法は、以下の3つです。

❶記述法  

調査対象者に調査表を記入させる方法。調査表ができれば簡易にはじめることができる。

❷面接法

分析者が調査対象者に面接する方法。質問表に沿って効率的に情報を収集することができる。

❸観察法  

分析者が直接、調査対象者の仕事を観察し調査する方法。客観的な事実を収集することができるが、調査に時間がかかり、分析者には相応の経験が必要。

短時間で一定レベルの精度を得るには、❶の記述法に❷の面接法と❸の観察法を組みあわせるとよいでしょう。

🔽1-3.職務記述書の作成

「職務記述書」には以下の4つの事項は少なくとも記載しましょう。

①職務名称(ポジション)

②職務概要

③職務内容及び職務遂行基準

④必要な知識・経験

早速、具体例で確認します。

厚生労働省は、仕事をこなすために必要な知識と技術・技能に加えて、成果につながる職務行動例(職務遂行能力)を、業種別、職種・職務別に整理し「職業能力評価基準 」として策定しています。

事務系職務>人事・人材開発・労務管理>労務管理の「スタッフ(レベル1)」と「シニア・マネジャー(レベル4)」の職業能力評価基準を参考に、職務記述書の具体的な記載例を確認してみましょう。

(職務記述書・例1)就業管理スタッフ
①職務名称(ポジション)
就業管理
②職務概要
勤務態様(労働時間・休日・休暇等)、特定労働者の雇用・就業管理の立案・運営・改善を行うことともに、関係部門に対する指導助言を行う。
③職務内容及び職務遂行基準
――1.企画・計画
・自社の労働時間管理の現状や基本的な労働時間法制など、就業管理実務の推進に必要な基本的事項を理解している。
・上司や先輩・同僚からの助言を踏まえ、自社の労働時間管理に関して優先的に取り組むべき課題等を整理している。
・労働時間管理業務の推進に必要な事務的手続、労働基準監督署に届け出る必要がある書類の様式、社内決裁ルート等を確認し、正しく理解している。
・担当業務の実施方法や実施手順に曖昧な点がある場合には、必ず上司や先輩に質問し解決を図っている。
――2.実務の推進
・労働時間管理に関する各部署からの基本的な問い合わせに対し的確に回答している。
・超過勤務時間数の集計や勤怠管理データの収集・集計などの就業管理上の定例的業務に関しては、上司の包括的助言に基づき、独力で業務を完遂している。
・就業管理をめぐる従業員トラブルなど突発的事態が発生した場合には、まずは上司に一報したうえで指示を踏まえて迅速に行動している。
・就業管理をめぐり過去に類例のない問題に直面した場合には、自分勝手な判断を行うことなく上司や先輩に報告して指示を仰いでいる。
・超過勤務時間数の集計や勤怠管理データの収集・集計などの就業管理上の定例的業務に関しては、上司からの詳細な指示・助言に基づいて、正確に業務を完遂している。
・就業管理をめぐる問題が発生した場合には、いかなる場合でも迅速に上司や先輩に報告し、与えられた指示通りに対応している。
――3.評価・検証
・時間外労働に関する記録など、担当業務に関する書類はルールに沿って遅滞なく作成している。
・担当業務に関し、満足できた点、不足していた点などに関する自己評価を行っている。
・不足していた点については率直に反省し、上司の助言等を踏まえて次期の業務改善に活かすべく工夫している。
・労働時間管理をめぐり、問題点や今後改善すべきと思う点を自分なりに整理し、上司や先輩に対して意見具申している。
・時間外労働に関する記録など、担当業務に関する書類は遅滞なく作成している。
④必要な知識・経験
――1.就業管理の概要
労働時間・休憩・休日の基礎/労働時間の弾力化に係る制度の種類・内容/労働時間等の適用除外対象者の種類・内容/時間外・休日労働、深夜労働の基礎/休暇の基礎/特定労働者の雇用・就業管理の基礎
