電車とマイカー併用でも15万?通勤手当の課税・非課税にかかる9つの判定事例

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通勤手当は、実費弁償的な性質から、所得税法上は非課税所得に分類されます。

非課税とされる通勤手当の要件は、通勤に係る運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による運賃等の額であること。

非課税限度額は、1か月当たり15万円です。

ただし、自動車や自転車などの交通用具を使用している場合は片道距離に応じて、非課税限度額が定められています。

今回は、通勤手当にかかる課税・非課税判定を9つの事例で確認してみましょう。

1.通勤手当の非課税限度額

通勤手当の非課税限度額は、所得税法施行令第20条の2に規定されています。

ポイントは、以下の2点です。

●1か月当たりの非課税限度額は、15万円であること。

●マイカーなどの交通用具を使用する場合は、片道距離に応じて非課税限度額が設定されていること。

具体的な非課税限度額は、以下の図表を参照しましょう。

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2.通勤手当の課税・非課税の判定事例

9つの事例で、通勤手当の課税・非課税判定を確認していきましょう。

事例1:マイカー・自転車で通勤する場合

マイカーなどの交通用具で通勤している場合の1か月当たりの非課税限度額は、片道の通勤距離(通勤経路に沿った長さ)に応じて、定められています。

非課税限度額は、通勤距離を一定の範囲に区分し、設定されています。

詳細は、以下のリンクを参照しましょう。

🔎 マイカー・自転車通勤者の通勤手当|国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2585.htm

片道距離が2キロメートル未満であれば、その全額が課税となります。

事例2:新幹線で通勤する場合

新幹線通勤であっても、非課税限度額の取扱いに差異はありません

1か月当たり15万円が非課税限度額となります。

ただし、いわゆるグリーン車等の特別利用料金は、「最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による運賃等の額」に該当しない(合理的な運賃とされない)ため、課税されます。

【所得税基本通達9-6の3】
(新幹線通勤の場合の非課税とされる通勤手当)
令第20条の2に規定する「その者の通勤に係る運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による運賃等の額」には、新幹線鉄道を利用した場合の運賃等の額も含まれるものとする。

事例3:バスの回数券で通勤する場合

バスの回数券は、通勤定期券と同様の取扱いです。

1か月当たり15万円が非課税限度額となります。

【所得税法施行令第20条の2第3項】
通勤のため交通機関を利用することを常例とする者(第一号に掲げる通勤手当の支給を受ける者及び次号に規定する者を除く。)が受ける通勤用定期乗車券(これに類する乗車券を含む。以下この条において同じ。) その者の通勤に係る運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による定期乗車券の価額(一月当たりの金額が十五万円を超えるときは、一月当たり十五万円)

事例4:電車とマイカーで通勤する場合

最寄り駅まではマイカー、最寄り駅から勤務先までは電車のように公共交通機関と交通用具のいずれも利用し通勤する場合は、片道距離に応じた交通用具の非課税限度額と1か月当たり15万円の2つの基準で判定します。

①マイカー等の交通用具による片道距離に応じた非課税限度額

→片道距離に応じた非課税限度額を超えた額は課税となります。

②1か月当たり15万円の非課税限度額

→「マイカー等の交通用具による非課税額」と「電車等の公共交通機関の通勤定期券などの額」を合計し、15万円を超えた額は課税となります。

🔎 電車・バス通勤者の通勤手当|国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2582.htm

事例5:マイカー通勤者の通勤距離が変更となった場合

引っ越しや勤務地変更により、月途中で通勤距離が変更となる場合の変更月の非課税限度額は、変更前と変更後の通勤距離のうちいずれか長い方の通勤距離に応じた金額として差し支えありません。

🔎 交通用具を使用している者の通勤距離が変更となった場合の非課税限度額|国税庁

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/20.htm

事例6:通勤手当を一律に支給する場合

通勤経路や通勤方法によらず通勤手当を一律支給とする場合、各通勤者に対する合理的な運賃等に該当する額が、給与明細書等で区分識別できない場合は、非課税とされる通勤手当を支給したこととはされないため、その全額が課税所得となります。

🔎 通勤手当と住宅手当を合算して支給する場合の取扱い|国税庁

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/22.htm

事例7:在宅勤務者が出社する場合

在宅勤務が常態(勤務日の過半が在宅勤務等)である場合、「通常勤務する場所」は「自宅」となります。

この場合、そもそも、出社時に支給する金額は「通勤手当」ではなく「旅費」に該当します。

在宅勤務者が出社する場合の運賃(=旅費)は、「通常必要であると認められるもの」に該当し、課税されません。

実務上は給与支給ではなく、経費精算の取扱いとするのが一般的でしょう。

【所得税基本通達9-3】
(非課税とされる旅費の範囲)
法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。
(1)その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
(2)その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。

事例8:パート・アルバイトに通勤手当を支給する場合

正社員より勤務日数の少ないパート・アルバイトに出勤日数に応じた片道切符代等を実費で支給する場合であっても、「1か月当たり15万円」と「片道距離に応じた非課税限度額」の取扱いは同様です。

勤務日数に応じた日割額とする必要はありません。

ただし、勤務日数の少ないパート・アルバイトに実費を上回る1か月定期代を支給している場合は、実費を上回る部分は課税される可能性がありますので、留意しましょう。

🔎 アルバイトに支給する通勤手当の非課税限度額|国税庁

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/21.htm

事例9:複数の勤務地に通勤する場合

複数の勤務地に通勤する場合、複数の勤務地に通勤するための実費の合計額が15万円以下であれば、課税されません。

マイカー等の交通用具により複数の勤務地に通勤する場合は、最も遠い勤務までの片道距離により非課税を判定することで差し支えありません。

🔎 数か所に勤務する者に支給する通勤費|国税庁

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/19.htm

以上

written by soudanin-hajime

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