何歳まで働く?65歳までの雇用確保措置と70歳までの就業確保措置

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平均寿命が延び、人生100年時代の到来が現実的になっています。

雇う側も、働く側も、高齢期の就業機会の確保は大きな関心事でしょう。

2021年4月1日の改正高年齢者雇用安定法施行により、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となりました。

厚生労働省の高年齢者の雇用状況(2020年6月1日現在) によると、65歳までの雇用確保措置は99.9%とほぼ完全実施。

一方で、66歳以上でも働ける制度のある企業は33.4%と、全体の3分の1に留まります。

70歳までの就業確保措置は、法施行段階では努力義務ですが、将来的には義務となることも視野に入れた対策が企業には必要でしょう。

2021年からは「高年齢者雇用状況報告」も新様式となり、就業確保措置の実施状況を毎年定期的に報告することとなります。

今回は、65歳までの雇用確保措置のおさらい、新たに法制化された70歳までの就業確保措置の内容、そして、雇用確保措置と就業確保措置の違いについて、まとめています。

※本稿では便宜的に法制度上の「事業主」の用語は、一般的な「企業」の用語に置き換えて使用しています。

1.65歳までの雇用確保措置【義務】

65歳までの雇用確保措置の法的義務化は、2006年4月1日に施行されました。

法的義務化のあと、2013年には継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みも廃止され、原則、希望者全員が65歳までの継続雇用を実現できる制度が確立しました(経過措置有り)。

雇用確保措置は、高年齢雇用安定法第9条に規定されています。

65歳未満で定年の定めをしている企業が、対象企業です。

対象企業は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定雇用を確保するために3つの措置のいずれかを講ずることが義務となります。

1.定年の引上げ

65歳まで定年年齢を引き上げること

厚生労働省の「高年齢者の雇用状況(2020年6月1日現在)」では、20.9%の企業で導入されています。

2.継続雇用制度の導入

65歳までの継続雇用制度を導入すること

継続雇用制度とは、現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいいます。

厚生労働省の「高年齢者の雇用状況(2020年6月1日現在)」では、76.4%の企業で導入されている、最も一般的な制度です。

対象となる継続雇用制度は、自社だけでなく、一定の議決権を保持し支配力や影響力のある子会社や関係会社による雇用も含まれます。

また、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止が施行されるまで(2013年3月31日)に労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた企業については、経過措置として、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の年齢の者について継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることが認められています。

( 継続雇用制度の対象者限定基準の経過措置 )
・2016年3月31日まで … 61歳以上
・2019年3月31日まで … 62歳以上
・2022年3月31日まで … 63歳以上
・2025年3月31日まで … 64歳以上

🔎 特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢の引上げについて|日本年金機構https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2014/20140527.html

継続雇用制度は希望者全員が原則となりますが、例外として、心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等、就業規則に定める解雇事由又は退職事由に該当する場合には、継続雇用しないことが可能です。

3.定年の廃止

定年制を廃止すること

厚生労働省の「高年齢者の雇用状況(2020年6月1日現在)」では、2.7%の企業で導入されています。

2.70歳までの就業確保措置【努力義務】

就業確保措置は、高年齢雇用安定法第10条の2に規定されています。

対象企業は、65歳以上70歳未満の定年を定めている企業、又は、70歳未満までの継続雇用制度を導入している企業です。

対象企業は、法規定の5つの措置のいずれか又は複数を組み合わせることにより、65歳から70歳までの安定した雇用を確保するよう努めなければなりません。

5つの措置は、65歳までの雇用確保措置と同様の「雇用の措置」が3つ、新たに制度化された「創業支援等の措置」が2つです。

創業支援等の措置は、過半数労働組合がある場合は過半数労働組合と、過半数労働組合がない場合は過半数労働者代表の同意を得ることも必要です。

また、計画を作成し、周知することも必要です。

創業支援等の措置を導入する場合は、①計画を作成する②同意を得る③計画を周知するの流れで進めることとなります。

1.定年の引上げ(雇用確保措置)

70歳まで定年年齢を引き上げること

2.継続雇用制度の導入(雇用確保措置)