――2.労務管理をめぐる社会的動向
ワークライフバランスなど労務管理上の関心動向/労働組合運動をめぐる世間一般の動向/労働法令の概要
――3.会社の経営戦略・人事戦略
会社の経営戦略/自社における最近の人事賃金制度の改定経緯/労使関係の現状
(職務記述書・例2)労務マネジメント(シニア・マネジャー)
①職務名称(ポジション)
労務マネジメント
②職務概要
労務部門を統括する上級マネジャーとして、労使交渉の実施、安全衛生、就業管理の企画・立案・運営など、労務管理全般をマネジメントする。
③職務内容及び職務遂行基準
――1.企画・計画
・会社の経営戦略や労使慣行等を総合的に勘案しながら、労務管理の方針を定め、その達成に向けた道筋を部下に示している。
・労務管理の推進に当たっての優先順位を見極め、戦略的かつ効果的な方針を決断している。
・就業管理や福利厚生施策の推進に当たり、短期的な総額人件費管理の視点だけでなく、ワークライフバランスなど就業環境への影響を見越した大局的な意思決定を行っている。
・労務管理の重要案件の推進に当たって、部門横断的なプロジェクトチームの設置や外部コンサルタントの活用等の基本方針を的確に判断している。
――2.実務の推進
・労使交渉や安全衛生など労務管理実務に際して、総合的な進捗管理を行いながら部下への指示・動機付けを的確に実施している。
・労働災害など部下だけで解決しきれない問題が発生した場合には、自ら出向いて速やかに対処を図っている。
・労使交渉に際して、一貫した理念に基づく交渉や意思決定を行っている。
・労使協議が整わない場合の妥結点の設定等の方針について、大局的視野に立って決断している。
・部下が仕事を通じて成長するための仕掛け作りや、労務管理業務全体の品質を向上させるための仕組み作りを適宜行っている。
――3.評価・検証
・戦略の実行にどの程度貢献したかと言う観点から、労務部門の成果を適正に評価・検証している。
・現行の労務管理の仕組みを総点検し、人件費を合理的水準に抑制しつつ長期的に社員のモチベーションを高めるような仕掛けを考え、実行に向けた体制作りを行っている。
――4.人と組織のマネジメント
・組織全体の中長期的なビジョンを示し、部下のやる気やチャレンジ精神に効果的に働きかけている。
・新任マネジャーや業務負荷の大きいマネジャーをねぎらって必要な支援を行い、効果的な動機付けを行っている。
・自部門における次世代のリーダー(後継者)を計画的に育成している。
・部下の意欲と能力を見極め、大幅な権限委譲やチャレンジングな仕事を与えることで成長自立の支援を行っている。
・自ら継続学習を行うことで模範を示し、部下の学習・成長意欲を喚起している。
④必要な知識・経験
――1.労使関係の改善・維持
就業規則・労使協定/労働組合がある場合の集団的労使関係/無組合企業の集団的労働関係/個別的労働関係    
――2.就業管理
労働時間・休憩・休日/時間外・休日労働、深夜労働/休暇/特定労働者の雇用・就業管理
――3.安全衛生管理
技術の進歩・環境の変化と、安全衛生の課題/安全衛生管理体制の構築及び運用/安全衛生教育/労働災害の防止及び労働災害時の対応/労働安全衛生マネジメントシステムと安全関係実務/健康管理・メンタルヘルス
――4.福利厚生
福利厚生制度の設計・運用/体育・文化・レクリエーション活動の立案・実施/寮・社宅・持ち家制度の設計・運用/財形制度等の設計・運用/その他の福利厚生制度設計・運用
――5.労務管理をめぐる最近の動向  
ワークライフバランス/労働組合運動をめぐる社会一般の動向/労働法令の概要及び改正動向
――6.マネジメント知識
戦略・組織/会計・財務/マーケティング/情報システム/人事労務(労働時間、安全衛生、人事効果等)

