ブラックバイトかも?9つの労務トラブル事例でわかるアルバイトの労働条件

1003_相談員はじめの9つの質問
この記事は約9分で読めます。

アルバイト先を決める3大要素といえば、「勤務先」・「仕事内容」・「時給」の3つ。

それ以外の要素は、ほとんど重視していない人も、多いでしょう。

ですが、働きはじめてから、労働条件や就業環境に疑問を感じる人も、また、多いでしょう。

アルバイトであっても、正規社員と同様に、労働諸法令は適用されます。

今回は、9つの労務トラブルの事例で、アルバイトの労働条件について、確認します。

1.約束と違う労働条件【通知義務】

雇用契約そのものは口約束でも可。ただし、労働条件通知書は必須。

働きはじめてから、労働条件が約束と違うことが、あります。

約束と違う場合は、労働条件通知書を確認しましょう。

使用者は、労働者と労働契約を締結する際には、労働時間などの労働条件を明確に記載した書面を作成し、交付することが義務づけられています。

これを、労働条件通知書の書面交付義務といいます。

労働者が希望した場合は、電子メール等による電子交付も可能です。

…参照法令・通達…
・労働基準法第15条(労働条件の明示)
・労働基準法施行規則第5条
・短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第6条(労働条件に関する文書の交付等)
・労働契約法第6条(労働契約の成立)

2.不定期の支給日【賃金支払いの原則】

給与は毎月1回以上、一定期日に支給するのが原則。

賃金は、①通貨で、②直接労働者に、③全額を、④毎月1回以上、⑤一定の期日を定めて支払わなければなりません。

これを、賃金支払いの5原則といいます。

毎月1回以上の支払いは、毎月払の原則です。

賃金支払期の間隔が開き過ぎることにより、労働者の生活上の不安を取り除くことが、目的です。

一定の期日を定めた支払いは、一定期日払の原則です。

支払日が不安定で間隔が一定しないことにより、労働者の計画的生活の困難を防ぐことが、目的です。

…参照法令・通達…
・労働基準法第24条(賃金の支払)

3.支払われない残業代【未払賃金】

サービス残業は違法。法定労働時間を超えると割増賃金も必要。

働いてもお金がもらえない。

いわゆる、サービス残業

サービス残業は、もちろん、違法です。

法律で定められた労働時間は、一日8時間、一週40時間です。

これを、法定労働時間といいます。

通常の勤務形態であれば、前述の法定時間を超えた場合、使用者は、通常の労働時間の時給単価に割増率を乗じて、労働者に残業代(割増賃金)を支給することが必要です。

例えば、時給1000円のアルバイトが一日10時間働いた場合、法定労働時間の8時間超える2時間は、割増率25%を乗じた1250円が時給(時間単価)となります。

…参照法令・通達…
・労働基準法第32条(労働時間)
・労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
・労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令
・労働基準法施行規則第19条
・労働基準法施行規則第21条
・昭和63年3月14日基発第150号(割増賃金計算における端数処理)

4.取れない休憩【休憩時間】

労働時間が6時間を超え8時間以下は45分、8時間を超えたら1時間の休憩が必要。

休憩時間とは、労働から離れることが保障されている時間のこと。

これを、休憩時間の自由利用の原則といいます。

来客当番や電話当番は、労働から離れられる状態ではありませんので、休憩時間に該当せず、労働時間となります。

また、休憩時間は、労働時間の途中に与えることも、必要です。

これを、休憩時間の途中付与の原則といいます。

労働時間の始めや終わりに休憩時間を設けることは、労働者の同意があっても、不可です。

…参照法令・通達…
・労働基準法第34条(休憩)
・昭和22年9月13日発基第17号「労働基準法の施行に関する件」

5.もらえない休暇【年次有給休暇】

6か月間の継続勤務で年休が発生。所定労働日や労働時間が少ない場合は比例付与。

年休とは、年次有給休暇のこと。

有給とは、休んでも、給料がもらえること。

年次有給休暇制度とは、労働者の疲労回復等を趣旨として、毎年一定日数の有給休暇を労働者に与える制度です。

年次有給休暇の付与は、①雇入日(入社日)から起算して6か月継続勤務し、②全所定労働日の8割以上を出勤した場合に付与されます。

週所定労働日数が5日以上または週所定労働時間が30時間以上(又は一年間の所定労働日数が217日以上の労働者)の労働者は、前述の要件を満たした場合は、入社から6か月経過で、10労働日の年休が付与されます。

週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者は、週所定労働日数(又は、一年間の所定労働日数)により、比例的に年休が付与されます。

これを、年次有給休暇の比例付与といいます。

6か月継続勤務後の比例付与の日数は、以下となります。
・週所定労働日数4日(又は、一年間169日から216日まで)…7日
・週所定労働日数3日(又は、一年間121日から168日まで)…5日
・週所定労働日数2日(又は、一年間73日から120日まで)…3日
・週所定労働日数1日(又は、一年間48日から72日まで)…1日

