本書は、一言でいえば、思考力を高めるための方法論を体系化した本です。
思考力とは、「自ら能動的に考える力」。
思考力を高めるために必要なことは、具体と抽象を行き来すること。
具体と抽象の思考法で、次の3つの「なぜ」がわかります。
「なぜ、勉強ができても仕事はできないのか。」
「なぜ、あの人の話はわからないのか。」
「なぜ、目標は達成できないのか。」
今回は、3つの「なぜ」について、具体と抽象を行き来して、解消しましょう。
1.なぜ、勉強ができても仕事はできないのか。
”試験問題には正解があるが、現実の問題には正解がない”
勉強と仕事の違いの、本質です。
文科省の学習指導要領における学力の三大要素は、「知識」・「思考力」・「主体性」の3つです。
学校の勉強は、「知識」の優劣が最重要です。
一方で、仕事に求められるのは、知識に加え、自分なりの答えを導く「思考力」です。
絶対的な正解がない中で、自ら意思決定をする「主体性」も、重要です。
勉強と仕事の違いに、本書は一つの答えを、提示します。
”最善だと思う選択肢を、どこまで自分で信じられるかどうかで、「正解」になるかどうかが決まる”
自分の頭で考え、自分を信じ、能動的にリスクを取ることができるか否かで、仕事の結果は二分されます。
2.なぜ、あの人の話はわからないのか。
コミュニケーションギャップは、職場の至るところで、発生しています。
「言った、言わない」は、日常の風景でしょう。
コミュニケーションギャップの本質は、一言でいえば、見ている世界の違いです。
知識や経験の違い、役割や目的意識の違い、能動と受動の違い。
前提条件が正確に共有されなければ、少なからず、ギャップが生じます。
本書では、“抽象の世界は見える人にしか見えない”と、断じます。
一方で、”具体の世界は誰にでも見える”と、説きます。
コミュニケーションギャップの解消に、本書は一つの答えを、提示します。
”具体的にすればするほど理解できる人の数は増える”
具体的な指示に、自由度はありません。
”具体化とは「逃げ道をなくすこと」”
抽象的な指示によるコミュニケーションギャップより、厳しい現実です。
3.なぜ、目標は達成できないのか。
価値が見いだせない目標や、達成度が不明瞭な目標は、あらゆる組織に散見されます。
本書では、「戦略」と「戦術」の違いを、抽象と具体で、説明します。
”戦略とは、目的に従って思い切り優先順位をつけて捨てるものは徹底的に捨てる行為”
“戦術とは、与えられた条件を全て使いながら具体化して実行に移す行為”
戦略の段階では、抽象の思考法を用い、不要なものを捨て、目的を明確化します。
一方、戦術の段階では、具体の思考法を用い、固有名詞と数字により、目標を定量化します。
戦略による目的の明確化と、戦術による目標の定量化により、目標設定ができれば、次は実行計画です。
“実行計画は具体的であればあるほど実現性が上がる”
価値ある戦略、明確な戦術、具体的な実行計画の、3つ揃えば、完成です。
なお、意図的にあいまいな目標を立てるときにも、抽象の思考法は役に立ちます。
都合のよい部分を切り取ることも、抽象化の特徴です。
以上
written by yondara-wakaru