70歳までの継続雇用制度を導入すること

就業確保措置は努力義務となりますので、対象者を限定する基準を設定し、継続雇用しない事由を設けることは可能です。

厚生労働省の高年齢者雇用安定法Q&Aの、就業規則の規定例を参考にしましょう。

継続雇用の満了後に、引き続き雇用されることを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない労働者のうち、次の各号に掲げる基準のいずれにも該当する者については、満70歳までこれを継続雇用する。
(1)過去○年間の人事考課が○以上である者
(2)過去○年間の出勤率が○%以上である者
(3)過去○年間の定期健康診断結果を産業医が判断し、業務上、支障がないと認められた者

また、65歳以降は、一定の議決権を保持し支配力や影響力のある子会社や関係会社のいわゆる特定関係事業主「以外」の他社で継続雇用する制度も可能になります。

3.定年の廃止(雇用確保措置)

定年制を廃止すること

4.業務委託契約の締結(創業支援等措置)

業務委託契約の締結により就業確保の措置を講ずること

業務委託契約による就業確保措置は、高年齢者が新たに事業を開始する場合に、当該高年齢者と企業との間で当該事業に係る委託契約等を締結することで、高年齢者の就業を確保する措置をいいます。

業務委託契約ですので、雇用契約とは異なり、労働者性を有する働かせ方はできません。

労働者性の判断基準については、以下の厚生労働省の資料を参照しましょう。

🔎 労働基準法の「労働者」の判断基準について|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000xgbw-att/2r9852000000xgi8.pdf

対象者基準を設けることも、可能です。

厚生労働省の高年齢者雇用安定法Q&Aの就業規則の規定例を参考にしましょう。

定年後に業務委託契約を締結することを希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない者のうち、次の各号に掲げる業務について、業務ごとに定める基準のいずれにも該当する者については、満70歳までこれと業務委託契約を継続的に締結する。なお、当該契約に基づく各業務内容等については、別途定める創業支援等措置の実施に関する計画に定めるところによるものとする。
(1)○○業務においては、次のいずれの基準にも該当する者
ア 過去○年間の人事考課が○以上である者
イ 当該業務に必要な○○の資格を有している者
(2)△△業務においては、次のいずれの基準にも該当する者
ア 過去○年間の人事考課が○以上である者
イ 定年前に当該業務に○年以上従事した経験及び当該業務を遂行する能力があるとして以下に該当する者
① ○○○○
② △△△△

5.社会貢献事業への従事制度の導入(創業支援等措置)

社会貢献事業へ従事する制度により就業確保の措置を講ずること

社会貢献事業とは、不特定かつ多数の者の利益に資することを目的とした事業のことです。

社会貢献事業による就業確保措置は、高年齢者が希望する場合に、社会貢献事業を実施する者と当該高年齢者との間で委託契約等を締結することで、高年齢者の就業を確保する措置をいいます。

対象となる社会貢献事業は、以下の(a)と(b)の2つに大別されます。

(a)企業が自ら実施する社会貢献事業

(b)企業が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

社会貢献事業の実施計画の記載例等、具体的な制度設計にあたっては、厚生労働省の以下のパンフレットを参照するとよいでしょう。

🔎 [パンフレット]高年齢者雇用安定法改正の概要【PDF】|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000757449.pdf

3.雇用確保措置と就業確保措置の違い

最後に、雇用確保措置と就業確保措置の違いを、図で確認しましょう。

↓ クリックして拡大【雇用確保措置と就業確保措置】 ↓

( 雇用確保措置と就業確保措置の違い )
●雇用確保措置は65歳まで、就業確保措置は70歳まで。
●雇用確保措置は企業の義務であるが、就業確保措置は努力義務。
●雇用確保措置は対象者基準の設置不可。就業確保措置は対象者基準の設置可。
●就業確保措置は、雇用の措置に加え、創業支援等の措置も含まれる。
●創業支援等の措置導入には、過半数労働組合又は過半数労働者代表との同意が必要。


最後にまとめ。

・65歳までの雇用確保措置は義務、70歳までの就業確保措置は努力義務。

・雇用確保措置では、3つの措置のいずれかを講ずることが義務。

・就業確保措置では、5つの措置のいずれか又は複数の組み合わせを講ずることが努力義務。

以上

written by sharoshi-tsutomu

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