…参照法令・通達…
・労働基準法第39条(年次有給休暇)
・労働基準法施行規則第24条の3

6.入らないシフト【休業手当】

会社(使用者)都合のシフトカットは休業手当の支給が必要。

雇用契約段階では、勤務日・勤務時間は、「シフトによる」とのみ、決定していることがあります。

シフト制は、労働日や労働時間を柔軟に設定でき、使用者にも労働者にもメリットがあります。

一方で、使用者の都合で、少ない勤務、無理なシフト、直前に決まるシフト等、問題もあります。

コロナ禍により、シフトが入らないことが、社会問題となりました。

いわゆる、シフトカットです。

使用者都合によるシフトカットは、使用者は、労働者に一定額の手当支給が必要となります。

これを、休業手当といいます。

休業手当の額は、平均賃⾦の6割以上となります。

ざっくり、平均賃金≒給料となりますので、給料の6割はもらう権利があると考えましょう。

🔎 いわゆる「シフト制」について|厚生労働省

いわゆる「シフト制」について
いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項が作成されました。

…参照法令・通達…
・労働契約法第6条(労働契約の成立)
・労働契約法第8条(労働契約の内容の変更)
・労働基準法第12条[平均賃金]
・労働基準法第26条(休業手当)

7.自腹で買う商品【現物支給】

自腹購入は自由意思が原則。一方的な給与天引きは不可。

その昔、郵便局員の年賀ハガキの販売目標が、問題となりました。

販売目標というノルマ達成のため、郵便局員は売れ残った年賀ハガキを自腹で買い取り、金券ショップに転売する事例が確認されました。

いわゆる、自爆営業です。

強制的に商品を買い取らせる自爆営業は、労働基準法の観点でも、違法です。

労働基準法では、賃金は通貨でその全額を支給することが定められています。

これを、賃金全額払いの原則といいます。

自爆営業は、ノルマ未達成の制裁の意味合いであり、いわゆる減給です。

減給が認められるのは、懲戒事案に該当する場合など、正当な理由がある場合に限定されます。

…参照法令・通達…
・労働基準法第24条(賃金の支払)
・労働基準法第91条(制裁規定の制限)

8.自己負担の治療費【労災かくし】

業務中のけがは労災保険が使える。健康保険による自己負担は不要。

使用者(事業主)は、一人でも、労働者を雇ったら、労災保険に加入する義務があります。

労災保険とは、業務中や通勤途中のけがや傷病の保険です。

アルバイトも含め、労働者は全て、労災保険に加入しています。

業務中のけがであれば、労災保険が適用され、治療費の自己負担はありません。

労災保険料は、全額が、事業主の負担です。労働者の負担は、ありません。

労災事故が起きると、事業主の労災保険料率が高くなり、負担が増えることがあります。

そのため、労災事故が発生しても、認めない事業主がいます。

これを、労災かくしといいます。

労災かくしは、違法です。

🔎 「労災かくし」は犯罪です。|厚生労働省

「労災かくし」は犯罪です。|厚生労働省
「労災かくし」は犯罪です。について紹介しています。

…参照法令・通達…
・労働者災害補償保険法
・労働安全衛生法第100条(報告等)
・労働安全衛生規則第97条(労働者死傷病報告)

9.辞められない職場【強制労働】

退職は労働者の自由。無期契約は退職申出の翌日から2週間経過で労働契約が終了。

憲法において、希望する仕事に就くことは、保障されています。

これを、職業選択の自由といいます。

期間の定めのない無期契約であれば、退職は、原則、労働者の自由です。

使用者の承諾も不要です。

民法の規定では退職申出の翌日から2週間経過で、労働契約が終了となります。

不要な争いを避けるには、会社の就業規則の期間に準じた対応がするのが、賢明です。

就業規則の規定としては、退職1か月前の申し出とする会社が、一般的です。

ただし、期間の定めのある労働契約、いわゆる有期労働契約の場合は、やむを得ない事由がある場合に限り、労働者は労働契約を解除できます。

つまり、有期労働契約であれば、労働者の自由意思で退職することができないのが、原則です。

使用者との、話し合いが、必要です。

なお、契約期間が1年を超える場合は、就業から1年を経過した日以降は、労働者は使用者に申し出ることにより、いつでも退職することが可能です。

…参照法令・通達…
・憲法第22条
・民法第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
・民法第628条(やむを得ない事由による雇用の解除)
・労働基準法第137条


最後にまとめ。

・アルバイトであっても、正規社員と同様、労働者としての法規定は、当然に、適用される。

・労働条件が当初の話と違う場合は、労働条件通知書を、確認する。

・就業環境が劣悪な場合は、労働基準監督署に、相談する。

以上

written by soudanin-hajime

タイトルとURLをコピーしました