なお、職務記述書に定量的な「評価基準」まで記載することができれば、被評価者は何をもって評価されるのか明確となりますので、より望ましいでしょう。

2.職務評価(職務評価表)

職務評価とは、職務の大きさ(難易度や重要性)から職務の相対的価値を明確にすることです。職務評価は「職務評価表」としてまとめます。

職務評価は、以下の3つの手順で進めます。

🔽STEP1.職務評価手法の検討(2-1)

🔽STEP2.職務評価項目の決定(2-2)

🔽STEP3.職務評価表の作成(2-3)

それでは、順を追って、各ステップでの実施事項を確認することにしましょう。

🔽2-1.職務評価方法の検討

職務評価方法の主な方法としては、以下の4つです。

❶単純比較法

職務を1対1で比較し、職務の大きさが同じか、又は、異なるかを評価。比較の際に、職務の細分化はせず、全体として捉えて比較するため、容易であるが、細かな違いのレベルの評価までは実施できない。

❷分類法

職務を階層化した等級表をつくり、各職務等級のレベルの定義づけをした「職務レベル定義書」を作成。職務レベルの定義は、例えば1等級は主として定型業務、2等級は主として判断業務、3等級は主として管理業務のように、定性的な情報として記載。「職務レベル定義書」が完成したら、各職務がどの等級に該当するかを判断しあてはめる。

❸要素比較法

例えば知識・技術・経験などの評価要素を決定しレベルの定義(難~易・高~低等)を実施。各職務の評価要素がどのレベルに該当するかを判断することで、職務の大きさを評価。評価要素の軸を作成することで、分類法よりは客観的な評価が可能。

❹要素別点数法

要素比較法のレベルの定義を点数(ポイント)とすることで、職務の大きさを合計点数で評価することが可能。

要素別点数法が職務の大きさを定量的な数値として比較することができ、はじめは簡易なものを作成してから、精緻化を進めることも可能ですので、次の項以降は、❹の要素別点数法による職務評価による「職務評価項目の決定」と「職務評価表の作成」を確認することとします。

🔽2-2.職務評価項目の決定

職務評価項目は、学習院大学経済経営研究所が開発した「役割別賃金統計の作成・分析システム(GEM Pay Survey System)」の評価項目を参考にするとよいでしょう。

「GEM Pay Survey System」では、以下の8つ項目を評価項目としています。

①人材代替性…採用や配置転換により代替人材の確保ができるか否か。
②革新性…現在の方法とは異なる方法が求められるか否か。
③専門性…担当分野や周辺分野における高い専門性を要するか否か。
④裁量性…自由裁量を行使した結果の影響範囲が大きいか否か。
⑤対人関係の複雑さ(部門内)…部門内の調整作業が多いか否か。
⑥対人関係の複雑さ(部門外・社外)…部門外・社外との交渉・折衝業務が多いか否か。
⑦問題解決の困難度…既存の方法により解決できるか否か。
⑧経営への影響度…経営への影響度が大きいか否か。

そのまま評価項目として使えるものは使い、自社の特性に応じて、任意に追加や削除をすることでよいでしょう。

🔽2-3.職務評価表の作成

職務評価表は、評価項目別に重み(ウェイト)と尺度(スケール)から点数(ポイント)を算出し作成します。

「重み(ウェイト)」とは、会社の事業特性等に応じた構成要素の重要度を示します。

「尺度(スケール)」とは、構成要素別にポイントを付ける際の尺度の基準を示します。

「点数(ポイント)」は、「重み(ウェイト)」に「尺度(スケール)」を乗じ算出します。

厚生労働省の「要素別点数法による職務評価の実施ガイドラインの概要【PDF】 」の職務評価表を参考に作成しましょう。

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職務分析と職務評価まで完了したら、現在の賃金制度が職務に見合ったものとなっているかの点検を行い、必要な場合は賃金制度の再設計を行いましょう。

賃金制度の点検や再設計にあたっては、厚生労働省の「職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル【PDF】」を参考にするとよいでしょう。

以上

written by suchika-hakaru